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サンガンピュールの物語(お菓子の国)12話



 大人数との戦いに勝ったサンガンピュールは、安本から渡された封筒を開封した。中に入っていたのはチクロンBのリーダー・熊田からの挑戦状だった。

 「この手紙を読んでいるということは、残念ながら安本が死んだという意味だろう。財政難に陥っているお菓子の国は昨年から資金の工面のために我々のサービスを利用するようになった。しかし利子すらまともに払えない状況だったがために、今回の実力行使に打って出たわけだ。そのお菓子の国がサンガンピュールを起用するのは絶対に許さん!お前を消すために、決闘を申し込む!
 チクロンB 代表 熊田吾郎」

 一見したところ、内容はあまりに抽象的でどのような手段で対決するのか全く分からないものだった。しかしお菓子の国を守るため、みんなの笑顔を作るために、彼女は死を覚悟して決闘に向かうのだった。その前に、飛び散ったガラスビンの破片で腕や顔、足に多少の切り傷が見られたので包帯やばんそうこうでテーピングをした。その際、Kがサンガンピュールに話しかけた。
 「おぅ・・・大丈夫か、本当に」
 「大丈夫じゃなきゃいけないのよっ!何としてでもあいつらを倒す!」
 是が非でも、諦める訳にはいかなかった。

 埼玉県吉川市にあるチクロンBのアジト。名古路が死に際に語った通り、吉川駅南口のスーパーマーケットの近くにある雑居ビルにチクロンBの工場兼アジトがあった。だが周囲は草が生い茂っている空き地であり、一種の不気味さを感じさせる。
 「・・・ここね」
 「はっ!!」
 工場から外に出ようとした男が一人現れたが、何かを察知したのか、すぐ内部へと戻った。これを目撃したサンガンピュールは確信した。
 「間違いないわ」

 その頃、チクロンBの下っ端のメンバーが熊田の下に走って報告してきた。熊田は日数谷と共に対策を練っているところだった。
 「サンガンピュールの奴がもう来ました!」
 「何っ、もう来たのか!」
 名古路が死んだのに続き、安本の部隊も全滅したのを聞いていた一同は相当慌てていた様子だった。サンガンピュールは熊田と再び顔を合わせることとなった。
 「あんたがリーダーの熊田吾郎・・・だったわね」
 「そうだ、その通り」
 「職人さんたちはどこなの?教えな!」
 「・・・ついて来い」
 意外にも熊田は要求に素直に応じた。だがこれには大きな裏があったことに彼女はまだ気付いていない。
 「ここだ」
 通された部屋には、軟禁されている職人5人がいた。
 「みなさん、大丈夫ですか!」
 「あっ、サンガンピュールさん、助けに来てくれたんですね!」
 と、あるパティシェが言った。その後、別の職人が異様な光景に驚いた。
 「でも待て、熊田のやつもいるぞ!どういうことだ!」
 「そうだ、俺もいるぞ。サンガンピュールも連れてきたぞ。だが!次にここに来るのは、俺か、こいつかのどっちかだ。この後のチキンレースに勝った奴だ。まあ、俺の方が確立高いけどな」
 やはり、熊田は他のメンバー同様、相当な自信家のようだ。
 「日数谷、例のブツをセットしろ」
 「分かりました」
 ここで日数谷とその子分が非人道的な行動に出た。人質である職人5人に対して首飾りらしきものを仕掛けたのだ。職人の一人が叫んだ。
 「おい、何だこれは!」
 「今から説明する!」
 日数谷は全員分を仕掛け終えた後に事実を話した。

 「聞け。これは・・・時限爆弾だ!」

 「・・・・・・!」
 お菓子の国側の人間全員に緊張が走った。
 「もし爆発するとお前も死ぬことになるぞ!」
 「安心しろ、自分の首が吹っ飛ぶくらいの威力しか無い」
 首飾りの形をしている時限爆弾には、正面に爆発までの残り時間が記されている。日数谷がリモコンのスイッチを押すと残り時間5分がカウントされ始めた!
 「あああ!!サンガンピュール、助けてくれ!まだ死にたくない!」
 わめき出す職人たち。これに対して日数谷は
 「そう慌てるな。今のは練習だ。おっ、サンガンピュールにも教えてやろう。この緑のボタンで解除だ」
 と、すぐにカウント停止のスイッチを押した。しかもご丁寧に使い方まで指南した。こいつも熊田と同様、相当の自信家のようだとサンガンピュールは思った。
 「この後のチキンレースでサンガンピュールが変なことやらかしたら、お前らの首が飛ぶ。いつ来るか分からない死を楽しみに待つんだな!遺書は今の内に書いとけよ~」
 熊田は人質を挑発する言葉を放った後、サンガンピュールと共に部屋を後にした。

 ( 第13話 に続く)


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