月臣邸

2005.12.30
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「ふー…疲れたあ」


汗で濡れた髪をタオルでゴシゴシと拭く。
隣では、瑠樺先輩がドリンクを飲んでいた。


2人しかいないロッカールーム。
シン…と静まりかえっている為、なんか自棄に緊張する。

バックをロッカーから取り出し、チャックを開けてセーラー服を出した。
…なんか女の子の気持ちっていうかなぁ…。
隣に瑠樺先輩がいるせいか、着替えるのがすごく恥ずかしい。
顔を赤くしながら、俺はスカートを履いた。




「っ!? な、なんで笑うんですか…っ///」
「や。かわいーなと思って。似合ってんな、そのスカート」
「…嬉しくないです。」


ぶぅ、と頬を膨らませそっぽを向いてみると、ますます瑠樺先輩は笑った。
恥ずかしかったけど――なんか、嬉しくて。


俺も、つられて苦笑した。















「は――…」

何気なく吐いた息は、白かった。

手袋を装着、マフラーもしっかり巻き、身に纏っているコートは新品で。

隣に貴方がいるから、もっと暖かい。



もう辺りはすっかり暗くて。空から降ってくる雪が真っ白すぎて少し眩しい。


…わー、どうしよう。俺、今から瑠樺先輩の家に行くんだ…。
嬉しさが込み上げてきて、つい笑みが零れる。

チラッ、と横を歩いている瑠樺先輩を見ると、マフラーに顔を埋めて、寒そうに手袋をしていない手をポケットに突っ込んでいた。


…俺は結構暖かいけど、先輩は寒いのかな…。




「…寒っ。」



小さく呟いて身を震わせた先輩を見て、ついクスクスと笑ってしまった。
すると、顔を少し赤くして、ムッとした表情をする瑠樺先輩。
目が合ったので、少し見つめあっていると――…


「っひゃっ…?」



急に手を掴まれ、強引に瑠樺先輩のジャケットのポケットに入れられた。

えーっとつまり…瑠樺先輩のポケットの中で、手を握られてる感じ?


「あの、…なんですか?」
「…手。寒いんだよ。
 …お前の手、手袋しててあったけぇから」




手を握られたまま、人気の無い雪道を2人で歩いた。

…自然と、顔は笑顔を作っていた。



瑠樺先輩。俺は、すごく暖かいよ。
貴方はなんとも思ってないかもしれないけど、繋いだ手がすごく暖かくて。


俺は、すごく嬉しいよ――…。















「ん。ここが、俺の家」
「へー…! 高そうなマンションですねー」
「や、そうでもねェよ? 因みに1人暮らしだから。遠慮すんな」
「はぁいっ、お邪魔しまーす」


超緊張しながらも、なるべく笑顔を作りながら家に入った。
深い藍色のカーテンにソファ。テーブルなんていかにも高そうで…。

もしかしてお金持ちなのかなあ瑠樺先輩って。

そんな事をボンヤリと思いながら、俺はリビングで立ち尽くしていた。
すると、瑠樺先輩が目で中心にある大きめなソファに座るよう促す。


ちょこんとソファの真ん中に座ると、とても柔らかくて沢山身体が沈んだ。
…座り心地良いけど、なんか俺が太ってるみたいだなあ…。
もっと痩せたいな、などという考えを振り切って辺りをキョロキョロと見回す。


目の前にはテーブル、窓にはダーツ。
部屋の隅にはパソコンとテレビ、ボードの上にはMDコンボみたいなのがあって。

無機質で、どこか咲人先生の部屋にも似てる気がした。



すると突然、後ろから瑠樺先輩に話しかけられる。

「飯。なんか食う?」
「ふぇっ!?…あ、気にしないでください…っ」


一応人の家だし;
遠慮がちに両手をブンブン振り、控えめに微笑む。
…ぶっちゃけお腹減ってるけど。


先輩は「フーン…」と呟いて、台所へ向かっていった。



去り際に、フワッと瑠樺先輩の匂いが俺を包んだ。

酷く、安心する。



ソファの脇に置いてあったクッションをギュッと抱きしめて、俺は微笑んだ。















数十分後。
瑠樺先輩はオムライス1つにコーヒー2つを持ってきて、ドカッと俺の隣に座った。
テーブルに優しい手つきで置かれたオムライスは――すっごく美味しそう。

うー…食べてみたいなぁ…、瑠樺先輩の作ったオムライス…。
でもいらないって言ったのは俺だし…。ハァ。

でもコーヒーカップは2つあるから、コーヒーは貰ってもいいのかなぁ…と瑠樺先輩をチラッと見ると、先輩はスプーンでオムライスを一口掬って…それを、俺の口へと差し出した。




「……へ?」

「食え。」




…食え。って言われたし…いいのかな。
とりあえずパクッとソレを口に含んでみた。


――ヤバ、…超美味しい!!!/// 顔が綻んでしまう。
…っていうかコレってアーンだよね!?/// 瑠樺先輩がアーンしてくれたよー!///



でも、なんで…?



