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ポンペイはナポリ近郊の古代都市で、西暦79年のヴェスヴィオ火山の大噴火で起こった火砕流によって地中に埋もれてしまった事でも知られています。ユネスコの世界遺産にも登録されていて、埋没当時の状況が非常に良い状態で残されているという特徴を持っています。 埋没地はその後1000年以上「町」という地名で呼ばれ、散発的に古代の遺物が発見される事から、地下に都市が埋まっている事が認識されていましたが、本格的な発掘は行われていませんでした。 1748年にはポンペイの再発見が行われ、完全な形で残されている建物やフレスコ画などの美術品の存在が確認されるのですが、将来、技術的に進歩した考古学者によって再発見された方が重要性が判るだろうと判断され、埋め戻されていました。 そんなポンペイの発掘が本格化するのは18世紀半ばからで、発掘は現在まで続いています。発掘によって現れてくるローマ時代の遺品の美しさに世界が驚愕する事になりますが、それには火砕流の堆積物が大きく貢献しているとされます。火砕流堆積物にはシリカゲルに似た成分が含まれ、それが湿気を吸収してくれていた事が壁画や美術品の劣化を最小限に食い止めてくれていました。 今年の一月、ポンペイ考古学公園の発掘チームは大きな民家の広間に併設されたパン屋の発掘を行い、その壁に描かれたフレスコ画に注目が集められています。ローマ時代、パンは重要な主食であり、パン屋は人々にパンや焼き菓子などを提供する施設でした。そのパン屋の壁に描かれたフレスコ画には、当時の食生活の様子が記されているのですが、その中に薄く焼かれた生地の上に食材がのせられたピザに見える食べ物が描かれ、ピザの起源ではと話題になっています。 研究者によると薄い生地にのせられているのは「モレトゥム」と呼ばれるローマ時代に食べられていた物で、にんにくやハーブ、チーズなどを混ぜて作られるペースト状の食べ物とされます。薄い生地にチーズとなると、いかにもピザと思えてくるのですが、発掘チームはピザとは異なる食べ物と指摘しています。 いわれてみるとピザ好きの身としてはトマトソースが塗られていない物はピザではないとも思えてきて、南米原産のトマトはコロンブスによる新大陸発見以前のヨーロッパには存在せず、16世紀以前のヨーロッパではピザは成立しえないといえます。 しかし、大好きなピザの一種、クアトロフォルマッジにはトマトソースが使われてはおらず、薄い生地とチーズがあればピザは成立するとも思えます。 薄焼きのパン生地自体はヨルダンに存在したナトゥーフ文化の遺跡から炭化したものが見付かっており、1万4500年前にまで遡るとされます。当時は狩猟採集文化であった事から、野生の大麦やオーツ麦を粉にして、水を混ぜてから熱い石の上で焼いたと考えられます。 同様の物は古代エジプトやメソポタミア文明でも確認されており、薄焼きのパン生地は古くから存在していた事が判ります。そんな薄焼きの生地に具材をのせる文化が根付いたのは紀元前4世紀半ばの古代ギリシアと考えられており、詩人のアルケストラトスの詩集「贅沢な生活」の中に「ピラコウス」という名の平たいパンにハーブ、タマネギ、にんにくなどをのせた料理が記されています。 古代ローマは古代ギリシアの文化の影響を強く受けていた事から、パン屋のフレスコ画はピラコウス、もしくはその進化形を描いていたともいえます。その後、ラテン語の「平らな焼いた生地」を意味する「ピンサ」に由来する言葉、「ピザ」が10世紀後半の文献に登場するようになり、12世紀にはモッツァレラチーズが誕生、16世紀にトマトがもたらされる事で今日のピザが成立したといえます。 ピザというと代表格の一つ、マルゲリータは1889年6月11日、国王ウンベルト1世と王妃マルゲリータがナポリを訪れた際、当時、最高のピザ職人と目されていたラファエレ・エスポジトがイタリアの国旗の三色をモチーフにトマトソースの赤、モッツァレラチーズの白、バジルの緑を使って焼き上げたところ王妃が大いに気に入り、マルゲリータの名前が付けられ、エスポジトが王妃のために発案したレシピとされますが、当時のナポリでは広く食べられていたレシピとされ、少なくともエスポジトの発明ではないとされます。王妃のために作られたものではないにしても王妃の存在は大きく、「ピザの日」の11月20日は彼女の誕生日が元になっています。
2023年09月24日
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先日、激しく体を動かす作業をする事があり、その後、「今日は頑張ったからお腹が空いたでしょう」とたくさんの食事を用意されたのですが、「激しい運動のために食欲がなくなりました」と食事を辞退するという事がありました。子供の頃からよくあった事で、体が運動向きではないために起こる私自身の固有の事と思っていました。 しかし、最近、米国のスタンフォード大学で激しい運動によって食欲が減少する理由が研究され、食欲の減退は私だけに限った事ではない事と、食欲減退に関するメカニズムを知る事となりました。 「Nature」に掲載された論文によると、激しい運動を行わせたマウスの血液を採取し、検出可能なすべての成分の濃度を調べたところ、乳酸とアミノ酸の一種であるフェニルアラニンが結合した「Nーラクトイルーフェニルアラニン(NーLacーPhe)」が最も大きな変動を起こしていた事が判りました。 過去の研究でもNーLacーPheの存在は知られていましたが、詳しい解明は行われておらず、その働きはよく判らない状態となっていました。そこで研究者たちは高容量のNーLacーPheをマウスに注射してみたところ、1時間ほどでマウスの体内から排除されてしまいましたが、その後、12時間に渡って食欲の減少が見られ、食事量も50%にまで低下する事が観察されています。 食事の量は低下しましたが、エネルギーの消費量は変わらず、エネルギー効率は上がっている事が判り、10日ほど継続して肥満のマウスにNーLacーPheの注射を続けたところ、血糖値を下げる能力が改善し、体重も大きく低下する事が示されました。 激しい運動を行うと大きなエネルギーが消費され、筋繊維に破損が生じます。それを回復するためにカロリーやタンパク質の摂取が必要となるので、どちらかといえば食欲を増進させなければならないのですが、NーLacーPheはその正反対の事をしているようにも思えます。 人を使った運動後のNーLacーPheの測定では、最も多くの分泌が見られたのは短時間の全力疾走で、次に筋肉トレーニング、最も少ないのは軽度から中度の持久走となっていました。その事から激しい運動によって分泌されるNーLacーPheは、体に対して生存を脅かされる緊急事態にある事を知らせている可能性が考えられました。 エネルギーの摂取は生存に欠かせない事ではありますが、緊急の状況下では優先度が低く、脅威を取り除く事が優先されます。短時間の全力疾走は脅威を遠ざける事に直結し、食欲を抑えてエネルギー効率を上げる事でその後の対応力が上がると考える事ができます。 今後、研究者たちはNーLacーPheがどのようにして脳の食欲を抑えるのかについての解明を行うという事ですが、運動の後に食欲を失ってしまうという事が正常である事が判り、一安心したと同時に、あまり激しくない運動でも食欲を失いやすい私は生存に適しているのかもしれないと思ってしまいます。
2023年08月23日
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地中海に浮かぶキプロス島は、たくさんの猫が暮らす猫好きにとって聖地とも呼べる場所です。島を訪れた観光客の多くが住民と共生してのんびりと暮らす多くの猫たちの姿を目の当たりにし、島の事を「猫の楽園」と表現しています。 キプロスの住民と猫たちの共生は長い歴史を持つ事が知られていて、9500年前とされる世界最古の猫の埋葬跡もキプロスで発見されています。キプロスの猫は飼い猫としてだけでなく、日本でも言葉が定着してきた「地域猫」として、それぞれの地域の人たちに可愛がられながら穏やかな日常を過ごしてきた事が窺えます。 そんなキプロスでコロナウィルスの流行による猫たちの異常な大量死という怖ろしい事態が起こっていると報じられていました。キプロス猫保護福祉協会(PAWS)の推計によると今年に入って30万匹の猫が死亡したとされ、島で暮らす猫は100万匹とされる事から3割もの猫が死亡したという異常な状況となっています。 コロナウィルスによって引き起こされる「猫伝染性腹膜炎(FIP)」が原因とされ、島でのFIPの症例は2021年には3件、2022年には4件だけが報告されており、今年に入ると1月だけで98件が報告され、その後、爆発的な増加が起こったとされます。 コロナウィルスには世界中の多くの猫が感染しているとされ、一説には8割もの高い比率で感染しているとされますが、ほとんどの場合は感染の初期に腹痛や下痢、発熱などの軽い症状が見られるだけで、その後の生活にも何ら支障を来たす事はありません。それが体内で突然変異を起こし、強毒性のコロナウィルスに変化するとFIPを引き起こし、その致死率はほぼ100%といわれていました。 かつてはFIPを発症すると対症療法による延命しかなく、治療は不可能とされていましたが、現在ではよい薬が開発され治療が可能となっています。その薬の元となったのが人間用のコロナウィルス感染症の治療薬だったとされ、今回、キプロス政府は猫の緊急事態に対し、備蓄していた人用の新型コロナウィルス感染症治療薬を転用する事を承認しています。 治療薬が功を奏し、一刻も早く怖ろしい感染症の蔓延が収束する事を願うばかりですが、一つの疑問が浮かんできます。それはFIPは突然変異という稀な現象によって引き起こされ、突然変異を起こした強毒性のコロナウィルスには感染力がないとされてきましたが、今回の爆発的な蔓延には強毒性コロナウィルスが感染力を獲得したのではと感じてしまいます。 コロナウィルスが変異して強毒化した。強毒性コロナウィルスが変異して感染力を獲得した。または体内のコロナウィルスに突然変異を起こさせる別なウィルスが発生した。いくつかの可能性を考える事ができますが、いずれにせよ猫にとってかつてない脅威が発生したという事ができます。治療薬の効果の高さは、坊ちゃんの治療の際に経験できています。一刻も早い収束を願いたいと思っています。
2023年08月21日
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FIPの治療は症状を緩和する対症療法を行いながら、免疫力を高めるインターフェロンによる療法が採られてきましたが、ほとんどの場合において悲劇的な最期を迎えていました。2019年にFIP研究の世界的な権威であるアメリカのペダーソン博士によって「GS-441524」という薬剤が治療に極めて有効という報告が行われると、致死率100%とまでいわれた病気に治療できる可能性が生じました。 GS-441524はギリアド・サイエンス社によって開発されたものですが、何故かギリアド社は世界中の猫の飼い主が待ち侘びているといっても過言ではない薬を量産する事はなく、待望する市場の声を受けるかのように中国からコピー薬とされるムティアンが登場しました。 ムティアンはGS-441524の特許を侵害した海賊版とされますが、GS-441524が注射薬であった事に対し、ムティアンは経口投与する事ができるようになっていました。84日間、毎日皮下注射する事を考えると、経口投与できる事は飼い主の負担を軽減してくれたといえます。ムティアンの経口薬は当初、ハードカプセルが採用されていましたが、後に錠剤となり、より飲ませやすくなっています。 その後、コロナ禍を受けてギリアド社はGS-441524に化学的修飾を加えた人用の抗コロナ薬、レムデシビルを流通させます。レムデシビルは体内で代謝されるとGS-441424になるとされ、海外ではレムデシビルを使ったFIPの治療も行われています。 ムティアンの需要の高さを受け、ムティアン社を退社したスタッフの一人が「CHUANFUNING(CFN)」を開発し、同じような経緯から「メロンX」「スパーク&オーラ」なども誕生しています。 メロンXはCFN同様、ムティアンの上位互換薬といわれているのですが、日本ではNPO法人が独占契約を結んだそうで、一般的には見掛ける事がなく、情報も少ない事から坊ちゃんの治療薬としては選択肢に入れる事はできませんでした。 スパーク&オーラはムティアンよりも安価に売られているそうですが、治療後の再発率が高いとされ、特にドライタイプでは3割近くも再発が見られている事から、金額の問題ではなく使用は避けるべきと思えました。 日本ではレムデシビルと同じくコロナ薬としてモルヌピラビルが知られていますが、モルヌピラビルにもFIPを治療する効果があるとされます。モルヌピラビルはアメリカのエモリー大学のドラッグイノベーション企業によって開発され、特許が解放されている事から安価なジェネリック薬を多く見付ける事ができます。 他のFIP治療薬よりも細胞毒性が高いという意見もあり、投与量や治療プロトコルも確立されていないとさますが、日本でも治療に使う獣医師が増えているともいわれ、やがてモルヌピラビルを使った治療法が一般的になると、経済的事情から治療を断念するという事も少なくなるのではと期待しています。 坊ちゃんの治療を開始してから三週間後、様子を見るために病院へ連れて行き、エコーの診断でお腹の肉芽腫が跡形もなく消えている事を知らされ、獣医師共々「信じられない」と効果の高さに驚かされました。 ドライタイプの肉芽腫はなかなか完全には消えてくれず、その中にウィルスが潜んでいる事から治療期間が長くなるという情報もあった事から、一つの山場を越えたようにも思えました。何も知らなければその段階で治療を終了してしまうのですが、早期に治療を終了すると再発率が高まる事を知っていたので治療を継続し、84日間の投薬を終えました。 多くの場合、再発は一ヵ月以内とされますが、その後、二ヵ月が経過する坊ちゃんに再発の兆候はなく、無事に治療できているようにも思えます。CFNには再発保証があり、四か月以内に再発した場合、無償で治療を行う事ができます。ムティアンはそれよりも長い保証期間があり、半年は保証される事になっています。とりあえず保証期間の終了まで再発しない事を願いながら、坊ちゃんの様子を注意深く見詰めていかなければと思っています。
2022年11月16日
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坊ちゃんの薬が届いたという連絡を受け、坊ちゃんを連れて病院を訪れました。坊ちゃんの体重を計り、薬のメーカーが推奨する投与量が体重1㎏あたり100㎎という説明を受け、坊ちゃんの体重から400㎎が必要量といえるのですが、坊ちゃんの病状は明らかなドライタイプのため、倍量の800㎎が一日に必要と思えます。 お腹の肉芽腫も見てもらったのですが、病状に変化はないという事で、少しがっかりしながらも病状が悪化していない事に感謝し、手に入れた薬が効いて坊ちゃんがまた以前のように元気になってくれる事に期待してしまいます。 FIPの薬は「ムティアン」と呼ばれるムティアン社のラプコンが広く知られ、使われています。国内に数か所の協力病院があり、九州では福岡に一軒ある事を確認していました。今回、取り扱いを開始した事から、坊ちゃんの掛かり付けの病院もその一つとなったと思ったのですが、薬の説明を受けた際、一箱に12錠入っているという事が気になっていました。 いかにも輸入品という感じのビニール袋に包まれた薬を受け取り、帰途に就いたのですが、どうしても12錠入りという事が気になってしまいます。正規のムティアンは一箱に10錠入りで、12錠入りという事はまがい物である可能性があります。ムティアンはコピー品や偽物が出回っていて、入り数が違っているのであればあまり再現率の良くない製品とも思えます。 帰宅して袋を開け、出てきた箱に「CHUANFUNING」と記載されている事を確認すると、やはり坊ちゃんは命に縁がある子なのだと嬉しくなってしまいます。CHUANFUNING、通称「CFN」はムティアンの上位互換薬ともいわれ、治療率、再発率においてムティアンよりも優れているといわれます。唯一、不安があるとすれば、ムティアンと比べて治療例が多くないため、情報量が限られている事くらいです。 CFNはムティアンよりも治療期間が短くて済むという情報もありましたが、ムティアンで治療を早期に切り上げると再発率が高まる事が報告されているので、同じ84日間の治療を行おうと決め、坊ちゃんにも長い期間になってしまいますが頑張ってくれるように声を掛けました。
2022年11月14日
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薬の手配をしてもらい、坊ちゃんの様子に注意しながら薬の到着を待ちます。動物病院が薬の輸入元と契約を交わしたりするのに時間が掛かったという事で、薬の到着までに一ヵ月が掛かったのですが、その間、坊ちゃんにはFIPに効果がると噂を聞いたアミノラブリン酸のサプリメントを与えていました。 ネットで調べたところ、アミノラブリン酸がFIPに有効という研究論文が見付かり、その研究の例に倣って倍量を与える事にして、できればこのまま終わってくれればとも思っていました。 待ちに待った薬が届いたと連絡があり、坊ちゃんを連れて病院へ向かいます。アミノラブリン酸の効果で少しでも坊ちゃんの状態が良くなっていればと期待するのですが、エコーの診断では肉芽腫には変化がなく、やはり薬でなければ治療できないのかと思う反面、一ヵ月の間に病状を進行させていないのはアミノラブリン酸のお陰とも思えます。 後になって考えてみると、薬剤を使って治療する場合、ドライタイプはウェットタイプの倍量を使う事が推奨されている事から、坊ちゃんにとって毎日のアミノラブリン酸の量は少なかったのかもしれません。 病院の診察台で正確に坊ちゃんの体重を計ってもらうと、かつて5.5㎏だった体重は3.5㎏に減ったままで、体重1㎏あたり100㎎を投与する事から坊ちゃんには400㎎、ドライタイプはその倍量が必要とされる事から800㎎を与える事になります。 最も大きな錠剤が200㎎なので、坊ちゃんには4錠を毎日与える事になります。決まった時間に与え、その前後一時間は食事を与えないというのがルールとなり、坊ちゃん中心の日々が始まります。 アミノラブリン酸の錠剤が同じ200㎎であった事から、同じくらいの大きさのイメージをしていたのですが、届いた薬は意外なほど大きく、坊ちゃんの負担を思ってしまいます。人間用としか思えない大きさには、本当に猫の治療用なのかと疑いたくなってしまいます。 病院ではとりあえず10箱を用意してくれていたのですが、1箱に12錠入りなので一ヵ月で与えてしまう計算になります。薬剤の効果を確認するために三週間後の再診を予約して帰途に就きました。
2022年11月10日
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FIP(猫伝染性腹膜炎)は猫のコロナウィルス感染症であり、突然変異によって生じた強毒性のコロナウィルスがさまざまな症状を引き起こしていると考えられています。発症してしまうとほぼ100%死亡する病気とされ、診断と治癒が極めて難しい病気ともなっています。 猫に感染するコロナウィルスはFCoVと呼ばれ、その中に軽度の腸炎を引き起こすFECVが含まれています。FECV感染による症状は、数日程度で収まる事がほとんどで、その後、これといった症状を生じる事もなく、FECVは腸内に留まり続ける事が知られています。 それが何らかの理由で突然変異を起こして、強毒化したFIPVとなる事でFIPが発症すると考えられていますが、FIPVは突然変異によって生じるのか、それとも元々存在していてどこからか感染しているのか議論が分かれています。 名前こそ「猫伝染性腹膜炎」と伝染する病である事が伺えますが、FIPVはほとんど伝染する事はなく、極めて稀な事例とし免疫力が弱った猫に対し、唾液への接触で感染した例はありますが、通常は感染する事はないとされています。他の猫との接触がない状態でもFIPの発症が見られている事を考えると、FIPVは体内において突然変異によって生じたという方が有力ではと思えます。 また、弱毒性から強毒性のFCoVが幅広く存在してるという意見もあり、そうしたFIPの原因が確定されていない事にも予防法や治療法を確立する妨げとなっているような感じもしています。 コロナウィルスへの感染を調べるPCR検査では、感染しているのが同じコロナウィルスであるFCoVなのかFECVなのか、それとも強毒性のFIPVなのかを判断する事ができず、FIPの診断は非常に難しいとされ、診断が確定しないうちに悲劇的な最期を迎える事も珍しくないともいわれます。 FIPの症状がウェットタイプの場合、血管の膜に炎症が起こる事から水分が血液中から血管外へ漏出してしまい、胃の周りや心臓と心膜などに漏水が確認され、FIPと診断される事が多くなっています。FIPによって溜まった腹水はタンパク質の含有量が多いために、特有の色合いをしていて、空気に触れるととろみが付く事から慣れている獣医師はすぐにFIPだと判るとされ、FIPの治療には経験値が重要とされる所以となっています。 ドライタイプの場合、腹水が溜まるという事はありませんが、いろいろな臓器に肉芽腫が形成され、肝臓や腎臓、腸などに肉芽腫ができると機能不全を起こしたり、脳に炎症が起きると神経症状が見られるようになります。どちらかというとドライタイプの方が進行が遅いといわれるので、治療の機会に恵まれるような感じがしますが、病状が進行した先はドライタイプの方が悲惨ともいわれます。 坊ちゃんの場合、腹水が溜まらず、肉芽腫ができている事からドライタイプと思えるのですが、進行が非常に遅く、それ以外の症状が見られない事から本当にFIPだろうかと思う事もありました。 たまたま腫瘍ができていた場所が血管が多い場所で、針を使って組織を採取する事ができず、開腹して取り出した腫瘍の組織がガンではない事が判り、肉芽腫ができる原因を探すための追加の検査を行い、FIPと考えられるという結論が得られたのですが、その時点でもFIP確定とならないところに診断の難しさを感じさせられます。 嘔吐の原因を探るためにエコーでお腹を診て腫瘍が見付かり、開腹手術を行って検査結果が判るまでに一週間ほどを要し、それから薬を手配してもらって、実際に薬を手にするのに一月ほど掛かりました。聞かされているFIPの進行だとタイムアウトになっていてもおかしくない時間が流れています。最初に体調不良に気付いてからは半年以上が経過していて、経過が遅い特殊な症状であった事に感謝しなければと思ってしまいます。
2022年11月06日
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坊ちゃんがFIP(猫伝染性腹膜炎)を発症してしまいました。FIPは致死率100%の不治の病とされ、3年前なら絶望していたかもしれませんが、今は良い薬があるとの事なので、何とか治療してあげなければと思っています。 FIPは免疫力が完全には整っていない子猫を中心に発症するウィルスによる感染症ですが、坊ちゃんのような大人の猫でも稀に発症してしまうとされます。世間を騒がせているコロナウィルスの一種によって引き起こされるのですが、猫の半数、レポートによっては8割以上の猫がこのコロナウィルスに感染しているともいわれます。 通常は感染してもコロナウィルスは腸内に留まり、感染の初期に下痢などの軽い症状を引き起こす程度で、猫には大した悪さをする事もなく潜んでいるとされます。それが何らかの原因で突然変異を起こし、強毒化するとFIPが引き起こされるといいます。 よくいわれるところでは、FIPは腹水や胸水が溜まる「ウェットタイプ」と水は溜まりませんが、体の随所に肉芽腫を形成される「ドライタイプ」に分けられます。ウェットタイプの方がドライタイプよりも進行が速いとされ、ドライタイプの方が症状がひどいともいわれます。 免疫力が低い子猫の場合、あっという間に病状が進行する事から、診断に手間取っていると手遅れになってしまうという恐ろしい一面も持っていて、無治療の状態では中央生存期間は9日ともいわれています。新たな家族としてお迎えした子猫が急に体調不良になってしまい、原因を調べているうちに亡くなってしまうという残酷な疾患でもあり、猫と共に暮らす者として最も恐れているものの一つとなっています。 ウェットタイプとドライタイプ、その両方を併発したミックスタイプがいわれますが、最近ではFIPにはそれ以外の多岐にわたる病状があるとされてきていて、診断は困難を極めるともされます。コロナウィルスが原因ではあるので、PCR検査をすれば診断できるのではとも思えるのですが、PCR検査で判るのはコロナウィルスへの感染状況である事から、体内にコロナウィルスがいる事が判っても、それが突然変異を起こした強毒型のコロナウィルスかを知る事はできません。 腸内にいたコロナウィルスが強毒化すると、腸から血液中の免疫細胞の一種であるマクロファージ内に移動し、マクロファージ内で増殖をするようになるとされます。坊ちゃんの場合もマクロファージ内でコロナウィルスが見付かった事がFIP発症診断の決め手となりました。 事の起こりは坊ちゃんが激しく嘔吐していた事で、当初は毎朝の習慣だったブラッシングをしなくなった事でお腹に毛玉が溜まってしまったのではと思っていました。その後、激痩せしてしまい、何かがおかしいと精密検査をしてもらい、エコーによる診断でお腹に腫瘍がある事が判りました。腫瘍が胃を刺激していた事が嘔吐の原因となっていたようです。 お腹のリンパ節と隣接している腸に腫瘍が形成されているらしく、組織を浸潤している事や臓器を跨いでいる事、形が歪である事などからガンである可能性が高いと思え、組織を取り出して検査をしてもらったところ、ガン細胞ではなく肉芽腫である事が判りました。肉芽腫の原因を調べるための追加検査でFIPである可能性が高まり、肉芽腫の存在や免疫細胞のマクロファージ内でコロナウィルスが見付かった事でFIPと判断する事になりました。 FIPの診断が確定すると、獣医師は困った顔をしながら未承認で非常に高額ではあるが、治療できるかもしれない薬があるがそれを使った治療を行うかと尋ねてきました。ちょうどその日、薬の取り扱いのある業者が病院を訪れていたそうで、獣医師は薬の取り扱いをはじめるか悩んでいたそうです。 薬の存在やその効果、そして非常に高価である事は以前から聞かされていて、飼い猫を救うために長年大切にしてきた稀少なスポーツカーを売りに出し、たくさんの車好きの助けによって救われた人の美談なども聞かされています。かつては対症療法に終始し、結局は絶望的な最期を迎えるしかなかったFIPも治療費の工面さえできれば救える病気になったと思えます。即答で薬の手配をお願いし、坊ちゃんの治療を開始する事にしました。稀少なスポーツカーは持ち合わせませんが、坊ちゃんを救うためなら家や楽器を手放しても構わないと思えます。
2022年11月04日
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マイナス20度で24時間以上冷凍したり、瞬間的に大電流を流したりしながら、何とか死滅させようとしているアニサキスですが、今の段階では悪者以外の何物でもないように思えます。しかし、将来は違ってくるのかもといわれると、大いに好奇心を刺激されてしまいます。 大阪大学の境慎司教授による研究では、アニサキスなどの線虫の表面を生きたまま極薄い柔軟性のある膜でコーティングする手法を開発したと発表されていました。その膜の厚さは0.01ミリメートルほどとされ、透過性も高い事から線虫のにおいを検知する能力や運動機能にはほとんど影響しないとされます。 膜は素材を変えたり、酵素を含ませたりする事で、さまざまな機能を持たせる事が可能とされ、実験では紫外線への耐性を向上させたり、ガン細胞を死滅させる機能を持たせたりする事が可能な事も確認されています。 別な研究では、アニサキスがガン細胞特有の匂いを検出し、移動する事が発見されている事から、アニサキスが匂いでガンを探し出し、ガン細胞まで移動する事で表面の膜に含ませた抗ガン作用を使ってガン治療を行う事も考えられます。 嫌われ者のアニサキスの評価が一変する機会が訪れたとも思えるのですが、アニサキスの移動に伴う激しい痛みやアレルギー反応の問題を克服する必要があり、実用化への道は遠いようにも思えてきます。ガンの新たな治療法が確立されるのは大歓迎なのですが、カルテを眺めながら難しい顔をした主治医から「アニサキス、いってみますか」と問われるというのはあまり嬉しくないようにも思えてしまいます。
2022年06月30日
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この数年、アニサキスによる食中毒は「激増」と表現されるほど増えていて、5年前からは食中毒の原因のワースト1となっています。アニサキスに関する認知が進み、適切に被害が報告されるようになった事が激増の背景にあるとされますが、最終宿主であるクジラの頭数が増え、地球温暖化によってクジラや他の魚の回遊ルートが変わり、水揚げされる魚がアニサキスの卵を含んだクジラの糞に触れる機会が増えた事も原因ではないかとも考えられています。 サバやアジ、イカ、サンマ、イワシなどで多く見られるとされ、かつては青魚が中心といわれていましたが、サケやヒラメなどの白身魚でも報告されるようになり、アニサキスに感染している可能性のない魚種はないともいわれるようになってきています。 通常、アニサキスは魚の内臓内にいるのですが、魚が死んで内臓が傷みはじめると身の方へと移動します。マイナス20度で24時間以上冷凍すると死滅するのですが、近年は物流の発達もあり、冷蔵状態で長時間の輸送が可能となったためにアニサキスが身に移動しやすくなったとも考えられます。 アニサキスが含まれた魚身を食べてしまっても胃酸が溶かしてしまうのではと思ってしまうのですが、強靭な表皮を持つアニサキスは24時間胃酸の中に入れていても死なないとされます。また、アニサキスを誤飲してしまった数時間後に起こる激しい胃の痛みは、アニサキスに対するアレルギー反応とされ、死んだアニサキスによってもひどい症状が出る事もあるとされます。 先日、熊本大学とジャパンシーフーズの共同研究によって、魚の身にナノ秒レベルで大電流を流す事によって、刺し身の品質を落とさずにアニサキスを死滅できるという技術が開発されていました。通常の電源から電気エネルギーをコンデンサーに蓄積し、瞬時に取り出す事によって得られるパルスパワー(瞬間的超巨大電力)と呼ばれる電流を魚の身に流すというものですが、冷凍のように旨味を身の外に流出してしまう事もなく、品質の劣化がほとんどないといわれています。 実用化には、より低コストで省エネルギー化しつつ効果が確かな条件を検証しながら、大量処理が可能な装置を開発する必要があるとされますが、広まれば安心して日本の食文化でもある刺し身を楽しむ事ができるようになります。いつの日にかスーパーで売られる魚のラベルに「パルス処理済み」と記載されるのかと思うと、どことなく楽しみにも思えてきます。
2022年06月29日
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我家には、毎日少量のカツオのたたきを食べるのを楽しみにしている猫がいて、夕方のおやつ時には台所に立つ私の動きを注意深く見守り、いつも使っている白い器を手に取ったところを見掛けると、激しく催促してきます。 そのため、いつもカツオのたたきを切らさないようにしているのですが、猫なりのこだわりを感じたので焼き加減や部位、質感などを注意して選ぶようにしています。なるべく焼きがしっかりしたもので、身に締まりがあり、脂の乗りが良い腹身に近い部分を選ぶのですが、その際、選ぶポイントの一つとして冷凍された物を選ぶようにしています。 冷凍されていたものを解凍して店先に並べられている物の中から選ぶのですが、解凍品を選ぶ理由は価格が手頃というのではなく、アニサキスに感染してしまうリスクをできるだけ小さくするためです。 アニサキスは寄生虫(線虫)の一種で、サバやアジ、イワシ、イカなどをはじめとした多くの魚介類に寄生しています。体長2~3センチメートルほどの半透明の白い糸のような姿で魚介類の身に潜んでいますが、気付かずに食べてしまうと数時間後に激しい腹痛や吐き気、嘔吐などを伴った食中毒「アニサキス症」を引き起こしてしまいます。 最近では幅広い魚介類に寄生している事がいわれるようになり、猫も感染してしまう事が確認されているため、毎日、カツオのたたきを楽しみにしている猫を守るためにも気を配っておかなければ思いながら、アニサキスを死滅させるための方法の一つでもある冷凍がしっかり行われたものを購入しなければと思っています。 アニサキスは高温で調理すれば死滅しますが、たたきのように表面だけの加熱やしめ鯖などのように酢でしめたくらいでは死滅しません。しっかり芯まで冷凍すれば死滅するとされますが、そのためにはマイナス20度以下で24時間ほど冷凍する事が必要とされるので、マイナス18度程度の家庭用冷蔵庫ではなく、マイナス20度以下になる業務用冷凍庫での凍結が好ましいと考えています。 家庭用の冷蔵庫の場合、24時間ではなく48時間ほど冷凍すれば安全ともいわれますが、念には念をと思い、業務用冷蔵庫で冷凍されたものを購入し、家庭の冷蔵庫で冷凍した後に出すようにしています。いつも細かく切り分けてあげると、とても喜んでくれるので、これからも安全なおやつを確保してあげなければと思ってしまいます。
2022年06月28日
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以前、パンやお菓子の材料を見ていた際、いかにも砂糖の袋という感じのビニール袋に入れられた果糖を発見し、袋に書かれた「果糖」の下に英語表記でフルーツシュガーと記載されているのに気付き、英語でも同じ名前なのだと感心した事がありました。 食材の専門店ならともかく一般的なスーパーの調味料売場で果糖が売られているのを見掛ける事は、かなり稀な事ではないかと思います。しかし、果糖が含まれている食品となると、多岐に渡ってその多さに驚かされてしまいます。 食品における果糖は、果糖そのものとしてよりも「異性化糖」というかたちで使われる事が多く、原材料表示には果糖の含有率が50%未満のものは「ぶどう糖果糖液糖」、50%以上、90%未満のものは「果糖ぶどう糖液糖」、90%以上のものを「高果糖液糖」と表示されています。 中にはぶどう糖果糖液糖や果糖ぶどう糖液糖に10%以上の砂糖を加えた「砂糖混合異性化糖」も使われていて、そうした中で最も多く使われているのは55%の果糖を含んだ果糖ぶどう糖液糖だといわれています。 果糖は甘味が強く、砂糖の甘味を100%とした場合、温度によって甘味の感じ方が変化する傾向がありますが、果糖の甘味は120%~170%とされ、強い甘味を持っています。しかし、一緒になっているぶどう糖の甘味は70%と弱く、55%の比率で果糖が含まれる果糖ぶどう糖液糖の甘さは砂糖とほぼ同じとされます。 しかし、果糖は砂糖と比べてコスト面で優れている事や、結晶化しにくい事から食感に影響を与えにくい事、甘さがすっきりとしてキレのある爽やかさとされている事などから砂糖よりも多く使われる事となり、清涼飲料水をはじめとする多くの食品に使われる事となっています。 果糖というとその名の通り果物にも含まれており、砂糖よりもカロリーが低い事や血糖値を上げにくいと聞かされると健康に良いようにも思えてくるのですが、その反面、中性脂肪の合成に使われやすい事から血液中の中性脂肪を増やしてしまうのではという懸念を持たれたりもしています。血糖値を上げにくいという事は、満腹感を得られにくい事にも繋がり、つい多くを摂取してしまいがちになる事もデメリットとしていわれる事もあります。 そのため健康に良い、悪いといった両面の情報が散在している果糖ですが、最近の研究によってガン細胞のエネルギー源となっている事が判ってきていて、健康に悪い方に傾きつつあるように思えます。これまでガン細胞のエネルギー源としてはぶどう糖が知られていましたが、果糖もエネルギー源として使用されており、ガン細胞が増える際には盛んに使われているともいわれます。 そういわれると急に果糖は避けるべき食材と思えてくるのですが、果糖を含んでいない食品を見付ける事の方が難しく、安さ、便利さに慣れ過ぎてしまった事を反省しなければとも思えてきます。
2022年04月11日
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リアルタイムでは見れなかったというか、放映後、かなりの時間が経過してから存在を知ったのですが、知り合いから「とにかく面白いので観るべきだ」と薦められて観たアニメに「未来少年コナン」があります。その中で未来の大都市に住む人々が発掘されたプラスティックを分解して作られたパンを食べているという設定が衝撃的で、廃プラスティックの問題や持続可能な食料生産など、未来の問題を先取りしていた作品だと思えました。 プラスティックごみは「サーマルリサイクル」と呼ばれる燃焼させて熱を利用するという再利用法があるとされますが、多くは埋め立て処分が行われています。海洋を漂っているものと比べると、埋設した場所や量が把握できている事から少しはましだと思えるのですが、遠い未来、誰かが発掘してパンの原料にするのかと想像してみると、プラスティックごみの削減は大切な課題のようにも感じられます。 世界的にプラスティック製品を減らすという取り組みが浸透していっていますが、プラスティックごみはこれからも増え続けるとされ、プラスティック製品の生産量は2030年までには2倍、2050年には5倍になるとも予想され、それらはいずれごみとなって何らかの処分が行われる事になります。 使用済となったプラスティックをごみとはせずに、確実にリサイクルに回るような仕組み作りが重要とも思えてきますが、汚染されたプラスティックはリサイクルが難しく、コスト高となる上にリサイクルできる回数にも限りがあるとされます。 最近、開発されたDMG(分散モジュラー生成)と呼ばれる技術では、プラスティックごみから水素を取り出し、燃料とする事が可能とされます。DMGでは廃棄物を酸素のない状態で高い熱にさらし、ガス化する事で熱分解を行うとの事なのですが、廃棄物となったプラスティックを約1000度に加熱した炉に投入し、瞬時に溶かす事でガス化して酸化剤と反応させると一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、水素を含んだ合成ガスを得る事ができます。 メタンや合成ガスは炉の稼働を維持するために使う事もでき、ガスエンジンを動かす燃料としても使用可能とされますが、精製する事で純粋な水素を得る事が可能で、そうして得られた水素は燃料電池として利用する事ができると考えられています。40トンの廃プラスティックから2.7トンの純粋な水素を得る事が可能とされ、未来の動力源とされながら水素の確保が疑問視されていた燃料電池の未来を開く技術の登場のようにも思えます。 現在主流となっている埋設処分は、分解しにくいというプラスティックの性質を考えると問題の先送りのようにも思えます。積極的に分解して必要なものを取り出し、量を減らしていくという事が何より大切なように思えます。
