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サンガンピュールの物語(生い立ち編)7話

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 サンガンピュールが土浦に来て半年ほどが経った。彼女はこの町で暮らすのにも慣れてきた。そして猛勉強の結果、日本語も非常にうまくなり、近所にも知り合いが出来ていった。
 ある日のこと、彼女は親代わりのKとともに土浦市長に呼ばれた。
 「なぜあたしが市役所に呼ばれるんだろう?」
 と彼女は一瞬、首をかしげつつも、Kと共に市役所に向かった。市役所ではKだけでなく、彼女自身も驚くことが待っていた。まさにその日は、彼女の運命を決定付ける日だった。
 来日してから半年間、数々の強盗事件を解決した手腕を市長に買われ、土浦市を暴力団やテロリストといった外敵から守る、スーパーヒロインみたいな役職に任命されたのである。これで彼女は名実とともに、アニメに出てきそうなスーパーヒーローみたいな宿命を背負うことになったのだ。

 「サンガンピュールさん、あなたを土浦市を守るスーパーヒロインに任命します」
 「はい。頑張ります!」
 彼女はすっかり上手くなった日本語で元気に返事をした。
 一方でずっと教育を担当してきたKはというと、
 「ふっ、アニメの世界じゃあるまいし・・・」
 と、相変わらずこの現実でないような現実を受け入れるのに必死だった。

 彼女は確実に日本人への階段を登りつつあった。普段の勉強は主に平日の夜にやっていた。スーパーパワーが勉強にも活かせるのならば、短い時間で済むだろう。Kはそう考えたからである。日中は市長から任命された、町を守る役目に徹していることと、普段は会社勤めのKが仕事で東京に出ているからである。
 休日はというと、彼女は主としてKと遊んでいた。テレビゲームをしたり、おしゃべりをしたり、あるいは牛久や霞ヶ浦といった、近隣の町へ出かけることもあった。旅に出るというKの趣味の面もあるのだが。

 サンガンピュールは大満足していた。もしあのとき、ロンドンで落雷を受けていなければ、スーパーパワーも何もない全く違う人生を歩み、フランス人として生活していたのは間違いない。もし仮に、Kが彼女を拾ってくれなかったら…彼女はえた・非人と捉えられて同然だったであろう。
 そして筑波山に2人でハイキングに出かけたある日のこと。頂上に着いて一休みしたとき、サンガンピュールはKに言った。

 「おじさん・・・。あたしを拾ってくれて、ありがとう。大好きだよ、おじさんのこと!」
 「ほんとかい?」
 「うん、あたしはおじさんのこと、大好きだよ!」
 「ウウウ・・・、ありがとう、こちらこそ!」
 2人は再び友情を確かめ合った。

 落雷を受け、スーパーパワーを持つ人間に変身してからは、両親の彼女に対する愛は全くなかった。それが現在では、町の人々から必要とされている人材になっている。
 「こんなにも自分のことを必要としているんだ。みんな…、ありがとう…」
 と感激したこともある。
 勿論、Kのことも忘れていない。彼女にとっては自分を変えてくれた、命の恩人であろう。見知らぬ国で生活することになったものの、今のほうが断然幸せだ。彼女はそう信じている。初めてKと出会ったとき、Kは彼女にこう言った。
 「君は1人じゃない。みんなからのたくさんの期待を抱えて生きている。俺がついているよ。」
 まさにKの言ったことが現実になったのである。

 フランス・リヨンで生まれ、日本の茨城県・土浦で育った女の子。土浦に欠かせないスーパーヒーロー・サンガンピュールの活躍物語は、いよいよここから本格的に始まるのである…!


 サンガンピュールの物語(生い立ち編)・完

 ( あとがき に続く)


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