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サンガンピュールの物語(コーチング)6話



 さて、気を取り直して試合再開である。しかしイラッチ仮面にひっかき傷を負わされた選手がジャガーズからは2人出てしまった。消毒液を塗らせたが、様子見のために休ませることにした。そこで補欠の拓也に白羽の矢が立った次第である。人生、何が起こるか分からないものだ。拓也が早速元気よくフィールドに出て位置についたところで試合再開。残り時間は15分であった。ラッキーズの選手から放たれたボールを足で止めるとそこから猛ダッシュで敵陣に入って行った。弱点だと監督から指摘された低身長を武器に変え、背を低くしてかがむことで相手のゴールキーパーの前まで来た。一旦はコーナーの端に近いところまで行くがそこからゴールポストにさらに近づいたところでシュート!ボールはディフェンダーとキーパーの間のわずかな間をすり抜け、見事にゴールとなった。
 「やった!やったぞ!いきなりだ!」
 森山監督は驚きの表情を隠さなかった。他の選手たちももちろん「やったぞ!」とおおはしゃぎし、急に現れた救世主に詰め寄った。その後、ある一人がこう言った。
 「よし、このままこいつに任せた方がいいんじゃねえの?そうすれば楽だし」
 楽をしたいという思いからか、多くの選手が同調した。その一言を森山監督は聞き逃さなかった。
 「タイム!全員集合!」
 「監督?」
 「今、誰かが『全部坂口に任せた方がいい』と言うのが聞こえたぞ」
 「いや、言ってないですよ」
 多くの選手が責任逃れの発言をした中で拓也ははっきりと言った。
 「はい、誰かが言いました」
 「俺にも聞こえたぞ!お前ら、勝ちたくないのか?」
 森山監督は真剣なまなざしで選手を見つめた。これに対し、ジャガーズの選手は
 「・・・・・・」
 と無言を貫いていた。
 「もしサッカーやりたくないなら、今すぐ終わらせるぞ。そしてお前ら全員辞めさせて代わりの奴を入れるぞ」
 「まぁた・・・」
 選手の一人が小馬鹿にした態度を取った。すると森山監督はすかさず言葉を返した。
 「本気なんだぞ!」
 「・・・・・・」
 再び沈黙の場となったが、先程とは変質した沈黙だ。いつしか選手たちの間に「このままじゃやばい」というムードが生まれてきた。そして
 「今日は絶対に勝つぞ!」
 「・・・お、おう!」
 と勝利に向けた雰囲気が拓也を中心に生まれた。
 これに対して立ち向かうラッキーズの選手の多くは、
 「さっき急に出てきていきなりゴール決めた奴だからな、どううちに迫って来るか」
 と危機感をあらわにしていた。
 残り10分でスコアは1-2でラッキーズがリードしているが、ラッキーズの勝利の可能性が薄くなってきていた。
 その後、拓也は低い身長を武器に積極的に攻めて行った。今度は左サイドからシュートを放ち、2点目を決めた。これで同点だ。また、他の選手たちも森山監督から檄を飛ばされたせいか、「このままじゃやばい」と終始思いながらプレーした。ラッキーズから強烈なシュートが来てもディフェンダーが自分のゴールポストに入れさせなかったのはその象徴だった。得点する際のタイミングやコツをつかんだメンバー。この後、ロスタイムに決勝ゴールを押し込み、大逆転となった。

 (第7話へ)


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