2022年02月14日
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何も予定がない休日の昼下がり、普段は家の中から眺めるだけの庭に出て目の届かない場所の様子を見に行きます。辺りがとにかく静かという事もあり、風があれば庭の内と外を隔てる笹の葉の音が聞こえ、風がなければ家の前の長いコンクリートの坂を登り切った先にある県道のバイパスを、時折通る車やバイクの音くらいしか聞こえません。 そんな中、よく耳を澄ますと聞こえてくるのが浄化槽に空気を送り込むポンプの音で、浄化槽内のバクテリアを活性化するために休む事なく空気を送り続けてくれています。我家では、地下深くから汲み上げた清浄な水を生活排水として流してしまう事になるので、浄化槽のバクテリアにはしっかり頑張ってもらわなければと、稼働し続けるポンプを見るたびに思ってしまいます。 これまではポンプで空気を送り続けて排水をきれいにする事だけを考えてきたのですが、最近の考え方ではポンプを稼働させ続けるための電力を作り出すために、二酸化炭素を発生させているという事も意識しなければとも思えてきます。 最近、耳にしたところでは、排水に含まれる有機物を微生物が分解する際に発生する電気をエネルギーとして取り出す「微生物燃料電池」というシステムがあるらしく、これまで排水処理の効率、発電効率、性能の長期安定維持や規模的な問題から実用化ができていなかったのですが、先月には実規模サイズへのスケールアップに成功したと発表されていました。 微生物燃料電池では、発電菌と呼ばれる微生物が排水中の有機物を分解処理すると同時に、これまでの浄化槽では汚泥となっていた有機物を電気に変換できるそうで、発電した電気を使って浄化槽に空気を送り込むポンプを稼働させる事も可能な事から、二酸化炭素の排出量を削減する事ができるといいます。 数年以内には二酸化炭素の排出が実質ゼロの排水処理技術として登場するともいわれていて、阿蘇の大自然から借りた水を汚して排出している身としては、一刻も早く我家にも取り入れたいと思ってしまいます。
2022年02月08日
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バターで炒めたトウモロコシにしょうゆで味を付け、ご飯に混ぜ込んでおにぎりにします。夏の朝、ゆっくりと食事ができる週末の楽しみの一つとなっていて、それだけで良い一日が始まるような気になります。 正確な起源が不明なまま、どことなく謎めいた雰囲気を持つトウモロコシですが、起源があると考えられる地域に存在したアステカ文明やマヤ文明が多くの謎を残している事もトウモロコシの謎を深めているようにも思えます。 マヤ文明の伝説では、人間は神々によってトウモロコシから作られたとされていて、それによるとトウモロコシは人類の発祥以前から存在していた事になります。神々がトウモロコシを練って人の形にして人間を作ったとされ、トウモロコシには白や黄色、紫や黒、オレンジなどの粒もある事から、世界中にさまざまな肌の色を持つ人種が誕生したと考えられていました。 しかし、当時の中南米の人々が肌の色が異なる異民族を知るはずはなく、白人を知る事になった15世紀のコロンブスによる新大陸発見、アフリカから黒人がアメリカ大陸に連れてこられる17世紀以前に何故そのような発想がとも思えてきて、トウモロコシに関連した謎の一つと考えてしまいます。 コロンブスの最初の航海によってヨーロッパに持ち込まれたトウモロコシですが、当初はヨーロッパの人々に受け入れられず、珍しい観賞用の植物という扱いをされ、食用にされる事はありませんでした。その一方でアフリカや中近東、アジアの諸国へは急速に広まっていき、日本へはポルトガル船によって1579年に伝えられたとされ、コロンブスの新大陸発見から100年も経たないうちに東の外れにまで広まった事になります。 今日、世界で最も多く作られている農作物はいわれると、パンや麺の材料となり、食されている地域が最も多いイメージのある小麦やアジアを中心に主食として欠かせないコメを連想してしまうのですが、実はトウモロコシで、それほど食べてはいないと思えてくるのですが、食用として人に食べられているトウモロコシは全体の中のわずかな比率となっています。 栄養価が高いトウモロコシの多くは家畜の餌として使われていて、それほど食べていないつもりでも牛肉や豚肉、牛乳などを食す事によって間接的にトウモロコシを消費している事になります。 加工食品にも幅広くトウモロコシ由来のものが使われていて、コーン油やコーンスターチは多くの原料となり、トウモロコシのデンプンから作られる果糖ブドウ糖液糖は、お菓子屋や清涼飲料、ドリンク剤などのほとんどで原材料の記載欄に見掛ける事ができます。 人は食べた物で作られるという考えに基づくと、人はトウモロコシから作られているという事ができ、マヤ文明の伝説は本当の事だったと考える事もできます。 石油に代替する燃料としてバイオエタノールに注目が集まり、その原料としてトウモロコシの価格が高騰した際、ダンボールの値段が上がったというニュースを聞いて、あまり関連のない事のように思えた事があるのですが、ダンボールを製造するために欠かせない糊もトウモロコシから作られていて、トウモロコシがいかに欠かせない農産物であるのかを感じさせられました。 植物は子孫を残し、分布を広げるためにさまざまな方法を用いて種子を散布しています。皮に覆われてトウモロコシにはその機能がないように思えて、それが謎の一つとなっていますが、トウモロコシほど世界中に分布を広げ、多くの子孫を残すという目的を成功させている植物はなく、人の手による事を前提としているのであれば、起源の謎をぜひとも知りたいと思ってしまいます。
2021年07月28日
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南阿蘇と阿蘇市を繋ぐ道の途中、波野駅へと通じる山道を抜けると国道57号線へと出る事ができ、57号線沿いに県境を越えると大分県の菅生町へ片道30分程で到着する事ができます。久住山に近い菅生町は昼と夜の寒暖の差が大きい地域とされ、そうした気候は甘みの強いトウモロコシを育ててくれます。 トウモロコシが旬を迎えるとドライブがてら菅生町の道の駅へと出掛ける事にしていて、多めに買って帰って食べきれない分は冷凍して後々愉しむ事にしています。夏の訪れを感じさせてくれる大好きなトウモロコシですが、起源については判らない点が多いとされ、遺伝子解析からテオシントが起源となるという説が有力視されていますが、どことなく納得できないものを感じています。 トウモロコシの起源について興味を持つきっかけとなったのは、子供の頃、理科の先生にトウモロコシは皮に包まれていて、そのままでは自生する事ができず、人の手によらなければ増える事ができない不自然な存在だと聞かされた事にあります。 その後、野生種が見つかっておらず、起源が明確ではない事。そのために遺伝子操作などの手法で人為的に作り出された作物であるといった都市伝説を聞かされた事などもあり、トウモロコシの起源はとても気になる事の一つとなっています。 遺伝的にトウモロコシに近いとされるテオシントですが、その姿はあまりトウモロコシには似ておらず、トウモロコシとの交雑は可能ではありますが両者が繁茂している状況でも交雑が起こる事は少ないとされていて、どこか遠い存在のようにも思えます。 テオシントも10粒程度の小さな実を付けますが明らかにトウモロコシには似ておらず、しかも食用にはならない点がテオシント起源説を疑問視する最大の理由といえます。食用にする事が可能であれば可食部をより大きく栽培する工夫が行われ、結果として今日のトウモロコシができたと思えるのですが、食用にならない植物を栽培したり、品種改良を行うという事はありえないと考えてしまいます。 テオシントとトウモロコシが分岐したのは約9200年前とされ、その2000年後には大規模に栽培されるようになっています。長い栽培の歴史の中、どこかの時点で野生種のトウモロコシが人知れず絶滅してしまい起源が特定できない。地球外生命体がもたらしたと、極端な説が唱えられたりもしますが、できれば納得のいく起源説を知りたいと思ってしまいます。
2021年07月26日
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子供の頃、夕食を用意している母親の手伝いをしていて、キュウリをスライサーで薄切りにしようとしていました。最初にキュウリの両端を少し切り落とし、切断面をすり合わせるようにいわれ、そうする事でキュウリに苦味が和らぐのだと教えられました。 いわれた通りにやっているとこすり合わせているキュウリの縁の部分に薄い緑色の泡のようなものが出てきて、如何にもキュウリの灰汁が抜けていって苦みが緩和されていく感じがします。それ以降、キュウリを調理する際は必ず両端を少し切り落として、切断面をこすり合わせるようにしていて、今でも変わらず続けています。 切断面の縁に溜まる薄緑の泡のようなものは灰汁そのものに見えるのですが、考えてみると切断面をこすり合わせるだけでキュウリ全体の灰汁が抜けてしまうとは思えず、キュウリの苦味はヘタに近い方の皮に多いとされる事から、両端を切り落とす事で苦味が多い部分を除いているのではと考えていました。 キュウリを美味しく食べるためのおまじないのようなものとして続けていた切断面のこすり合わせですが、最近になって科学的な検証が行われて、実際に効果があるという事が立証されていました。 キュウリには蟻酸という物質が多く含まれていて、それが苦味や渋味の素となっています。蟻酸はキュウリの皮の部分の維管束と呼ばれる管の中に多く含まれていて、切断面をこすり合わせる事で維管束が刺激されて維管束液が染み出して含まれる蟻酸量が減少し、結果的にキュウリの苦味が和らげられています。 実際に何もしないキュウリと切断面をこすり合わせたキュウリを比べてみると、含まれている蟻酸の量は3分の1ほどにまで減少していたとされ、キュウリの苦味を軽減する効果があった事が判ります。 キュウリの苦味の素となる成分には「ククルビタシン」が含まれていて、ククルビタシンには健康効果がある事が判ってきている事から、キュウリの苦味も悪くないように思えるのですが、やはり美味しくいただくためには、これからもおまじないのような切断面のこすり合わせを続けなくてはと思っています。
2021年05月31日
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レジ袋の有料義務化がスタートして二ヵ月以上が経過し、少し慣れた感じがしてきています。当初はスーパーやコンビニエンスストアのレジで有料の袋が必要かといった問いかけを受け、そういえばと思いながら購入品の量に合わせてそのまま持ち帰ったり、袋のサイズを指定して購入したりしながら、書店やホームセンターなどでも同じ質問を受けてしまって戸惑ったりもしていました。 これまで無料で配布する事によって経費でしかなかったレジ袋が有料化にいよって売り上げに変わり、販売店では新たな売れ筋商品が加わった感じで良いのではと思う反面、以前のように突然、食べたい料理が思い浮かび、必要な食材を買いながらついでに別の商品を購入するという事が減り、一人当たりの購入単価が下がっているのではとも思えます。 今回の有料義務化は「海洋プラスティックごみ問題や地球温暖化などの解決に向けた第一歩」と位置付けられ、「マイバッグ持参など、消費者のライフスタイルの変化を促す事が目的」とされています。2016年1月開催の世界経済フォーラム年次総会で発表された世界のプラスチックの生産量が1964年から2014年の間に20倍以上に急増し、海に流出したプラスチックは、2050年までに重量ベースで海のすべての魚の量を上回るといった試算からの流れを受けての事と思えるのですが、何故レジ袋からなのかは理解できないものを感じてしまいます。 ほとんどのレジ袋はポリエチレンで作られていて、ポリエチレンは理論上、燃やしても二酸化炭素と水しか発生させず、有害物質を排出する事はありません。購入した商品を持ち帰った後はごみ袋などに再利用される事が多く、焼却場では水分が多くて燃焼に熱量が必要な生ごみなどを燃やす際の燃料として役立っていたともいわれます。 有料化によってレジ袋が減り、ごみ袋として塩化ビニール製の袋が使われるようになると、燃焼した際にダイオキシンなどの有害物質が発生する危険性が増し、有害物質の発生を抑えるために高温で燃焼させるには余分な燃料が必要となります。 石油を精製してガソリンや重油を生産すると、その残りとしてポリエチレンは発生します。レジ袋は、そうしたポリエチレンの有効な使い道だったともいえます。 焼却場が燃料の重油を多く使用するようになると、その分、ポリエチレンも多く発生してしまいます。レジ袋という大きな使い道を失ったポリエチレンはどうなるのだろうと心配になったりもしながら、それでもごみの量が減らせるのは良い事とも思えます。 しかし、レジ袋をはじめとするポリエチレン製の袋は、目に留まるごみの0.4%に過ぎず、海洋でもプラスチックごみの0.3%程度しかないとされ、レジ袋を全廃したとしても効果の程は知れたものという事ができます。 そのためレジ袋有料化の意味が解らないと思いながら、海洋プラスチックごみの中でレジ袋よりも比率が高く、身近なものを探してみると、ペットボトルが全体の8分の1を占めている事が判ります。それならばペットボトルの取り扱いを考えなければと思ったのですが、そうした考えに至るというところにレジ袋有料化の意味があったのかと思ったりもします。
2020年09月23日
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好奇心が旺盛でいろんな事に興味を持ち、何事も楽しく思えてしまうせいで周りの人達から多趣味な人と思われているのですが、実は無趣味で何か良い趣味と出会えないかと、いつも探し続けています。 そんなある日、釣り糸を巻き取るリールが機能に徹した形状や使われている金属パーツの光沢、メカニカルな動作などから美しく見えてしまい、リールを使う釣りを趣味にするのも良いかもと思ってしまった事があります。 知り合いから聞かされる釣りの話も楽しそうに感じられたのですが、結局、幾つかの理由から釣りは私には向かないと思って断念しています。一番の理由は陽射しの降り注ぐ中で長時間を過ごすのが無理と思えた事ですが、同じくらい生餌に触れる事に抵抗がありました。 数えるほどしかありませんが、子供の頃、父親に連れられて釣りに行った事があり、その際に見掛けたプラスティック製の筒形の容器に入れられたウジ虫にしか見えないドングリ虫やパックに入ったミミズなど、いまだに関わりたくないものとなっています。中でも苦手に思えるのがゴカイで、同じ生き物にしか見えないイソメと合わせ、触れるどころかそれを食べて釣られた魚に触れる事も辛いように思えます。 釣りに関する記事を読んでみるとゴカイはとても良い餌とされ、多くの魚種に対して有効な万能餌といわれています。画像で見た感じでは違いがほとんど判らないゴカイとイソメですが、ゴカイの方が「食い」が良いとされ、その分、購入する際の単価も高くなっているのですが、弱い事から運搬や保存には気を使う必要があるとされます。 私を釣りから遠ざけているゴカイですが、まだ未解明な部分も多く、最近になって日本に棲息しているゴカイも単一ではなく、ヤマトカワゴカイ、ヒメヤマトカワゴカイ、アリアケカワゴカイの3種に分類される事が判っています。そんなゴカイに関し、興味深い研究結果が得られており、やがてゴカイは単なる釣りの餌だけではない役割を担う事になるかもしれないと思えます。 私たち人間は呼吸によって肺に取り込んだ空気中の酸素を吸収し、血液中に含まれているヘモグロビンを使って体中に酸素を運搬しています。人間の場合、ヘモグロビンは赤血球の中に含まれているのですが、ゴカイの場合、血液中に溶け込んで存在しているため、人間の血液と比べて40倍以上もの酸素を運搬する事ができるとされます。 将来的にゴカイの血液を利用する事で、体中のさまざまな器官に効率よく多くの酸素を届ける事が可能になり、機能を活性化させる事で傷や疾病からの回復を早める事が可能となるかもしれません。凄い発見と思いながら、実用化された際は、できれば素が判らない製剤名にしてほしいと思ってしまいます。
2020年07月13日
