Nishikenのホームページ

Nishikenのホームページ

サンガンピュールの物語(コーチング編)PL



 -作者の言葉-

 「サンガンピュールの物語」シリーズ第5弾となる本作は、前作と同様に未掲載作品です。
 ここではサンガンピュールが、あるサッカー少年のコーチを請け負うことになりましたが、試合ではとんでもない展開が待っていました。どうぞ、お楽しみ下さい。

 -プロローグ-

 サンガンピュールは2学期の中間テストでひどい結果を残した。上坂というクラスメイトに振り回された末の悲劇である。1週間もの間、彼女はKにとにかくしごかれた。特に国語の成績が悪かったせいか、
 「ずっと日本で暮らすんだと本気で思っているのなら漢字やことわざの勉強をしろ!」
 と強く言われた。ヨーロッパに残る理由を失い、Kおじさんについていくと自分から言い出したのだから、当然のことだろう。Kから叱責を受けたことで彼女にはストレスが蓄積していた。落雷によって得たスーパーパワーのお陰か、そもそも2年前の来日直後から簡単な漢字をマスターしていた彼女だった。中学に入学してしばらくは学校の勉強についていけるように感じていた。しかし2学期になって以降は学校の勉強が急に厳しくなったと感じていた。事実、何人かの先生が「テストでの採点も厳しくなってきます」と言っていた。それにKの態度への不満も強くなるばかりだった。普段はKに対して「おじさん」と呼んでいるが、心の中では「あのクソおやじ・・・」と思っている彼女であった。逆に言えば、フランスから来日して2年半しか経っていないのにKと対等にけんかできるほど日本語能力がついた自分に、怖さや一種の恥ずかしさを少し感じているサンガンピュールであった。
 ストレスが蓄まっていた彼女は、何かを蹴飛ばしたいという衝動にかられそうになった。こう見えても彼女はサッカーファンなのである。フランス・リヨンにいた時は父がオリンピック・リヨンのサポーターであり、週末になるとテレビ中継でサッカーの試合を一緒に見ていた。ロンドンで醜い姿になり、Kと出会ってからしばらくはサッカーと距離を置いていたが、実はKも熱心なサッカーファンだということを知ると、彼により親近感を覚え、自身もサッカーファンとしての心を取り戻したのだった。Kは地元・茨城県の強豪チームである鹿島アントラーズの、それもJリーグ発足当時から応援している生粋のサポーターだ。そんな彼を養父に持つサンガンピュールは
 「鹿島アントラーズってどんなチームだろ。ってかそもそも鹿島ってどんな町?どこにあるの?」
 とぼんやりとしか考える暇がなかったのだった。

 (第1話に続く)


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: