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サンガンピュールの物語(女科学者)7話



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 そんな中、朋美を捨てた久米奈緒美とその仲間たちは、福島県矢祭町に来ていた。こんな小さな町ならば警察の捜査の手も及ばない、と甘く見ていたのだろう。休憩時間でのんびりとしていた彼女らは車のラジオをつけた。ちょうど、ラジオニュースが流れていたが、彼女にとって寝耳に水の情報が入ってきた。
 「テロリストによる都心テロ予告の件についてですが、それに関連して怪しい薬品を持ち歩いていた10歳の少女が茨城県北部で警察に保護されました」
 久米はかなり驚き、ラジオのボリュームを上げた。仲間たちはみんな静かに聞いている。ニュースはまだ続いている。

 「茨城県警によりますと少女は、テロ予告を行った集団が福島県南部の矢祭山に潜伏する予定だと明かしたということです。対策本部は今後、福島県警とも密接に協力していきたいとの意向を示し、福島県警もこの要請を受け入れる方針です。
 また、少女が持っていた正体不明の薬品も発見され、茨城県警察はその薬品を押収する見込みです。また、押収される薬品は東京の国立感染症研究所で詳しく調べられる予定となっています」

 久米は愕然としていた。自分の娘が捕まったのである。そして自分の娘が自分らのことを口走ったのだ。そして命の次に大事な殺人ウィルスのことについても口を開いた。彼女らはあせった。
 「あの子、なんてことを・・・。もう許さないわ!」
 「ちょっと、落ち着いてください、リーダー!」
 メンバーの一人が静止させる。そしてこう提案した。
 「ばれたらばれたで、矢祭山は捨ててこのまま人里離れた田舎に逃げましょう」
 「・・・・・・。不本意だけど仕方がないわね」
 久米は気を取り直し、提案を受け入れた。彼女らは車を北東に走らせ、捜査をかく乱させようとした。

 ちょうどその頃、常陸太田警察署ではサンガンピュールが捕まえた少女、朋美に対して聞き取りが行われていた。サンガンピュールもそこにいたが、彼女だと興奮して朋美に暴行を働いてしまう可能性があるので待合室で結果を待つという形になった。
 「君の親がテロ計画に関わっているのは本当なのかな?」
子ども相手なので、刑事もソフトな口調で聞く必要がある。
 「・・・はい、お母さんは・・・色々なばい菌や、花、ネズミなどを使って毎日実験していました。私にはそれが何か分かりませんでした。ただ、すごいことをしようとしたのは本当です・・・」

 朋美はやや緊張気味であったが、淡々と聞き取りに応じた。
 「おじさんたちはね、みんなの笑顔を守るため、地域の平和を守るために君からいろんなことを聞いているんだ。協力してね」
 刑事はこう朋美に言った。

 こうして警察は少しずつ手がかりを得ようとしていった。また、久米らがどんな実験をしていたのか、少しずつ明らかになっていき、外堀が埋まろうとしていた。他にも朋美から重要な手がかりとなる殺人ウィルスを押収しようとした。そのウィルスは試験管の中に入っており、さらにそれはジップロックのようなパックに包まれていた。東京の国立感染症研究所に送ろうとしたのである。

 ( 第8話 に続く)


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