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今年は流行の始まりが早いという事で、インフルエンザの大規模な広がりを警戒していたのですが、新型コロナウィルスによる肺炎の話題にかき消されてしまった感じで、ほとんどインフルエンザに関する情報が得られなくなっています。 すでに日本語として定着しているような感じがするインフルエンザですが、語源は片仮名からイメージしてしまう英語ではなくイタリア語となっています。そのため正確な読みはインフルエンザではなく「インフルエンツァ」らしいのですが、18世紀にイギリスを経由して言葉として広まった事から英語読みのインフルエンザが一般化しています。 16世紀のイタリアで何らかの原因で汚れた空気「瘴気」が発生し、それに触れた人が急な発熱を伴う体調不良を患うと考えられ、毎年のように冬になると流行し、春になる頃には収まる事から天体の運行や寒気の発生に影響されると考えた占星術師によって「影響」を意味する「インフルエンツァ」の名前が当てられました。 当時は感染症に関する概念が確立されておらず、インフルエンザが伝染性の病原体によって起こる事など想像もできるはずもなく、占星術師の登場となったのですが、当時の名称が今日もそのまま使われている事にはインフルエンザが毎年、繰り返し流行し続けてきた事を感じます。 1889年にインフルエンザが大流行した際、ドイツの元軍医でコッホの衛生研究所に所属していたリヒャルト・プファイファーが患者からグラム陰性細菌を分離する事に成功し、1892年に「インフルエンザ菌」と命名した上でインフルエンザを引き起こしていた病原体として発表しています。その後、インフルエンザの病原体を巡っては論争が繰り広げられ、1933年になってようやく決着をみています。 いつから人はインフルエンザと関わっているのかというと、人となる遥か以前からと思えてくるのですが、動物の間で感染していたウィルスが変異する事によって動物から人へと感染して、人から人への感染が確認されると新型インフルエンザと呼ばれる事を考えると、人が誕生した年の最初の冬であったと思えてきます。 文献上、最も古いインフルエンザの様子を記したものは紀元前412年にヒポクラテスの手によるとされ、インフルエンザが急速に流行し、やがて収束していく様子が記録されています。 日本でも平安時代に近畿地方で流行した記録が残されているのですが、質の悪い風邪の一種と考えられていたようで、その後、幾度も風邪の名前で流行し、被害が出た事が残されています。 長い歴史を持つ古い付き合いのインフルエンザですが、幾度も感染の大流行を繰り返しながら人がインフルエンザを克服できなかった理由は、ウィルスが常に変化を続けてきたからといえます。進化論の提唱者、ダーウィンの名言、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残る事ができるのは、変化できる者である」を思いながら、この冬も無縁であってほしいと願ってしまいます。
2020年02月12日
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我家の殺風景な庭に樹木を植え、少しでも安らげる風景にしなければと、数年前から少しずつ木や花の苗を植えたりしています。そんな事情を知っている母親からセンダンの苗木を持って帰るように薦められたのですが、いわれたセンダンの苗木は思っている姿と大きく違い、戸惑ってしまうという事がありました。 私の中でのセンダンの木はゴツゴツした厚い樹皮を持ち、幹がいたるところで曲がっています。それが滑らかな薄い樹皮に真っすぐな姿で、とてもセンダンとは思えなかったのですが、成長によって姿が変化するとの事なのでとりあえず庭に移植してみる事にしました。 移植の際に根の多くが切れてしまった事から根付かない事を心配したのですが、センダンは強い樹木という事で経過を観察していると、しっかりと庭に根付いてくれたようです。 早く成長して木陰で一休みする時の事を考えていると、木の先端付近に大きな黒い虫がとまっているのが見えます。嫌な予感がしながら近付いてみると白い斑を持つカミキリムシで、未熟な柔らかい樹皮の多くが食べられています。 慌ててカミキリムシを捕獲し、植物用の外傷薬を塗ったのですが、食べられてしまった面積が大きく、枯れてしまう事が心配になっていました。何とかセンダンは持ち直してくれて、元気に成長を続けているのですが、それ以来、カミキリムシには神経質なくらい警戒を続けています。 子供の頃から怖い顔に如何にも強そうな顎、捕まえると首の後ろを動かして独特の音を出す事からカミキリムシが苦手だったのですが、最近、外来種のカミキリムシが大きな問題を引き起こしているといわれています。 本来は中国や台湾、朝鮮半島、ベトナムの北部などに棲息しているクビアカツヤカミキリが外国産梱包材に紛れて国内に侵入したとされ、2012年に愛知県の桜や梅で被害が確認され、それ以降、2013年には埼玉県の桜、2015年には群馬県、東京都、大阪府の桜や徳島県の桃、2016年には栃木県の桜と各地へと被害が広まっています。 クビアカツヤカミキリの成虫は約4cm程度の大きさで、その名の通り全体に艶があり、実際には胸部ですが首に見える部分だけ赤い色をしています。別名「クロジャコウカミキリ」と呼ばれるように独特の香りを持つという特徴がありますが、見た感じでは我家のセンダンを襲ったマダラカミキリの方が悪者に見えます。 しかし、クビアカツヤカミキリの破壊力は強大で、果樹の幹や樹皮の割れ目に産卵し、孵化した幼虫は果樹に寄生して内部を食い荒らして枯死させます。1~3年かけて成虫になると果樹から這い出してきて春から夏にかけて飛び回り、新たな果樹に産卵するとされます。 一回の産卵で在来種のカミキリムシの十倍近い数を産み付ける事もあるといわれ、高い繁殖力に加え、使える農薬が少なく農薬の効きも弱いとされる事から、被害が一気に拡大する恐れがあります。今のところ被害が確認された場合、樹木を根ごと引き抜いて処分するしかなく、果樹園では廃園に追い込まれる事も考えられます。 天敵もいない事から現状ではやりたい放題という感じがしますが、このまま充分な対策が確立されない状況では、数十年後には日本国内で花見ができなくなるという怖ろしい予測も囁かれています。 カミキリムシの被害というと、松の木が伝染病のように枯死させられてしまう「マツ材線虫病」が思い浮かんできて、被害の大きさを考えてしまいます。桜や梅、桃は日本の文化とも深く関わっています。拡大する怖ろしい被害から樹木を守る良い対策はないものかと考えながら、被害の収束を願ってしまいます。
2020年02月06日
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2018年7月3日、ハワイで日焼け止めを禁止する法案が成立したという事が話題になっていました。法律は2021年1月1日から施行されるという事で、暑さと陽射しが苦手な身としてはますますハワイへ行く理由がなくなったというか、日焼け止めもなしに強い陽射しの中を歩くのは自殺行為のようにも思えます。 実際には紫外線をカットする成分としてオキシベンゾンとオクチノキサートを含む市販の日焼け止めの販売と流通が禁止されるだけで、他の成分が使われている日焼け止めの使用は可能で、全面的に日焼け止めが使えなくなったわけではないといいます。 ハワイで日焼け止めが禁止と聞くと、すぐにサンゴの保護に本格的な取り組みが始まったと思えました。以前から多くの研究で日焼け止めに含まれる成分がサンゴの白化現象を引き起こし、海洋生命体の遺伝子損傷を引き起こしているとされていました。 その場に行く事はないにしても美しいサンゴ礁の海には憧れてしまうので、ハワイの取り組みが世界的に広がる事を願ってしまいます。世界各地でサンゴの白化現象が確認されていて、このままではサンゴが絶滅してしまうのではという声も聞かれています。そんなサンゴについて朗報となりそうな論文が公開されていました。 論文では海中に設置したスピーカーから特定の種類のサウンドを流す事で、死滅しかかったサンゴの再生を促す事が明らかになったとされます。サンゴも音楽によって勇気付けられるのかと思わず考えてしますのですが、研究で使われたのはクラシックやロックなどの音楽ではなく、健康的なサンゴ礁に満ちている自然の音だといいます。 生きたサンゴ礁が発する音を流す事で、死にかけたサンゴの群れの周辺にも魚を呼び寄せる事ができるという仮説に基いたもので、実際に実験を行う事で仮説の正しさが裏付けられ、音の効果で魚の数は2倍にも増えています。 40日間行われた実験の期間中には魚だけでなく、サンゴ礁の活性化に欠かせないバクテリアの数の上昇も観察され、新しい生命が生まれる場所を確保するために、魚たちはサンゴを良い状態に保とうとしていました。 サンゴ礁を安全な生活の場としているだけに見える魚たちですが、実際はサンゴの健全な育成には欠かせない存在で、互いに助け合っている事に気付かされ、この技術が有害な日焼け止めの成分の使用禁止と共に世界中に広がる事を願ってしまいます。
2019年12月07日
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我家の地下から水を汲み上げているポンプが壊れてしまい、しばらく家の水道が使えなくなった際、近所の水源には随分と助けてもらいました。毎日、水を汲みに行きながら良質な水が必要なだけ手に入る事にとても感謝していました。 いつも水を汲みにいくと水源のすぐ近くにある神社にお賽銭を上げ、感謝の気持ちを伝えた後に無尽蔵とも思えるほど滾々と湧いてくる水を容器に入れていたのですが、今、世界では多くの水源に危機が迫っているといわれていて、少なくとも近所の水事情を見ているとどこか遠い世界の事のようにも思えてしまいます。 世界各地の地下には大量の地下水が隠されていて、それらは「地下帯水層」と呼ばれています。地球上に存在する淡水で最も多いのは氷床とされますが、地下帯水層はその氷床に次ぐ水量を誇るとされ、世界中の川にとって重要な役割を果たしています。干ばつの際にも川の水量が大きく変化しないのは、地下帯水層から供給される地下水のお陰とされます。 10月に学術誌の「Nature」に発表された論文によるとそうした地下水が人類によって何十年も大量に汲み上げられてきた結果、「ゆっくりと干からびかけている」とされています。地下水が汲み上げられている地域の15~21%がすでに重大な閾値(しきいち)を超えているとされ、その比率は2050年までに40~79%に急増する恐れがあるともいわれます。 閾値とは、その値を超えてしまうと川の水が足りなくなり、流域に棲息する動物や植物の生存が危機にさらされる値に設定されていて、閾値を超えるという事は川の水の恵みによって育まれてきた生態系を維持できなくなる状態に陥る事を指しています。 川の水は雨や上流の雪解け水に由来するイメージを持ってしまうのですが、実際はほとんどが地下水によるものとなっていて、地下水を大量に汲み上げる事は川の水量を減らすだけでなく、流域に暮らす湿地や植物、動物にも影響を及ぼす事になります。 現代の生活の多くは地下水によって支えられているといっても過言ではなく、世界の食物の約40%は地下水によって育てられているとされます。そんな地下水の供給源である地下帯水層に水が満たされるには時間が掛かる事が判っていて、今、地下水を汲み上げている影響は未来に生じる事が考えられ、閾値に近付いてから危機感を持っても間に合わない可能性もあります。 地下水の過剰な汲み上げによって川の水が完全に枯れるという事はほとんどないとされますが、流量が10%減っただけでも流域の淡水系の動植物へは大きな危険が及ぶともいわれます。 今後、人口の増加によってさらに地下水の需要が高まる事が考えられます。20世紀は石油を巡って人々が争い、21世紀は水を巡って争うともいわれる時代に生きる者として、水の利用について厳しく見直す必要を感じてしまいます。
2019年11月18日
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ダイエットの敵が脂肪分やカロリーから糖質の摂取による血糖値の急激な上昇に移ってから久しい感じがするのですが、相変わらず脂肪分とカロリーは敵対視されていて、そこへ新たな敵である糖質の摂取が加わったような印象があります。 最近になって脂肪の摂取と肥満を結び付ける誤解は、米国の製糖業界と名門ハーバード大学を巻き込んだ陰謀であった事がいわれるようになってきたのですが、あまり認知は広がっていないのか脂肪は変わらず悪者のままのように思えます。 高タンパク、低脂肪が健康的な食材の条件のようにいわれている事から、肉類に含まれている脂肪分は可能な限り取り除いた方が良いと考えられているのですが、脂身は積極的に摂った方が良いという意見もあります。 米国で心臓病やその原因となる肥満が問題視されるようになってきていた1960年代、製糖業界はハーバード大学の研究者へ資金を提供し、「砂糖と脂肪の心臓病への影響」についての調査を依頼しています。その際、意図的にデータを操作し、脂肪だけが肥満の原因のように結論を導き出したといいます。 以降、60年にもわたって脂肪は肥満、ひいては心臓病の原因と考えられてきたのですが、脂肪を摂れば脂肪が増えるという単純明快さも脂肪のイメージを悪くしていたと思えます。そうした悪いイメージのために脂肪の必要性に関する認知は広まっておらず、思わぬ脂肪不足も引き起こしているともいわれます。 脂肪は体内ではリンと結合し、リン脂質として細胞膜の材料となります。約37兆個ともいわれる体細胞のすべてでリン脂質が使われ、絶えず作り替えられている事から体内では常に脂肪が必要とされています。 また、各種のホルモンやプロスタグランジンなどの情報伝達物質も脂肪から作られていて、細胞やホルモンの材料として使用するには日本人の平均的摂取量である男性の74g、女性の56g程度では充分にか賄いきれないともいわれ、余剰となって体に溜まるなどありえないともいわれます。 脂肪と並んで三大栄養素とされる炭水化物やタンパク質は、体内に取り込まれるとブドウ糖やアミノ酸に分解されてほぼ100%が吸収される事に対し、脂肪は水に溶けにくい事から腸から吸収する事が難しく、多くの脂肪が取り込み損なって体外へ排出されています。 脂肪の中でも健康に悪いイメージが強い飽和脂肪酸は特に吸収効率が悪いとされ、大量に摂取しても体内に過剰に取り込む事は難しいとされます。最近になって食事による摂取と血中濃度の関連が低いといわれるようになってきたコレステロールも吸収効率が悪く、取り込みにくい栄養素となっていて、肝臓で作り出す事によって不足から免れています。 脂肪は、体内では脂肪酸とグリセリンに分解されて利用されます。グリセリンはエネルギーの素となり、脂肪酸はアミノ酸と同じように体内でビタミンのような働きをする事も知られるようになってきています。体脂肪を増やしているのは脂肪ではなく、脂肪細胞内に取り込まれる糖である事を意識し、もう少し脂肪との関りを考えてみなければと思います。
2019年09月24日
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夏が来て、日常的に猛暑日という言葉を聞くようになると、地球が温暖化しているという事を意識させられます。夏休みの子供たちが学校のプールやラジオ体操へ向かう姿を見掛けると、自分が子供の頃に経験していた夏はこんなにも暑かっただろうかと思い返したりもします。 暑すぎる気温に熱中症を心配したり、見慣れたコースを大きく外れてやってくる強烈な台風を見ていると、今すぐできる事から対策を始めなければと思えてきます。何から手を付ければとも思えてしまうのですが、とりあえず温暖化の原因ともいわれる温室効果ガスの排出が少なくなるような生活を心がけなければと考えてしまいます。 温室効果ガスの排出抑制についてはさまざまな事がいわれているのですが、意外な事が地球温暖化の対策に繋がるという事がいわれています。その意外な対策法とは菜食主義の推奨で、肉を食べる人が少なくなれば温暖化の進行は抑えられるといいます。 食と温暖化、関係がある事とは思えながら直接的な事としてはイメージしにくいのですが、世界中で食糧の生産から流通、消費までの流れをめぐるフードシステムは、世界で排出される温室効果ガスの4分の1を占めるともいわれ、食と温暖化が深い関りを持つ事が判ります。 世界のフードシステムから排出される膨大な量の温室効果ガス、その中でも畜産業にまつわるものが半数以上とされ、特に牛の飼育に関わるものの比率が高いとされます。現在、牛の多くが穀物を中心とした配合飼料で育てられていますが、牛一頭が食材として賄える量を「1」とすれば、牛一頭が出荷されるまでに消費される穀物を直接食糧とした場合、その賄える量は「20」にものぼるとされ、牛肉を食糧とする事の効率の悪さが窺えます。 また、畜産業は地球の気候に対し二重の脅威になっているともいわれ、ブラジルなどの亜熱帯地域における牛の放牧地や大豆を生産する畑を確保するために行われている森林の伐採は、二酸化炭素を吸収する場を奪っているとも指摘されています。 そうした事情を受けてロンドン大学のゴールドスミス校では、新たに就任したコーナー学長が環境保護の取り組みの一環として構内での牛肉を使った食べ物の提供の禁止を発表しています。牛肉の完全な排除に併せペットボトル入りの水やプラスティック製のカップに10ペンスの追加料金を課すといった措置も行われている事から、かなり思い切った取り組みともいえます。 それに対しイギリスの畜産業界は猛反発し、全英農業者組合のロバーツ副会長は、「イギリス産牛肉に対する明白な理解の欠如」として批判を展開し、イギリスの畜産業界では環境に配慮して生産効率を高めている事から、「地球を守りたかったらイギリス産の牛肉を買うべき」と主張しています。 そんな中、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)によって、今後の気候変動と土地利用に関する視点から、「食品ロスを減らす事」と「肉食を減らす事」がカギとなる事が発表され、地球温暖化の対策として食の在り方を見直す事は今後、重要視されてくるのかもしれません。
2019年08月19日
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南阿蘇という環境に暮らしていると、車は欠かせない存在となってきます。近くのコンビニへ行くにも車を出す必要があり、熊本市内へ出掛けるという日常を繰り返していると、月に2000キロほどを走っている事が普通の事になります。 そのため2000キロという距離はそれほどでもないように思えてしまうのですが、実際にはかなりの距離となっていて、日本からだとマリアナ諸島の西方あたりに相当します。そのマリアナ諸島西方を大切な場所としているのが、今や絶滅危惧種となってしまったウナギで、東アジア全体に分布する二ホンウナギは遠く離れたこの一ヶ所に集まって産卵を行っています。 ウナギというと高価な天然ウナギと比較的安価な養殖ウナギを見掛ける事ができますが、どちらも自然界に由来していて、マリアナ諸島西方の産卵場で孵化した稚魚のシラスウナギが自然の環境下で成長すると天然ウナギ、人に捕らえられて養殖場で育てられると養殖ウナギとなるため、どちらも天然の資源には変わらないものとなっています。 そんなウナギが絶滅危惧種に指定され、数を減らしながらやがては絶滅が危惧されるという危機的状況と、スーパーの安売りの目玉品としてチラシの日替わりコーナーを飾るという実情にはあまりにも乖離したものがあり、ウナギというものとどのように接していけばよいのかと難しいものを感じてしまいます。 ウナギが絶滅へと向かう背景には、ウナギが自然に増えていく再生産速度と人がウナギを食べる消費速度のバランスが崩れてしまっている事が考えられ、ウナギを食べる量を減らす事と、ウナギが育ちやすい環境を整える事の必要性を感じます。 天然資源であるウナギを守るため、東アジアの4か国ではシラスウナギの漁獲量の上限を78.8トンと定めています。しかし、毎年の漁獲高は40トンほどに留まっていて、そもそも78.8トンという上限値が実態にそぐわない過剰な設定となっていて、実質的には捕り放題という状態となる事がウナギを絶滅へと向かわせているともいえます。 また、ウナギの保護を難しくしている理由の一つにウナギを取り巻く世界が高度にビジネス化されていて、密漁、密売、密輸が横行し、日本国内でも養殖ウナギの7割近くが違法に流通した可能性のあるシラスウナギに由来するともいわれます。 安価に売られていたので、違法行為に由来したウナギである。老舗の高級専門店なので合法的なウナギであると断定できない事が、消費者の立場からウナギを保護する事の難しさに繋がっているようにも思えます。 ウナギの仕入れに関しては、ウナギ料理を提供している料理店では供給業者が納入したものを使うしかなく、どれだけ権威のある高級専門店でもウナギを選ぶ事はできないとされます。そうした特殊な習慣もウナギを取り囲む世界を複雑化させているようにも思え、一通りの保護活動では減り続けるウナギを守る事はできないようにも思えてきます。 子供の頃、釣りが趣味だった父親に連れられて、海に張り出した埋め立て地に張り巡らされた用水路にウナギを釣りに行った事があります。石組みの用水路の壁に無数に開いている石の隙間に、細い独特な形状の釣竿を差し込んでウナギを釣る父親の姿を眺めていたのですが、コンクリートの擁壁が当たり前となった昨今、久しくあのような景色を見ていないように思えてきて、その事もウナギが繁殖できる場所が少なくなった事の現れともいえます。 危険なレベルといわれる暑さが続く夏、ウナギの需要は大いに高まり、スーパーには大量にパック詰めされたかば焼きが並べられますが、身近に思える存在のウナギが絶滅の危機に瀕している事、そして私たちは絶滅を回避するための手立てを確立できていない事を改めて考えなければと思ってしまいます。
2019年08月07日
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朝、洗顔を終える頃になると坊ちゃんがやってきて、「僕も」という感じで足に擦り寄ってきます。それを合図に坊ちゃんの部屋へ行き、二人にとっての一日の始まりとなるブラッシングをします。それが私にとっての至福の時間となって久しく、欠かせない時間となっています。 空前の猫ブームといわれながらその勢いは一向に衰えを見せず、相変わらず猫は人気者として人と猫との関りの深さを感じさせてくれます。人と猫との出会いは今から約1万年前、現在のイラク周辺にあたるメソポタミアの事と考えられています。 メソポタミアでは農耕という文化が生まれ、土地を耕し、麦などの穀物を育てるようになりました。穀物を収穫して貯蔵庫に保管するようになると、それを狙ったネズミの被害が顕在化してきます。 そんな悩みから人を救ってくれたのが現在の猫の祖先にあたるリビアヤマネコで、人が寝静まった真夜中に穀物の貯蔵庫に侵入してネズミを捕食していたと考えられます。 人に危害を加える事もなく、人が寝静まった頃にやってきて、ネズミを退治してくれる猫はありがたい存在というだけでなく、その愛らしい姿から食事の残り物などを貯蔵庫の付近に置いて、徐々に人と猫の距離が縮まっていった事は容易に想像する事ができます。 そうして人と共に生活するようになった猫が日本へやってきたのは奈良時代、仏教の経典をネズミから守るために中国から連れてこられたと考えられています。しかし、最近になって経典の守護者として渡来したという説は揺らいできていて、日本人と猫との付き合いは更に古いものであったという事が判ってきています。 2007年に姫路市の見野古墳群で見付かった土器には、猫のものと思われる足跡が残されていて、人が猫と共に生活していた事が覗えます。年代測定の結果、1400年前のものと推定され、古墳時代の後期に作られた事になります。 さらに2008年には長崎の壱岐島にあるカラカミ遺跡から動物や魚の骨に交じって猫の骨が見付かっており、年代測定の結果、約2100年前のものであるとされた事から、日本人と猫の関りは通説よりもかなり古いものである事になります。 中国に猫が伝わったのは約2000年前とされる事から、中国と同時期、もしくはもっと早い時期に日本人は猫と暮らし始めた事になり、何処からきたのかが気になってしまいます。 猫はメソポタミアからエジプトへ伝わり、その後、ヨーロッパや中国に伝わったとされます。それ以外にもインドや東南アジアを経由した別ルートが存在していた事が考えられ、今後、DNAの解析などで年代やルートが明らかになる事と思われます。 古い時代、黒潮に乗って長い航海をした話を聞かされます。そんな航海の友として猫が乗船していて、そうして日本へとやってきたのではと考えつつ、穀物や仏典の守護といった実利がなくても猫とは一緒にいたいものだと思ってしまいます。
2019年08月02日
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以前、「最高の人生とは、アメリカ人の給料をもらい、イギリス人の家に住み、日本人の嫁をもらい、中国人のコックを雇う事。最悪の人生とは中国人の給料をもらい、日本人の家に住み、アメリカ人の嫁をもらい、イギリス人のコックを雇う事」という言葉を聞かされ、イギリスの食事が美味しくないという事を意識させられた事があります。 著名な作家によってイギリスの代表的な朝食メニューであるオートミールについて、「最も良い食べ方は、そのままトイレに流す事」という発言が聞かされたり、「朝食は忍耐を教えるためにある」といった言葉には、美味しさとは遥かに次元の違う世界観を感じたりもします。 一説にはイギリス人はビーフイーターと呼ばれるほど牛肉を好み、倹約志向から一点豪華主義で主菜の牛肉以外を蔑ろにしてしまう事がイギリス料理の評価を下げてしまっているともいわれ、サラダやスープ、デザートの不在に味気無さに通じるものがあるのかとも思えます。 イギリスの映像を見ていると、いつも雨や霧のためか路面が濡れている印象があり、あまり晴天に恵まれている感じがしません。そうした気候のためかイギリスでは手に入る野菜の種類が少ないともいわれます。流通が発達した現代では解消されていますが、野菜不足の伝統が料理の発展を阻害していたとも考えられます。 かつて世界中に植民地を有していたイギリスでは、特に有名な東インド会社と西インド会社から大量のお茶と砂糖がもたらされており、その二つが合わさって砂糖を大量消費していたとされます。その量は当時のフランス人の7倍以上ともいわれ、甘味への傾倒が味覚の発達を妨げたとも思えます。 16世紀に起こった宗教改革による修道院の解体とクロムウェルによるピューリタン革命によって新興貴族が社会を支配するようになると、服装やマナー、住居、飲食などのライフスタイルがジェントルマンのものとして定義されるようになり、特に飲食に関しては「ジェントルマンは暴飲暴食はせず、常に質素な食事をするべき」と考えられた事が後のイギリス料理に大いに影響したともいわれます。 海を越えた隣国となるフランスでは料理が発展していた事から、独自の料理を発展させる必要性が低かった事や、ナポレオン戦争などによってライバル関係となるとフランスの文化が駆逐される事となり、食事と会話を愉しむフランスのマナーの正反対が採られ、食事中の会話は少なければ少ない方が良いと考えられた事も食事の味気無さを助長しています。 イギリスでは伝統的に若者が住み込みで働く「サーヴァント」と呼ばれる制度があり、多くの若者が14歳前後で親許を離れて他の家庭に住み込み、各種の労働に携わっていました。 サーヴァントを通して社会人となるさまざまな訓練を受け、サーヴァントを卒業して一人前と認められていくのですが、人生経験が少ない若者が料理に携わる事から必然的に料理の質が低下してしまう事や、14歳前後で親許を離れてしまう事から母親の味の継承が妨げられてしまい、「おふくろの味」といった食文化の断絶が料理の発展を妨げたともいえます。 18世紀から始まった産業革命もイギリス料理の不味さを決定的にしたともいわれ、産業革命以降、人口が都市部に集中する事になってしまい、多くの人が農村を離れた事で食材の自給自足が困難となり、野菜や乳製品が手に入りにくくなったために、普段食べるものといえばパンとオートミール、たまにハムやベーコン、チーズというライフスタイルが定着し、手っ取り早くエネルギーを摂るために砂糖をたっぷりと入れた紅茶が頻繁に飲まれるようになっています。 さまざまな要因が絡み合って結果に結び付いているように思いながら、最大の要因は食事の捉え方にあったように思え、食事は活動に必要となるエネルギーを摂取するためだけのものと考えられた事が味気無さに繋がったように思えますが、その合理性の高い気質が産業革命を成功させたのかとも思えてきて、一つの生き方のようにも思えてしまいます。
2019年07月08日
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ひどい乾燥体質で、洗顔後は水気が乾かないうちに慌てて保湿剤で保護しないと、すぐに皮膚が突っ張った感じになってしまいます。最近はそうしたニーズが多いのか、保湿剤にも紫外線をカットする機能が備えられていて、ある程度の紫外線は防いでくれるのですが、保湿剤の後は日焼け止めを塗って、つい当たってしまう生活紫外線を防ぐようにしています。 聞くところでは日焼け止めを塗らない、塗り忘れてしまう事が多いとされる瞼に皮膚ガンが増えているとの事で、オゾン層の破壊がいわれるようになって久しい昨今、日焼け止めは欠かす事のできないものとなったようにも思えます。 そんな日常に溶け込んでいるようにも思える日焼け止めに関し、気になる臨床試験の結果がFDA(米国食品医薬品局)より発表されていました。日焼け止めに配合されている紫外線防御剤が皮膚から体内へ吸収され、血液を介して全身を巡っているという事が判ったとされます。 かつて日焼け止めは海水浴へ行った際などの限られた場面でのみ使われていました。紫外線がガンをはじめとする多くの健康リスクを引き起こす事や、オゾン層が破壊されてオゾンホールができた事で昔よりも多くの紫外線が地上に降り注いでいる事が広く認識されるようになると日焼け止めは日常的に使われるようになり、日焼け止めに配合される紫外線防御剤が皮膚から吸収されているのではないかという疑いが持たれるようになっていました。 紫外線防御剤の多くは、何十年も前にFDAの許認可を得て使用されています。しかし、それは皮膚の表面で使用される事のみを想定しており、体内を巡る事は考慮されていません。今回の研究では、日焼け止めが皮膚の表面に塗られてからわずかな時間で、配合されている成分が血液中に取り込まれる事が発見されています。 現時点では紫外線防御剤が体内へと取り込まれた事による影響は判っておらず、今後の研究が必要とされています。発ガン性の有無や内分泌系への影響など懸念点は多く、FDAは紫外線防御剤の16種に関し、再審査を行う事を明らかにしています。 すでにFDAは紫外線防御剤の安全性と有効性を証明するために、血液への吸収に関するデータの提出を義務付けています。日焼け止めを使用しない事は皮膚ガンのリスクを高めてしまう事が知られているので、吸収された成分が引き起こす健康リスクと、どちらが高いリスクとなるのか、そんな事を考えなくてはいけなくなるのかと、今後の展開を気にしてしまいます。
2019年05月27日
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リビングの窓、サッシの部分に坊ちゃんが興味を示すので、何かがいるのだろうと考えながら、最近、家の中に侵入する事が増えてきているカメムシではない事を願いつつ、怖るおそる様子を見てみると黒っぽい色のゾウムシがいました。 特徴的な長い口からすぐにゾウムシと判り、一安心しながらそっと紙の上に乗せて捕獲し、窓の外へとお引き取りいただいたのですが、食欲旺盛な草食昆虫という事で、植えたばかりの花の苗に被害が出ない事を願ってしまいます。 ゾウムシは昆虫網甲虫目ゾウムシ上科に分類される昆虫で、さまざまな生物の分類上、ゾウムシ上科に属するのは最多数を誇るとされるくらい多種多様な生物で、小さなものは顕微鏡レベルから大きなものでは40mm近い大きさのものが世界中に分布しています。 判っているだけでも約6万種が存在し、そのうちの1000種以上が日本に生息しているとされます。その中の一種、石垣島に生息するクロカタゾウムシはその名の通り黒くて硬く、その硬さは最強とまでいわれていて、ネットで調べてみても「死んだクロカタゾウムシを拾ったので、試しに指で潰してみようとしたが、指が痛くなるだけで潰せなかった」「標本用昆虫針の一番太いステンレス製の5号でも貫通できなかった」「硬くて消化できないので、鳥もクロカタゾウムシを食べようとしない」といった言葉が見られます。 ひたすら硬くなる事で天敵がいない状況を作り出してきたクロカタゾウムシですが、その驚異的な硬さの秘密が先日解明されていました。ゾウムシをはじめとする甲虫は、外敵や乾燥から身を守るために体の表面に硬い外骨格を持っています。クワガタやカブトムシと比べてもクロカタゾウムシの外骨格の硬さは群を抜いており、その硬さの秘密はアミノ酸の一種である「チロシン」にあるとされます。 チロシンは外骨格を形成するタンパク質とキチン質を結合する役割を担っており、クロカタゾウムシの体内ではこのチロシンが豊富であるとされます。しかし、豊富なチロシンを作り出しているのはクロカタゾウムシ自身ではなく、クロカタゾウムシの体内に棲みついている「ナルドネラ」と呼ばれる細菌である事が、今回の研究によって解明されています。 ナルドネラは1億年前からゾウムシの体内に棲息するようになった事が知られており、そのナルドネラのゲノムを解析したところ、生存に必要な最低限の遺伝子しか持っておらず、大半の遺伝子を失いながらチロシンの生成に特化した機能を有している事が判っています。 試しにクロカタゾウムシの幼虫に抗生物質を投与して体内のナルドネラが少ない状況を作り出すと、クロカタゾウムシの体液中のチロシン濃度の大幅な低下が観察され、その後、成長した成虫では黒い色素が失われて赤い色合いの柔らかい外骨格になる事が確認されていました。 別な実験では高い温度で飼育する事で体内のナルドネラが死滅させると、クロカタゾウムシは成虫になる事ができない事も判っており、クロカタゾウムシが成虫になるにはナルドネラが必要である事も示唆されています。 ナルドネラはクロカタゾウムシという最適な棲息環境を得る代わりに大量のチロシンを提供し、クロカタゾウムシの健やかな成長と天敵を寄せ付けない強靭な外骨格を支えていた事になります。 1億年もの間続けられてきた共生関係という事になりますが、強さの秘密が解明された事で新たな脅威がゾウムシに迫っているともいえます。その旺盛な食欲から害虫扱いされているゾウムシですが、今回明らかになった共生のメカニズムを逆手に取って、共生細菌だけを標的とした薬剤を散布すれば人体に悪影響を及ぼす可能性が低い方法でゾウムシ類を駆除する事ができると考える事ができます。 強さの秘密が判った事で危機を迎える。ドラマチックな展開のようにも思えますが、細菌相手の攻撃は薬剤耐性菌の問題のように怖いものを感じてしまいます。共生細菌を利用しているのはゾウムシ類に限らず、昆虫全体の2割近くが成長や生存、繁殖といった事を共生細菌の影響を受けているとされ、その中には害虫も多いといいます。 ゴキブリ、シロアリ、シラミ、アブラムシ、ウンカ、ヨコバイ、カイガラムシなど、名立たる害虫たちが共生細菌の恩恵を受けている事から、共生細菌を攻撃する事で多くの害虫問題を解決できるようにも思えます。しかし、細菌の対応力の高さを思うと、下手に関わらない方が良いようにも思えてきます。
2019年04月15日
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とても仲の良い母子がいました。かつては母と娘だったのかもしれませんが、娘さんが大人になってからは二人の関係は少しずつ変化し、まるで気心の知れた親友のようになっていました。 二人はよく懐かしい思い出話をしては、時を忘れたかのように過ごしていたのですが、いつの頃からかそんな二人の会話がスムーズに進まなくなり、娘さんが苛立っている姿を見るようになってきていました。 大好きなお母さんのはずなのに、一緒にいると苛々してしまう。つい辛く当たってしまって、後で自己嫌悪に陥ってしまう。仲良しの二人の関係を変化させてしまっていたもの、それが徐々に進行していくお母さんが患っていた認知症でした。 いつもと変わらず元気で、見た目も何も変化していない。しかし、徐々にその人がその人でなくなっていく。私の中で認知症はその人がその人として存在しなくなるという意味で死と同じものとして捉えられ、怖ろしいものの一つとなっています。 急速に高齢化が進んでいるとされる日本で、既に認知症の患者は65歳以上の7人に1人の割合とされ、2025年には700万人にも達するとされます。認知症で最も多いのがアルツハイマー型の認知症で、全体の7割を占めていて、次いで多いのが脳の血管障害による脳血管性認知症の2割、残りの1割がレビー小体型をはじめとする認知症となっています。 大多数を占めるアルツハイマー型認知症ですが、原因ははっきりとは判っておらず、効果的な治療法の確立には至っていません。現在、アルツハイマー病と診断されて処方される処方薬には、「認知症の進行を抑制するものではない」「本剤の有効性は確認されていない」といった趣旨の一文が注意書きに添えられていて、アルツハイマー病治療の難しさを窺わせてくれます。 アルツハイマー病の原因は脳内にアミロイドβと呼ばれる特殊なタンパク質が蓄積する事で、蓄積によってダメージを受けた神経細胞が死滅して機能不全を起こすと考えられてきました。そのためアミロイドβを発生させない、蓄積したアミロイドβを除去する事がアルツハイマー病の治療法確立の方向性とされてきました。 しかし、このコラムでも幾度か取り上げた事があるのですが、アミロイドβの蓄積は結果であって原因ではなく、原因が的確に捉えられていないために解決が遠のいているのではという考え方も根強く存在していました。 火災が起こると建物が使えなくなり、建て替えが利かないので火災が繰り返されるとやがて街が機能しなくなる。そこで建物が使えなくなる過程を観察すると、その場にはたくさんの消防士が集まってきている。街を守るために消防士が集まらないようにする、もしくは消防士を追い返す、消防士自体の数を減らすといった事が行われているのではないか、本当に必要なのは消防士の排除ではなく火災の予防なのではないか、そんな観点から確立された新たな治療法、それが「リコード法」とされます。 リコード法ではアミロイドβは脳にダメージを与えるものではなく、脳を守るためのものとし、脳に起こるダメージは炎症によるものとしています。脳に炎症を引き起こす原因は食事などで摂取した成分によるものから栄養素の不足、重金属やカビといった毒素など、36種類があげられています。 認知症は36種類の原因が複雑に絡む事から、「36個の穴が開いた屋根」に例えられていて、それぞれが認知症を引き起こす原因でありながら、どこにどのような穴が開いているかは個人によって相当違いがあり、個別に大きいものから塞いでいく事が治療に繋がるとされます。 脳が炎症を起こす原因を探って解毒を行い、ダメージを受けた神経細胞の再生治療を施す事で回復へと繋げる事ができるそうで、リコード法を実践している医院ではすでに100件以上の症例で投薬治療を行い、そのほとんどで神経細胞の再生と認知機能の改善が確認されているといいます。 アルツハイマー病は原因不明の治らない病気から、視点を変えた事で治せる病気へ。挙げられている36の原因は一般的で多くの人が当てはまるだけに、リコード法が広く普及する事を願ってしまいます。
2019年03月22日
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勝手な思い込みなのですが、海に住む生き物は体に染み込んでくる水分のお陰で、普段から飲料水を必要としないと思っていました。常に海中に身を置いているクジラやイルカが真水を飲むという話を聞いた事がないし、真水を得るために海の生き物が陸に上がったり、川を遡るという事はありえないと思えます。 海で暮らす一部の生物には「塩類腺」と呼ばれる体内の余分な塩分を排出する器官が備わっていて、それによって飲み込んだ海水から水分を吸収、塩分を排出していると考えられていますが、ウミヘビなどのようにその割には塩類腺が小さく、とても日常的に海水を飲み込んで必要な水分を得ているとは思えないものも存在しています。 最近の研究で判った事なのですが、南米で雨季が始まった直後に捕獲したウミヘビに真水を与えると飲んでくれるのですが、雨季がしばらく続いた後に捕獲したウミヘビに真水を与えてもほとんど飲んでくれないという事が観察され、雨季が始まった頃のウミヘビは脱水状態(喉が渇いた状態)にあり、雨季途中のウミヘビは脱水状態にない事が判ります。 この事はウミヘビは水分を海水から得ていたのではなく、雨水に依存していた事を示していて、雨水を真水として飲む事で渇きを癒していた事を示しています。海に降り注いだ雨水は、すぐに海水に溶け込んでしまうような感じがするのですが、実際には比重の違いから交じり合うまでに時間が掛かり、その間にウミヘビは海の表面の水を飲み、混じり込んだ僅かな塩分を塩類腺から排出していた事になります。 ウミヘビよりも遥かに体が大きい水棲哺乳類のイルカやクジラの場合は、海水の表面の雨水という訳にはいかず、オキアミや小魚などのエサを通して水分を得ているとされます。魚類に含まれる水分は75%ともいわれ、エサの中から発達した腸を使って水分を吸収する事で必要な水分を得ているとされます。 また、イルカやクジラは体脂肪が多く、脂肪を分解する際に発生する水分も体内で利用しているともいわれ、優れたシステムが海中での生活を可能にしていると思えてきます。 昔、見た映画で、遭難してゴムボートで漂流しているグループの中で、渇きに耐えかねて海水を飲んでしまい、意識障害を起こして錯乱しながら死んでいく人の姿が描かれていて、それ以降、何があっても海水は飲料水として飲んではいけないと思ってきたのですが、遭難当初の元気なうちは少量の海水を飲んでも大丈夫である事を知りました。 飲む量が多かったり、繰り返していると腎臓に負担が掛かり、健康を害してしまう事になるのですが、体が対応できる少量であれば問題ないとされます。海は苦手な事もあり船旅をするという事はなさそうなので、まず遭難するという事は考えにくいのですが、もし遭難してしまったらウミヘビやイルカ、クジラの事を思い出してしまうかもしれません。
2019年02月22日
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まるでドレスを着ているような長くて優雅なヒレと、全身を覆う青い色がとても綺麗で思わず熱帯魚のベタを飼ってしまった事があります。ベタは縄張り意識がとても強く、同じ水槽に二匹を入れてしまうと片方が死ぬまで闘うともいわれ、仕方なく一匹だけをキッチンに設置した水槽に入れて飼っていました。 夜になると水槽に入れてあげたマグカップの中で寝ていたのですが、私がキッチンに入る気配を感じるとフワフワとカップから出てきてこちら側へとやってくるので、水槽のガラス越しに撫でてあげていた事が思い出されます。 ベタを飼育する際、水槽の近くに鏡を置いてしまうと、鏡に写った自分の姿を縄張りを荒らしに来た外敵と思い、攻撃してしまう事があるので注意が必要と聞かされていたのですが、そんな事はなさそうな研究結果が公表されていました。 大阪市立大の幸田正典教授を中心とした研究チームが行った実験によると、太平洋やインド洋に広く棲息する体調10cm程度のベラ科のホンソメワケベラを放した水槽に鏡を設置すると、最初の2、3日は鏡に写った自分の姿に噛み付くなどの威嚇行動をしていましたが、数日経つと鏡の前で踊るような行動を初め、鏡に写っているのが自分の姿である事を確かめている行動が観察されています。 同様の行動は象やチンパンジーでも見られていて、自分の行動と鏡の姿が完全に連動している事を確認し、写っている姿が自分のものである事の確証を得ているとされます。鏡の中に自分に気付くと、ホンソメワケベラは鏡を覗き込む仕草が増えたとされ、自分を客観的に見詰める習慣が生まれた事を示しています。 ホンソメワケベラは大きな魚に付いた寄生虫を取り除くという、「海の掃除屋」という役割を持っています。研究チームがホンソメワケベラの喉の部分に寄生虫に似た茶色い印を付けると、鏡を見たホンソメワケベラは水底の砂や石に喉をこすり付ける行動を繰り返し、寄生虫を取り除こうとする行動を採っています。鏡がない場合は、寄生虫に似せた印に気付く事がなく、こすり付ける行動はしなかった事から、完全に自分の姿と理解している事が伺えます。 幸田教授は、鏡像が自分である事を認識していなければ一連の行動は起こさないと説明し、人間や類人猿より下等と考えられてきた生き物の賢さについて、根本的に考えを改める必要があると話しています。 我家では鏡やガラスに写る姿を利用して、隠れた位置から私の事を観察している坊ちゃんの姿を何度も見ています。最近になって動物の賢さが再認識される事が増えてきていますが、多くの動物が人と変わらない賢さを持っているのでは、そう思えてしまいます。
2019年02月12日
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アメリカのレストランでいただいた格子状にカットされたフライドポテトの美味しさが忘れられず、自分でも作ってみようと思って調べてみると、格子状にジャガイモをカットするには「ワッフルスライサー」が必要という事が判り、その後、探しているのですが良さそうなものに出会えず、未だに我家のフライドポテトはくし型のままです。 それでも格子状に切ったフライドポテトを出してくれるレストランを見付けていたのですが、久々に行ってみるといつの間にか普通の直線的な形に変わってしまっていて、「この店に来れば食べられる」と信じていただけに、かなりがっかりしてしまったという事がありました。 某大手ハンバーガーチェーンでサイドメニューとして人気のフライドポテトですが、揚げたての香りに思わず食欲を刺激されたという経験を持つ人も多いと思います。香ばしく揚がった美味しさを再現しようと同じような切り方をして試してみるのですが、今一つ違うものを感じてしまい、業務用フライヤーでなければあのようには揚がらないのかと考えてしまいます。 以前、ハンバーガーチェーンのフライドポテトの原材料が公表され、味の違いは揚げ方の違いではなく、原材料そのものにある事が判るという事がありました。切り分けたジャガイモを油で揚げ、塩で味付けするだけといういたってシンプルなはずのフライドポテトには17種類の素材が使われ、その内容には体に悪いとされるものも含まれていて、情報は瞬く間にインターネットを経由して拡まっていました。 消泡剤や色の調整剤、保存料、遺伝子組み換えされた油などあまり口にしたくないものが並んでいて、頻繁に食べるべきものではないと思えてきます。そうした添加物が含まれていないにしてもフライドポテトはあまり健康に良くないイメージがあり、実際、油で揚げたジャガイモを週に2回以上食べる人と、油で揚げない別の調理法で料理されたジャガイモを食べていた人では、死亡リスクに明らかな違いがあるという研究結果も存在します。 揚げ物であるためにカロリーが高い事が不健康な理由のようにいわれてきましたが、カロリーと肥満の関係が疑問視されるようになってもジャガイモには糖質が多い事が問題視され、デンプン爆弾とまで呼ばれてしまう事があります。 高いカロリーや豊富な糖質が肥満に繋がり、健康リスクを高めているだけでなく、ジャガイモに豊富に含まれているアミノ酸、アスパラギン酸が100度を超える高温で熱される事で発ガン物質のアクリルアミドに変化してしまう事もリスクに繋がるともいわれます。 揚げ油にも問題があるとされ、含まれているトランス脂肪酸が健康に悪影響を与えるとも考えられています。その反面、油に含まれている抗酸化作用のある成分が素材に移るとされ、油で揚げたジャガイモやカボチャ、ナスなどは炒めたり、茹でたりしたものよりも多くの抗酸化物質を含むとされます。 油自体も脂溶性ビタミンの吸収を助けるとされ、必ずしも健康に対してマイナスに働くものではない事が判ります。メリットとデメリット、さまざまな要因を考えてみるのですが、揚げたてのフライドポテトには抗しがたい魅力があり、目の前にして食べないというストレスも体に悪いといい訳けしながら、思わず食べてしまっています。
2019年02月08日
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簡単な筒状の機材に電気を流し、空気と水からアンモニアを作り出す技術が開発され、やがては水素を取り出すための化石燃料も大規模なプラントも必要なくなり、農地の一角で肥料が作れるようになるかもしれないという明るい未来が予想される反面、肥料という点からは非常に未来を不安視する要因も聞かれています。 南太平洋にナウルという島国があります。バチカン市国、モナコ公国に次ぐ世界で三番目に小さい国で、その面積は東京都の港区とほぼ同じくらいだといわれます。目立った山もなく、川もなく、南太平洋らしさが感じられるビーチもない事から観光業などの産業が成り立たず、非常に貧しい国だといわれます。 現状は貧しくてもかつては非常に裕福で、医療費や教育費、税金、公共料金は無料というだけでなく、ベーシックインカムとして生活費が政府から支給され、新婚のカップルには新築の2LDKの家が無償でプレゼントされていました。まるで産油国のようですが、そうしたナウルの豊かさを支えていたのがリンの鉱石で、岩礁に海鳥の糞などが堆積してできたナウルからは質の高いリン鉱石が豊富に産出されていました。 リン鉱石は世界中で化学肥料の材料として使われていて、ナウルのリン鉱石は純度が高く良質な事で知られ、最盛期には170万トンものリン鉱石が採掘されていました。ナウルがリン鉱石で得た収入は5000億円以上ともいわれ、人口が5000人ほどであった事から国民一人当たり1億円にも達します。 一時は島には主要な道路は1本しかなく、自転車でも1時間ほどで一周できてしまいそうな島なのにベンツやフェラーリが所有され、まさにバブルとも呼べるような状態となっていました。そんなナウルが破綻したのは、主要な産業であるリン鉱石を採掘し尽くしてしまったためで、潤沢な資産を使った海外投資なども試みられましたが尽く失敗してしまい、現在のような状況を迎えてしまっています。 リン鉱石からは、肥料に欠かせない三大栄養素のアンモニア、リン、カリウムの中のリンが得られます。植物には欠かせないものであっても鉱石である以上、採掘を続けるといつかは埋蔵量が尽きてしまいます。アンモニアのような化合物であれば幾つかの元素を組み合わせて作り出す事も考えられますが、リンは元素である事から合成する事ができず、埋蔵量を使い尽くしてしまうと新たに得る事ができなくなっています。 リン鉱石の枯渇はナウルに限った事ではなく、世界中の鉱山で埋蔵量の減少がいわれています。将来的な人口爆発を支えるための食糧増産に欠かせない肥料ですが、このままでは三大栄養素を揃える事ができなくなり、危機的事態を迎えてしまう事も考えられます。 一説には2060年には世界中のリン鉱石が枯渇してしまうともいわれ、それ以降、近代的な農業が成り立たなくなるという怖ろしげな話もあります。農耕という食糧確保の術を手に入れた事で人は定住する事を可能にし、文明を築いてきました。その農業を失った時、何が起こるのか、とても怖い気がしてしまいます。
2019年02月06日
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今後、世界的な問題となるとされる事の中に人口の増加があります。日本では少子高齢化と人口の減少がいわれていますが、日本人が減少したくらいでは追い付かないほどの勢いで世界の人口は増え続け、さまざまな問題へと繋がっていくと考えられています。 人口の増加に対応するために欠かせない事の一つとして、食料の確保が重要となります。食料を増産しなければ増え続ける人口を支える事ができなくなってしまうのですが、そのために必要となるものがアンモニアといわれます。 アンモニアというと蜂に刺された時に必要になるものという事が思い浮かび、試合中に意識が朦朧としたボクサーに特有の刺激臭を嗅がせ、その刺激によって意識をはっきりさせるという用途を聞かされた事が思い出されます。 それ以外の用途というとあまり浮かんでこないのですが、アンモニアは農業には欠かせないものとなっていて、化学肥料の原料として広く使われています。その生産量は年間で1億7千万トンが世界中で生産されているとされ、その8割が肥料の原料として使われているとされます。 地中に含まれているミネラルなどの栄養素は、植物の成長によって植物中へと移動し、収穫する事でその土地から奪われてしまいます。そのため、どんなに肥沃な土地でも畑として繰り返し植物の栽培、収穫を繰り返す事でやがては植物を育てる事ができない痩せた土地へと変わってしまいます。 土地が痩せてしまう事を防いだり、不足する栄養素を添加して植物の成長を円滑にするために必要なものが肥料であり、その歴史は極めて古いとされます。今から1万年ほど前、旧石器時代に農耕がはじまり、人々が定住するようになると、食料を生産するために畑が作られ、切り開いた平野で刈り取った雑草などが燃やされ、その灰が最初の肥料となったと考えられています。 肥料に欠かせない三大栄養素といわれるのが窒素、リン、カリウムの三成分で、その窒素の供給源として肥料作りに使われているのがアンモニアとなっていて、肥料作りに欠かせないものといわれる所以となっています。 現在、アンモニア生産はハーバー・ボッシュ法と呼ばれる鉄の触媒を使って高温高圧で水素と窒素を反応させる方法で行われています。高温高圧という環境を作り出す事や、水素を化石燃料から作り出している事からそれなりにコストが掛かっているとされ、製造施設も大規模なものが必要になっています。 そんなアンモニアを簡単に、しかも水と空気から作り出せるという夢のような技術が開発されています。開発者は九州工業大学大学院生命体工学研究科の春山教授で、春山教授は気体と液体の境界で起こる反応を研究している中、水の表面では水素原子が他の原子と反応しやすくなる性質に着目。空気に電気を流しながら刺激を与え、空気中の窒素原子と水の表面の水素原子が結合して水中にアンモニアが溶け出すという仕組みを考案しました。 まだ実験室レベルではありますが、筒の中に水と空気を入れ、電気を流す事でアンモニアが得られる反応器を完成させ、すでに世界各国へ特許の出願が行われています。使用するエネルギーが小さい事や設備も簡単に済む事から、将来的に普及すればインフラの整備が遅れている地域で直接肥料の製造を行うという事も可能になると考えられ、人口爆発が懸念される未来を支える技術となるといえます。 化石燃料から水素を取り出す必要もなくなり、二酸化炭素の削減に繋がる事も考えられ、植物に必要なものを植物と同じように水と空気から作り出すという事は、どこか夢のある技術のようにも思えてしまい、未来の農業というものを考えてしまいます。
2019年02月04日
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2050年、少々遠い未来のようにも思えますが、多分、私は生きてその時を迎えるように思えます。そんな2050年、重量換算で海の中に棲息する魚よりも、海を漂うプラスティックごみの量が多くなるだろうと試算されています。 喉が渇いていて、一気に飲み干したら数分、ゆっくり飲んでも一日程度で用なしになってしまうペットボトルは、自然環境に放出されると分解するのに450年もの時間を要するともいわれ、世界的なプラスティックごみの問題を解決する事の難しさを感じてしまいます。 上海へと向かう飛行機の窓から眼下に広がる海の様子がよく見えていたのですが、青空の下に広がる海面に吹き溜まりようなプラスティックごみの塊りがあるのが確認され、ショッキングな光景と思えたその30年も前に最初のプラスティックごみの塊りが太平洋の真ん中に発見され、今ではその大きさはフランスの面積の3倍にも及んでいるとされ、問題は解決へ向かう事なく深刻さを増しているといえます。 東京湾のカタクチイワシの8割がお腹にプラスティックを溜め込んでいる事が確認され、世界中の39のブランドの食卓塩の9割からマイクロプラスティックが検出されています。すでに人の体内にも蓄積されている事が予想され、世界規模でプラスティック製のストローやコーヒーカップ、レジ袋などの使用禁止が広がってきています。 そんな中、インドネシアではプラスティックごみを燃やして燃料に戻すという技術が開発され、実際にその装置をバイクに積んで路上のごみを拾いながら燃やしてバイクの燃料を確保し、ジャカルタからバリ島までの1200kmの旅を成功させるという事が行われていました。一ヶ月を要した旅で使われたプラスティックごみの量は130kgとされ、プラスティックごみの有効利用に繋がる技術と思えます。 開発者はプラスティックごみは単なる廃棄物ではなく、資源であるという事を伝えるために開発したとの事で、安易にこの技術を普及させてしまうと、無料でもらえるレジ袋は無料の燃料となってしまうことから、かえってプラスティックの消費量を拡大させてしまう可能性があるとして、慎重な姿勢を崩していないといいます。 日本では年間に900万トンのプラスティックごみを排出していますが、その7割は中国が受け入れています。その中国が受け入れの拒否を表明したため、日本のプラスティックごみは新たな受け入れ先を探す事となりました。できる事なら新たな受け入れ先を探すのではなく、まずは使用量を削減する、利用を長期化して必要量を減らす、利用できなくなったものはリサイクルする、そうした流れに繋がっていってくれたらと思ってしまいます。
2019年01月28日
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巷にマスクをしている人が増えたり、周りに急な発熱の話を聞かされたりすると、そろそろインフルエンザの流行が本格化してきた事を感じます。できる事なら辛い発熱や節々の痛み、激しい咳などには悩まされたくないので、良い予防法を講じなければと考えてしまいます。意外にも季節が冬へと移った事で水分補給を水から緑茶へ変えていた事が、インフルエンザの予防にも効果を上げてくれそうといわれています。 緑茶に含まれる成分としてはカテキンの風邪予防効果は広く知られていて、外から帰宅したらお茶でうがい、水分補給にこまめにお茶を飲むという事はカテキンの効果を期待した冬場の健康管理として聞かされます。 カテキン以外にもお茶に含まれる成分として、「テアニン」もカテキンと同じような抗ウィルス作用がある事が判ってきています。テアニンというとお茶の旨味にも関係した成分で、お茶の美味しさを決めるアミノ酸の半分以上を占めるとされ、お茶のほんのりとした苦味の中に感じる旨味と甘味はテアニンによるものとされます。 最近では、テアニンは旨味、甘味を左右するだけでなく、お茶を飲んだ際に感じる安心感にも関与している事が知られるようになり、リラックス効果を生むアミノ酸としてサプリメント化も進められ、眠りの質を良くするものとしても知られるようになってきています。インフルエンザ予防にも効果があるとなると、ますますテアニンの人気は高まっていくと思えます。 カテキンやテアニンだけでなく、お茶に含まれる成分でインフルエンザを予防してくれるものとしては「エピガロカテキンガレート」が広く知られていて、その働きは抗ウィルス薬の「アマンタジン」よりも高い効果を持つとされます。 また、最近報告されたところでは、お茶に含まれる抗アレルギー成分である「ストリクチニン」にはエピガロカテキンガレートを上回る感染抑止力を持つ事が確認されたそうで、お茶のインフルエンザ予防効果をさらに高めてくれている事が判ります。 緑茶と同じ「チャノキ」から収穫され、製法によって別物となってしまう紅茶にもインフルエンザ予防効果がある事が判ってきていて、その効果は緑茶にも引けを取らないともいわれます。 茶葉が酸化発酵する過程で茶葉に多く含まれていたカテキン同士が結合し合い、新たなポリフェノールである「テアフラビン」となります。テアフラビンは強力な抗ウィルス作用を持つだけでなく、発酵の過程で分子構造が変化した事で、より強力な抗ウィルス作用を持つ事になるとされます。 そうした一連の成分による抗ウィルス作用は、「スパイク」と呼ばれるウィルスが正常細胞に取り付く際に使う突起を捕らえて感染力を奪う事で作用している事から、免疫のように未知のウィルスには対抗できないという事がなく、新型にも対応できるようになっています。 緑茶と紅茶、さまざまな働きがインフルエンザから守ってくれる事が考えられるのですが、紅茶にミルクを加えてしまうと、ミルクに含まれているタンパク質と抗ウィルス成分が反応して有効性が下がってしまうため、大好きなミルクティーはインフルエンザの季節には封印しなければと思えてきます。美味しいだけでなく、怖いインフルエンザからも守ってくれるというのは、お茶とは如何に良いものかと思えます。
2019年01月25日
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ずいぶんと前になりますが、当時遊んでいたテレビゲームにどこから見てもただのウサギにしか見えないモンスターが登場し、可愛い姿に油断しているとクリティカルヒットと表示されてキャラクターが即死させられるという場面がありました。 草食動物の代表格のようなウサギが人を瞬殺するというのはイメージしにくいと思っていたのですが、草食動物の代表というウサギの位置付けが揺らぎそうな場面が撮影され、動物は一概に草食、肉食といった括りには収める事ができない可能性が出てきています。 カナダ、アルバータ大学の生態学博士候補生のマイケル・ピアーズ氏が学術誌の発表したところでは、ユーコン準州に生息する野ウサギの一種、カンジキウサギは、長く厳しい冬の間、栄養の補給のために動物の肉を食べていたとされます。 夏の間は植物を食べているウサギたちは、地面が雪で覆われて気温がマイナス30度以下まで冷え込む冬になると、餌を見付ける事ができなくなり、お腹を空かせて他のウサギや鳥の死骸を食べるようになるといいます。死骸であれば本来は天敵であるカナダオオヤマネコも例外ではない反面、ヒグマなどが食べに来る可能性が高い鹿などの大型の動物の死骸には近付かない事が判っています。 動物の死骸のそばに遠隔操作のカメラを設置し、2年半に渡って撮影を行い、観察した死骸の数は161体にも上ったそうですが、そのうちの20体は野ウサギによって食べられていました。 野ウサギが肉を食べたという記録は1901年には報告されていますが、カメラで撮影された事によって裏付けられるのは今回が最初となっています。雪に覆われ、大地が凍る中、必要な栄養を確保するための行動とも思えますが、可愛く、攻撃のための手段を持たないようなウサギがハゲタカやハイエナのように死肉をあさるというのは受け入れがたいものを感じてしまいます。 見方によっては死さえも無駄にしない、死しても無駄にならないという自然の決まり事のようにも思え、自然とは豊かで優しい反面、残酷でもあるという事を改めて思ってしまいます。自然豊かな環境で暮らしながら、まだまだ知らない事の多さに驚かされてしまいます。
2019年01月22日
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高校、大学と同じ学校で学んだ後輩がバイクのレースに出場していて、一度、バイクメーカーの広大な工場の敷地内にあるサーキットで開かれた耐久レースの様子を見に行った事があります。 50ccの原付バイク、レーシングライセンスを持たない素人も参加可能という事で、トップクラスのチームと中堅以下では相当な力の差が見受けられたのですが、休日を利用した地元の草レースという感じがほのぼの目に映った事が思い出されます。 その際、後輩に聞かされたところでは、レース場に行く前に少し遠回りをすると熊本空港の近辺へ行ける事から、航空燃料を少し分けてもらい、燃料のガソリンに混ぜるとバイクの馬力が上がるという事でした。その話や巨大な航空機をものすごい勢いで飛ばすジェットエンジンの原動力になるという事から、航空燃料はガソリンよりも火力が強く、危険なものというイメージを持っていました。 後に航空燃料はガソリンよりも可燃性が高く、爆発する危険性を持ったものではなく、「ケロシン」と呼ばれる家庭でストーブなどの燃料として使われている灯油のようなものである事を知り、燃えにくいものを燃やすからこそ巨大な力が得られるのだと、変な納得をしてしまいます。 ケロシンという呼び名はギリシャ語で「ろう」や「ワックス」を意味する「ケロス」に由来していて、成分的にはほとんど灯油と同じとされ、実際、ケロシンランプなどでは灯りのための燃料として使用されています。しかし、日本ではケロシンというとほぼ航空燃料の事として認識されており、特殊で高価なものというイメージが定着しています。 最近、そのケロシンの代替燃料としてバイオ燃料を使用する新たな手法が試みられ、家庭や加工メーカーから排出される廃食用油のリサイクルへの道が開かれる可能性が出てきています。 これまで日本国内でもバイオジェット燃料を使った試験飛行は行われていますが、使用された燃料は外国製のものだけで、大手航空会社で最近になって導入が発表されたものも外国製となっていて、国産のバイオジェット燃料が商用化されるのはまだ先という感じがしていました。 今回、新たなバイオジェット燃料を作り出したのは九州を中心とした産学官の連携で、広島のバイオ燃料の会社、佐賀市、北九州市立大がタッグを組み、佐賀市から無償提供された廃食用油をベースに製造が行われています。 精製する工程で特殊な触媒を用いる事で水素消費量を抑えた事や、廃食用油を用いた事がコストダウンに繋がっているとされ、現在の試算価格は1リットル当たり販売段階で150円程度としています。近日中にバイオ燃料の会社が実証プラントを完成させると製造コストは大幅に下げられる事が考えられていて、やがては100円以下という現在の石油系燃料と同じ水準の価格となる事も予想されています。 日本国内で排出されている廃食用油は54万トンにも上るとされ、今後も安定的に安価に原料の入手が行われる事が考えられます。二酸化炭素の削減にも繋がる事から期待が高まってくるのですが、バイオ燃料を搭載した車の横にいて、排気ガスが揚物屋の排気ダクトのような臭いがする事に気付いたり、その後、その車が燃料に含まれていた不純物によって燃料フィルターを目詰まりさせて止まってしまった場面を見てしまうと、バイオジェット燃料の飛行機には少しだけ乗りたくない気がしてしまいます。 新たなバイオジェット燃料はまだ試作段階ですが、すでにジェット燃料の国際規格も満たしているとされ、早ければ第一便が東京オリンピックの応援へと向かう佐賀空港から東京への便に採用されるといいます。揚物はあまり作らない我家ではあまり貢献はできそうもないですが、廃食用油のリサイクルがさらに広がるその時を待ちたいと思っています。
2019年01月21日
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春が来ると隣県の福岡、太宰府天満宮では「鬼すべ」という神事が行われ、松の葉を燃やして煙を出し、その煙で鬼を燻して追い払うという事でその年の災難消除や開運招福が祈願されます。そんな大切な神事が松葉不足のために開催を危ぶまれるという事がありました。 幸いにも近隣のゴルフ場などから松葉が提供され、無事に神事は執り行われたのですが、聞かされていた松枯れ病の猛威はそんなところにまで影響を与えていたのかと驚かされると同時に、松枯れ病の深刻さを実感させられた事が思い出されます。 松枯れ病は「マツノザイセンチュウ」と呼ばれる線虫によって引き起こされるとされ、その媒介には「マツノマダラカミキリ」というカミキリムシが関与しているといわれます。マツノザイセンチュウはそのままでは松に感染する事はできないのですが、マツノマダラカミキリと協力し合う事で感染を広げ、マツノマダラカミキリもその恩恵に与るという関係が構築されています。 マツノマダラカミキリは松の若い枝の樹皮を食べ、松の表面にできた傷からマツノマダラカミキリの体内に潜んでいたマツノザイセンチュウは松の内部へと侵入します。松の内部でマツノザイセンチュウは急激に数を増やし、やがて松の各部へ水を送り届ける仮道管を侵されると松は枯死してしまいます。 マツノマダラカミキリはマツノザイセンチュウに体内に入られても影響がなく、良い運び手であり、松の内部への道を切り開く者ともなっています。松が生きている状態ではマツノマダラカミキリが卵を産み付けても松脂によって卵が巻かれて孵化する事ができないのですが、枯れてしまうと卵を産み付ける事ができるようになり、結果的にマツノマダラカミキリを増やす事になります。 枯れた松に産み付けられた卵が孵化すると、やがて幼虫は松の内部へと穴を開けて入り込んみ、蛹となって成虫へと成長します。蛹になるために開けられた穴にはマツノザイセンチュウが集まり、成虫となったマツノマダラカミキリの体内に侵入する事から、ほとんどの成虫がマツノザイセンチュウの媒介者となってしまうといわれます。 そのため枯れた松を放置すると松枯れ病の拡大に繋がってしまうとされ、有効な殺虫剤を使う、もしくはチップ状に粉砕して内部に隠れたマツノマダラカミキリを駆除しなくては感染拡大を阻止できないと考えられていました。 最近、新たな松枯れ病予防策が発見され、殺虫剤などの薬剤を使わない環境にも優しい手法という事で、普及が期待されています。新たな手法は松の木を一定の周波数で揺らすという単純なものですが、マツノマダラカミキリは振動を感じると天敵のキツツキが来たと勘違いして、松の木から離れてしまうといいます。 マツノザイセンチュウは100年以上前に日本へ入り込んできたとされ、1901年に長崎で起こった大規模な松の枯死が最初の記録とされています。線虫とカミキリムシの絶妙な関係が各地で猛威を振るうという事になっていたのですが、100年を超える問題が木を揺する事で解決すればと大いに期待してしまいます。
2019年01月17日
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巷にマスクをしている人が増えたり、周りに急な発熱の話を聞かされたりすると、そろそろインフルエンザの流行が本格化してきた事を感じます。できる事なら辛い発熱や節々の痛み、激しい咳などには悩まされたくないので、良い予防法を講じなければと考えてしまいます。意外にも季節が冬へと移った事で水分補給を水から緑茶へ変えていた事が、インフルエンザの予防にも効果を上げてくれそうといわれています。 緑茶に含まれる成分としてはカテキンの風邪予防効果は広く知られていて、外から帰宅したらお茶でうがい、水分補給にこまめにお茶を飲むという事はカテキンの効果を期待した冬場の健康管理として聞かされます。 カテキン以外にもお茶に含まれる成分として、「テアニン」もカテキンと同じような抗ウィルス作用がある事が判ってきています。テアニンというとお茶の旨味にも関係した成分で、お茶の美味しさを決めるアミノ酸の半分以上を占めるとされ、お茶のほんのりとした苦味の中に感じる旨味と甘味はテアニンによるものとされます。 最近では、テアニンは旨味、甘味を左右するだけでなく、お茶を飲んだ際に感じる安心感にも関与している事が知られるようになり、リラックス効果を生むアミノ酸としてサプリメント化も進められ、眠りの質を良くするものとしても知られるようになってきています。インフルエンザ予防にも効果があるとなると、ますますテアニンの人気は高まっていくと思えます。 カテキンやテアニンだけでなく、お茶に含まれる成分でインフルエンザを予防してくれるものとしては「エピガロカテキンガレート」が広く知られていて、その働きは抗ウィルス薬の「アマンタジン」よりも高い効果を持つとされます。 また、最近報告されたところでは、お茶に含まれる抗アレルギー成分である「ストリクチニン」にはエピガロカテキンガレートを上回る感染抑止力を持つ事が確認されたそうで、お茶のインフルエンザ予防効果をさらに高めてくれている事が判ります。 緑茶と同じ「チャノキ」から収穫され、製法によって別物となってしまう紅茶にもインフルエンザ予防効果がある事が判ってきていて、その効果は緑茶にも引けを取らないともいわれます。 茶葉が酸化発酵する過程で茶葉に多く含まれていたカテキン同士が結合し合い、新たなポリフェノールである「テアフラビン」となります。テアフラビンは強力な抗ウィルス作用を持つだけでなく、発酵の過程で分子構造が変化し、より強力な抗ウィルス作用を持つ事になるとされます。 そうした一連の成分による抗ウィルス作用は、「スパイク」と呼ばれるウィルスが正常細胞に取り付く際に使う突起を捕らえて感染力を奪う事で作用している事から、免疫のように未知のウィルスには対抗できないという事がなく、新型にも対応できるようになっています。 緑茶と紅茶、さまざまな働きがインフルエンザから守ってくれる事が考えられるのですが、紅茶にミルクを加えてしまうと、ミルクに含まれているタンパク質と抗ウィルス成分が反応して有効性が下がってしまうため、大好きなミルクティーはインフルエンザの季節には封印しなければと思えてきます。美味しいだけでなく、怖いインフルエンザからも守ってくれるというのは、お茶とは如何に良いものかと思えます。
2018年12月25日
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以前、視野に突然ギラギラと光るものが現れ、片目で見ても、両目で見ても見え方が変わらない事から、脳に出血などの急な病変が生じたのではないかと心配になった事があります。脳溢血などであれば動けるうちに身の回りを整理したり、異常を誰かに伝えなければとも思えたのですが、視野の多くの部分をギラギラの光が占めている事から思うように動けず、途方に暮れてしまうという事がありました。 それから何度か同じ事を経験したのですが、最初の時ほどには心配にはならず、「あの時も何ともなかったのだから」と考えながら、車の運転中などではなかった事に感謝したりもしながら、自然と収まるまで20~30分程度の時間を動かずに過ごしていました。 その後、突然目の中に現れるギラギラした光は、「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれるものであり、偏頭痛の予兆の一つとしてよく見られるものである事を知りました。閃輝暗点は偏頭痛の15%で見られるとされ、頭痛持ちで知られた芥川龍之介も度々経験していて、遺作となった「歯車」は閃輝暗点のギラギラの様子を表しているといわれます。 偏頭痛は原因が判らないものも多く、閃輝暗点も原因不明とされますが、脳内の血管が収縮し、その後、弛緩した際に起こるともいわれます。閃輝暗点が起こった30分ほど後に偏頭痛が訪れる事が多いとされますが、私の場合は毎回ギラギラした光を見るだけで偏頭痛には悩まされていません。 一部の記事では閃輝暗点の後の偏頭痛は、年齢を重ねると起こらなくなる傾向があるとされ、私の場合、若くなかった事が幸いしたのかと偏頭痛に悩まされなかった事を微妙な思いで見てしまいます。 症状の感じからストレスとの関連を考えてしまうのですが、ストレスにさらされている状況下では発生せず、ストレスから開放された際に発生する事が多いとされ、仕事の締め切りを終えた次の日の休日に発生したという話も聞かされます。 中にはヨガを実践している際に起こったという報告もあり、ストレスによって血管が収縮し、その後のリラックスによって収縮した血管が弛緩した際に発生しているのだと考えられ、思えば私も一人で寛いでいた時だったと思い出してしまいます。 父親が酷い偏頭痛持ちで、子供の頃、苦しんでいる姿が理解できなかったのですが、閃輝暗点はそんな父親の体質を受け継いでしまったもので、さすがに偏頭痛の痛みまで継がせてはと思った父親が光だけに留めてくれたのかと、偏頭痛を伴わない事に感謝しながら、次はどのような場面で見る事になるのかとギラギラの光について考えてしまいます。
2018年12月22日
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子供の頃、深海の生き物を描いた図鑑を見るのが大好きでした。普段、見掛ける海の生き物とは明らかに違う形態をしたグロテスクな深海魚に大いに興味を惹かれ、実際の海の中ではどのように動いているのだろうと尽きない想像を掻き立てられていました。 図鑑には所狭しと深海の生き物が描かれていたのですが、実際はそこまで過密に棲息している事はないにしても深海は豊かな生命の宝庫だともいわれます。 かつて深海は大きな水圧と低い水温、光さえも届かない過酷な環境である事から、生命は存在しないと考えられていました。その後、探査技術の発達によって深海の様子が知られるようになると、深海はそれまで考えられていたような何もない場所ではなく、豊かな生命に溢れた環境である事が知られるようになってきています。 漁業の発達や漁具、冷凍や運搬技術の進化も深海を身近なものとしてくれていて、サクラエビや甘エビ、ズワイガニやタラ、キンメダイ、白身魚のフライでお馴染みとなっているメルルーサなども深海魚の仲間であり、日々の生活の中でも深海との関わりを感じてしまいます。 そんな深海のさらに下、海底を2500メートルも深く掘り下げた地下に、数十万年から数百万年にわたって存在し続けてきた広大な「生命体の森」がある事が米国地球物理学連合の会議で報告されていました。 地底の極端な高温高圧に関わらず豊富に存在している生命体は、これまでその存在が知られておらず、地下深いところで何も摂取する事なく岩から放出されるエネルギーを取り入れるだけで生命を維持し、緩やかな動きをしながら存在していたと考えられています。 「ディープライフ(深部地下生物)」とも呼ばれた生命体の中には、海底の熱水噴出孔の中で発見された121度もの高温の環境下でも増殖する事が可能な「超好熱菌」の一種である可能性があるものも含まれ、地底深くに広がる生命の森は地表よりも多様な遺伝子に満ちている可能性も示唆されています。 地底深くの多様な世界といわれると大いに興味を引かれてしまいますが、簡単に見に行くという訳にもいかず、未知の生命体となると新たな脅威を秘めている可能性もあり、当分は研究レポートを眺めるだけとなるのかなと思ったりしています。
2018年12月17日
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暖冬といわれながらも寒さが本格化してくると、店先に並ぶ食材が鍋物に適したものに変わってくるように思えます。そんな事を考えながら鮮魚店に並ぶ魚介類を眺めて楽しんでいたのですが、その中に気になる存在、フグが並んでいるのを発見しました。 敷き詰められた氷の上に寝かされた1尾丸ごとのフグ。アジやタイならともかく、フグを自宅で調理というのは問題があるように思えてきます。フグの調理は条例が制定されていて、フグ調理の免許取得者、もしくは免許保持者の監督の下に行う必要があり、毒を含んだ内臓は施錠できる専用の箱に保管し、専門業者に引き渡して処理してもらう必要があります。 そのため素人の私がフグを購入して持ち帰り、家で調理するのは法律違反に問われないかという感じがするのですが、フグの調理に免許が必要なのは人に提供する場合の事で、購入して食べるのが自分だけである場合は必要ないとされます。 磯釣りなどでフグが釣れてしまい、それを持ち帰って調理して食べても法的には問題ないのですが、年間数件は中毒が確認されている事を考えると怖い事とも思え、フグが持つ毒、テトロドトキシンは経口摂取した場合、青酸カリの850倍の毒性を持つ事や、300度という高温で調理しても変化しない事を考えると、素人が手を出してはいけない魚とも思えてきます。 フグの毒として知られたテトロドトキシンはフグだけに限らず、アカハライモリやヒョウモンダコ、ツムギハゼ、名前がユニークなスベスベマンジュウガニなどの生物も持っています。その毒性の強さばかりが目立ちますが、鎮痛薬としても使われていて、習慣性がない事から医療現場では活躍しているともいわれます。 テトロドトキシンはもともとフグによって生成されたものではなく、細菌によって作り出されたものが環境の中で生体濃縮され、フグの餌となるヒトデや貝類を通じてフグの体内に入り、蓄積されています。そうしたメカニズムを逆手に取り、フグを毒のない環境で養殖する事によって無毒のフグも販売されるようになってきています。 完全養殖の無毒フグが主流となると、いずれフグ=毒というイメージも薄れ、魚屋で気軽に買える魚となるのではと思える反面、フグの毒に関しては困った問題が起こってきているともいわれます。 近年の温暖化を受けてフグの生息域が変化し、種類の異なるフグが交配した雑種のフグが増えてきているといいます。フグは種類によって毒の在り処が異なるため、皮と筋肉に毒を持つショウサイフグと皮に毒を持つゴマフグが交配した場合、雑種のフグではどの部分に毒が含まれるのか不明となるとされます。 現在、雑種のフグは水揚げ量の2割程度にまで増えてきているとされ、今後もその比率は増え続けると考えられています。今でこそ「天然のフグ」といわれると高級品という感じがしますが、やがては天然=危険、養殖=安全となってしまうのかと、フグをめぐる問題の深刻さを考えてしまいます。
2018年12月14日
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ニッコロ・マキャベリというとルネッサンス期のフィレンツェの外交官で、1513~14年に有名な「君主論」を書いた人として知られています。「君主論」を読んでみると、同じ時代を生き、イタリアの統一を目指した軍人で政治家のチェーザレ・ボルジアをマキャベリが如何に敬愛し、理想の君主と思っていたかを感じる事ができ、チェーザレ・ボルジアのファンとしては良い印象を持っています。 しかし、世間ではマキャベリが語源となった「マキャベリスト」は、「サイコパシー」「ナルシズム」と並ぶ邪悪な人格特性の一つとされています。理由としては、マキャベリの思想、「政治は道徳や宗教から切り離して行うべき」という現実主義的な政治理論を提唱した事で、目的のためなら手段を選ばない人を指してマキャベリストと呼ぶようになっています。 自らの目的を達成するためには、躊躇う事なく他人を利用できる人とされるマキャベリストは、そうでない人と比べて何が違うのか、マキャベリストの脳の中では何が起こっているのか、そんな興味深い研究がハンガリーのベーチ大学において行われていました。 実験は被験者に簡単なゲームをしてもらい、マキャベリスト指数を測る事から始められ、まず被験者には500円相当の通貨が渡され、被験者はパートナーにいくら投資するかを決定します。被験者が投資を行うと、投資額はパートナーによって必ず3倍に増えるのですが、その後にパートナーによって被験者にいくら返却するかが決定されます。 被験者にはパートナーは人だと思わせていますが、実はパートナーは人ではなくプログラムで、返却額は正当な金額(投資額の1割増し)から投資額の3分の1といった不当な金額とランダムに変化します。 投資から返却までのプロセスが完了すると1ターンが終了し、次のターンでは被験者がパートナーからの投資を受け取り、返却額を決める事になります。その際、パートナーを裏切って不当な返却額にして自らの利益を最大化したり、1ターン目での不当な返却に対する復讐を行う事も自由とされています。 ゲームの結果、協調的なパートナーに出会ったマキャベリスト的被験者の脳は一気に活性化する傾向が見られ、他人を利用できる状況においては、脳の興奮を抑える働きがある背外側前頭前野の働きが活発になる事が判りました。背外側前頭前野が活性化される事で、パートナーに対する社会的感情反応が抑制されて、相手に損をさせても自分の利益を確保したいと思ってはいても、実際には道徳心や利他心が働いてできるだけ利益を公平に分配しようとする考えが抑制されている事が判ります。 目的のためにはどんな手段を採ってもそれを正当化し、人に先んじるためには多少のごまかしもやむをえないと考えるのがマキャベリストの特徴とされますが、人は何故賢くなれたのかという謎を検証する人類学者、進化論の研究者、認知科学者たちの多くに支持されている「マキャベリ的知性仮説」では、人は相手を欺き、騙し、出し抜く事によって知性を進化させたと考えられています。 知性発達の根幹部分に関わる事かもしれなせんが、やはり人を騙す、利用するといった事とは距離をおきたいものだと思ってしまいます。
2018年11月13日
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かつては「痕跡の臓器」とも呼ばれ、退化した果てに何の役にも立っていない臓器とされていた虫垂は炎症を起こしやすく、虫垂炎となると処置の遅れによる重症化が起こると死に至る事もあり、予防のために異常がなくても切除するという事もありました。 その後、虫垂はリンパ組織の一つとして胃腸の免疫機能に大きく関与している事が示唆され、免疫グロブリン(Ig)Aの産生に関わっている事なども判ってきている事から、異常がなければ温存し、虫垂炎を起こしても炎症が軽度であれば抗生物質などの投与で保存的治療で完了する事が増えてきています。 その反面、虫垂を切除した後、潰瘍性大腸炎が改善したという報告もあり、虫垂は潰瘍性大腸炎の元凶という見方もあり、虫垂では悪玉菌が育つ可能性や炎症を悪化させるリンパ球が多く存在するともいわれます。 草食動物にとって虫垂は、生命の維持に欠かせない器官となっています。植物に含まれる繊維質を構成するセルロースを分解するためにはバクテリアの存在が不可欠で、虫垂はその棲息場所となっていて、食物の分解、栄養の吸収のためには欠かせない働きを担っています。 人においても虫垂は善玉菌の備蓄という機能を果たしているとされ、腸内細菌叢のバランスの維持に働きかけているともいわれますが、食糧事情が大幅に改善された昨今、善玉菌は日常の食を通して摂取しやすくなった事から、善玉菌の供給機能は重要性が下がってきているともいわれます。 健康を陰で支える重要な臓器、将来的な疾患リスクを高める存在、どちらともいえないまま虫垂の評価が分かれています。そんな中、虫垂の予防的切除は早めに行っておいた方が良いかもしれないという論文が発表されています。 先日、アメリカで行われた研究では、スウェーデンとアメリカの患者データベースを調査し、その結果として成人になって早期に虫垂を切除した人は、切除していない人に比べて19%もパーキンソン病を発症するリスクが低い事が判っています。 スウェーデンの農村部ではその効果がさらに顕著に観察され、リスクは25%も低くなるという結果が得られていました。農村部ではパーキンソン病発症の誘因の一つとして考えられている農薬への暴露量が多いと考えられ、顕著な予防効果が得られていた事が覗えます。 今回の論文の共著者の一人であるビビアン・ラブリー博士によると、パーキンソン病を発症した人では、虫垂を切除した事によって発症した年齢が3.6年も遅れたとされ、虫垂がパーキンソン病の初期症状、もしくは発症に影響を及ぼす組織部位の一つであると考える事ができます。 虫垂にはパーキンソン病に関連する主要なタンパク質、「αシヌクレイン」が蓄積するとされ、それを切除する事でパーキンソン病の発症リスクを下げているのか、虫垂そのものが原因となっているのか、今後の研究が気になってしまいます。 ドイツの病理学者、ハイコ・ブラークによると、パーキンソン病はαシヌクレインの蓄積が嗅球、延髄から始まり、徐々に上昇して中脳に至り、最終的には大脳皮質に達するとされます。虫垂はそれが始まる場所なのか、それともパーキンソン病は脳ではなく腸の病気なのか、結論次第では虫垂の評価が大きく変わってしまいます。家族で唯一の虫垂保持者というのは吉と出るのか、凶と出るのかと考えてしまいます。
2018年11月12日
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父親、母親、妹ともに盲腸(急性虫垂炎)を患い、切除手術を受けているので、家族の中では私だけが虫垂の保持者となっています。子供の頃から「盲腸を予防するから」といわれて、コンニャクをたくさん食べていたお陰かと、何の根拠もない事を思ったりもします。 盲腸は、虫垂に急性化膿性の炎症が起きる病気で、原因ははっきりしないとされますが、虫垂がねじれたり、虫垂の内部に便や粘液などが詰まったりして血行が悪くなり、そこへ大腸菌などの腸内細菌やウィルスなどが侵入して発症すると考えられています。 症状が起こる誘因としては、暴飲暴食や過労、不規則な生活といった生活習慣や便秘、胃腸炎などがあげられていて、そうした事にあまり縁がなかった事もいまだに虫垂保持者でいられる事に繋がっているのかとも思っています。 虫垂は退化した末の「痕跡の臓器」とも呼ばれ、それ自体には生理機能がない無用の臓器と考えられていました。役に立っていないだけなら良いのですが、炎症を起こすと盲腸となってしまう事から、何らかの疾患によって開腹手術を行う際、ついでに虫垂を切除して盲腸の予防を図るという事も行われていました。 ところが最近になって虫垂は何の役にも立たないどころか、とても重要な役割を担っていた事が判ってきています。抗生物質などをはじめとする抗菌剤を服用した際、正常な腸内細菌叢が破壊されてしまい、そこへクロストリジウムなどの毒性が高い細菌が繁殖してしまうと「偽膜性腸炎」となってしまいます。 虫垂を切除してしまっている人の場合、この偽膜性腸炎になってしまう頻度が切除していない人よりも高い事が報告されており、虫垂が善玉の腸内細菌の住処となっていて、腸内細菌叢のバランスが崩れた際、正常に戻すバックアップの働きを担っている事が考えられています。 大阪大学の研究チームが行った研究でも、虫垂を切除すると大腸の腸内細菌叢のバランスが崩れる事が確認され、同時に腸内細菌叢を正常に維持し、腸管免疫でも重要な働きを担っている免疫グロブリン、「(Ig)A」と呼ばれる抗体について調べると、虫垂を切除すると大腸の(Ig)Aが減少した事から、虫垂にあるリンパ組織が(Ig)A陽性細胞を産生していた事が判ります。 しかし、逆の例も報告されており、虫垂を切除した後、潰瘍性大腸炎が改善したという事例があり、虫垂は潰瘍性大腸炎の元凶で、虫垂では悪玉の細菌が育つという意見もあります。表面抗原を持つリンパ球の中には、活性化する事で炎症を悪化させてしまうものがありますが、虫垂にはそうしたリンパ球が多いともいわれます。 虫垂の切除手術が可能となって随分と時が経ち、その間ずっと何の役にも立っていないと考えられていた虫垂の真の働きが明らかにされ、本当は必要なのか、リスクの素なのか、これから判るとなると、とりあえず保持していてよかったと思えてきます。
2018年11月05日
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テクノロジーについていけていない訳ではないのですが、普段からカーナビは使わない人となっています。理由は簡単で、最も知りたいのは目的地の詳細な情報なのに、目的地周辺に到着するとそこで「目的地周辺に着きました」と案内を終了して突き放されてしまう事にあります。 目的地が郊外の大きなショッピングモールなどであれば良いのですが、小規模な事業所や隠れ家的な店舗の場合は、周辺までは一人で行けるので、そこからをしっかりと案内してほしいと思ってしまいます。 そのため初めての場所へ行く際は事前に地図で場所の確認と、ある程度の町並みのイメージをしていくので、迷子になる事もなく目的地に到着できています。また、誰よりも早く匂い気付くことから、一部では「犬の人」とありがたくない呼び名を与えられたりもしています。 一見、関連性がないように思える方向感覚と嗅覚。実は二つの感覚には関連性があり、方向感覚が鋭い人は嗅覚も鋭い傾向にある事が判ってきています。以前からその可能性は示唆されていましたが、最近行われた研究によって裏付けられる事となりました。 カナダ、マギル大学で行われた研究は、参加者57名にVR(バーチャルリアリティ)によって作られた町を散策してもらい、町の様子を憶えてもらった上である場所からある場所へと正確に移動できるかをテストし、さらに40種類の匂い当てテストも行っています。 その結果として匂い当てテストの成績が良いほど散策テストの成績が良い事が判り、方向感覚に優れた人は嗅覚も鋭いという傾向があるという結果が得られています。 両感覚にはあまり関連性がなく、二つのテストは何の関係もないように思えますが、実はどちらも「mOFC(内側眼窩前頭皮質)」と呼ばれる脳の前頭葉の中でも、眼窩の上にある部分を刺激していて、海馬と同じ領域に関わっているとされます。 これまでの研究ではmOFCの左側が厚いほど方向感覚に関わる空間記憶が向上し、右側が厚いほど嗅覚が鋭くなる事が判っていて、両感覚に優れる事が生存に適していた事が進化に影響を与えた事を考える事ができます。 長く狩猟を食糧確保の手段としてきた人類にとって、野生動物や植物の匂いにいち早く気付ける事が食糧確保や危険回避に有効に働く事が考えられ、正確に荒野を移動できる能力と合わせて重要な働きとなっていたと考える事ができます。 mOFCの左側が方向感覚、右側が嗅覚と対応する器官が分かれている事から例外も生じてしまうとは思うのですが、進化の過程を思うと納得できる方向感覚と嗅覚の関係と思えてきます。
2018年10月29日
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副作用というと医薬品の使用に伴って生じる好ましくない身体反応と思えてきますが、厳密にはそうした好ましくない作用は「薬物有害反応」と呼ばれ、本来の副作用は医薬品の使用に伴う本来の目的に沿わない反応の全てを指します。副作用の中には本来の目的とは異なりますが、結果的に好ましい作用を発生するものがあり、副作用の方が中心的な効能として取り扱われる事もあります。 有名なところではバイアグラやミノキシジルなどが知られ、臨床試験の最中に意図した効能は充分に得られない代わりに思わぬ副作用が確認されて、その後、副作用の方が中心的な役割の薬剤として使われるようになっています。最近、開発された皮膚炎の治療薬にも思わぬ効果がある可能性が確認され、万人にも同様にその副作用が得られるのであれば、新たな治療薬として使う事も考えられます。 その薬剤の名前は「デュピルマブ」。アトピー性皮膚炎によって起こる酷い皮膚の炎症を緩和する薬剤として開発されました。そのデュピルマブに思わぬ発毛促進効果が見られたといいます。発毛はデュピルマブの投与を開始してから見られ、投薬を中止するとせっかく発毛した頭髪が抜け始めた事から、デュピルマブの副作用である事が覗えます。 発毛促進の薬剤というとミノキシジルやフィナステリドなどが思い浮かびますが、デュピルマブはそうした薄毛に対して効果を上げるのではなく、自己免疫疾患によって引き起こされる「全頭性脱毛症」の治療に効果があると考えられています。 アトピー性皮膚炎の患者は自己免疫疾患になりやすく、過剰に反応した免疫が自分自身の正常な細胞や組織を誤って攻撃してしまう事が起こります。頭髪の元となる毛包は過剰反応した免疫の攻撃を受けやすいとされ、毛包が損傷されると頭髪を失い、全頭性脱毛症を引き起こしてしまいます。 全頭性脱毛症を患ったアトピー性皮膚炎の患者の中に、皮膚の炎症治療としてデュピルマブを投与されているうちに発毛が見られた事が報告され、治療の状況からデュピルマブの副作用によって発毛が促進された可能性が高くなってきています。 今のところ発毛に繋がった詳細なメカニズムは不明となっていますが、いずれ詳細な研究が行われ、他の患者にも有効に作用する事が確認されれば、皮膚の炎症を抑えながら自己免疫疾患の脱毛を治療するという、文字通り一石二鳥の治療薬となる可能性があります。 副作用とは思わぬ効果として現れるものですが、デュピルマブの副作用は多くの患者を救うこととなると期待を大きく持ってしまいます。
2018年10月26日
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