「俺1人で食う訳にもいかねぇし…半分食えよ?」



クスッと微笑んで、また一口俺の口へと差し出してくる。

その笑顔が堪らなくかっこよくて…。
また、ソレを口に含み味わって飲み下した。


「…美味い?」
「はいっ…美味しいです」


満面の笑みでコクコクと頷いた俺を見て、瑠樺先輩が一口分オムライスを掬い、自分の口に運んだ。
…!っていうかコレ…間接キスじゃん!!…でも気にしてないみたい…。
…うーん、なんか色々複雑。



「うん、まぁまぁだな。…ほら、もっと食え」
「あ、はいっ」


ニコッと笑って、当たり前のようにアーンと口を開けてしまう。
すると、瑠樺先輩はフッと笑って、掬ったオムライスを自分の口に運んだ。

――? アレ…?



なんか、先輩の顔が近くに…――。







「ん…ぁ…?」



温かい…唾液が絡まった米と卵が、口内へ送られてきて。

ゴクン、とソレを飲み下したと同時に、目の前で顔を近づけたままの先輩と目が合う。

よく見ると、先輩と俺の口の間には銀の糸が厭らしく引いていた。




…あれ? 俺、今…もしかして、瑠樺先輩と…キス、してた?
しかも、瑠樺先輩が俺に…?




「…………」

ゴシ、と学ランの袖で口周りを拭いた瑠樺先輩を見た瞬間――涙が、出てしまった。




「!? よ、黄泉っ…!?」


突然のことに焦り、先輩がアタフタし始めた。



涙が、止まらなくて。



「ご、ごめん黄泉…っそんなに嫌だったか…?」
「ちがっ…ぅう…。嬉し、…くて…っ」


ボロボロと零れ落ちる涙を、セーラー服の袖で精一杯拭った。
先輩、この涙は嬉し涙なの。


…嬉しい、けど。
ねぇ、なんで…?





「…せんぱ…な、んで…今…っキス、したの…?」

「…したかったから。」



真顔で、見つめられて。
先輩は、大きな手で俺の頬を撫でた。
指で俺の涙を拭い、切なそうな瞳で。



「……黄泉が、…好きだから。」




ますます、涙が零れてきた。

ねぇ神様、いいかなあ。



こんな汚れてる俺でも――少しくらい、希望持っていいですか?


好きなんです。


どうしようもなく

こんなにも、切ない思い




伝えて、いいですか。






「…俺も…好き、です…っ」
「…黄泉…」
「好きですっ…信じて、くださぃ…ずっとずっと大好きでした…っ」


涙が出る理由は、もう自分でもわかんない。
ただ、やっと伝えられた。…よかった。

これだけで、よかったのに。




今俺は、貴方の腕の中にいる。

温もりを、勿体無いくらいに感じてる。


ねぇ、いいの? こんなに幸せで、いいのかなあ…。




「…ずっと…俺も、ずっと好きだった…。
 だから、新弥のことあって…すげぇイライラして…。
 なぁ黄泉、全部…俺で、新弥のことかき消してやりてぇ…」

ギュ、と力強く抱きしめられて、ほんの少しだけ痛かった。
泣きそうな声が胸に響く。


「あっ…せんぱい、い…」


チュッ、と音を鳴らして首筋に顔を埋め、噛み付いてくる先輩。
身体が強張って、拍子にソファのスプリングがギシッと音を立てた。

これから先の行為を、俺は知っている。


瑠樺先輩なら本望だよ?
だけど――


「やぁっ…だめ、やだ…っ」


本能は、拒んだ。
快楽を求め始めている身体とは裏腹に。

汚い俺を見られたくないという理性が騒ぎ出す。



「…黄泉」


ソファに押し倒されて。
身動きが取れなくて、俺は涙目で真上にある瑠樺先輩の瞳を見つめた。


「み、見られたくない、です…っ。俺、汚れてるからあ…っ」
「…こんなに、綺麗じゃんか…。…言っただろ? 俺が全部、お前の中から…新弥を、かき消してやるから…」
「でも…っ…」

「……じゃあ、目…閉じてて。怖くない、から…」



耳元で囁かれて。
甘い吐息に、脳が犯される。

俺の肌には新弥の跡が沢山ついてる。
赤い印を、見られるのが凄く嫌だった。



――だけど。



本気の抵抗なんか、出来る訳がない。

だって、…ずっと憧れだった。




好きな人との、愛のあるこの行為が――…








徐々に、セーラー服が脱がされていって、火照った肌が露になる。


「…綺麗、だよ」
「っぁん! ゃ、…っ」


ちゅくっ、と胸の突起を据われ、身体がビクンと跳ねる。
もじもじと身体をくねらせ、快感に耐えた。


一つ一つの愛撫が、新弥とはまるで違う。


壊れ物を扱うかのように、大切に優しく触れられて――。

やがてスカートと下着も脱がされ、触れられてもいないのに蜜を溢れさせ勃ち始めている彼が取り出された。
先走りの蜜が先端から垂れ、秘部をヌラヌラと濡らしている。



「っ…ひ、あっ…」

ザラ、とした舌で穴の回りを嘗め回される。
次第に両足が開いていってしまって、感覚が麻痺してしまっていた。

「あ、だめぇ……っ汚い、です…っ」
「汚くなんかねぇぜ…? すごい綺麗だよ」



甘くて、低くて、優しい声。

この声が鼓膜に響いただけで、もう達せそう。





「あ、あぁ、ん……るか、せんぱぃ…っ気持ち、ぃ…ッ」
「ん、黄泉……っ」



熱い瑠樺先輩のソレが、俺の中に入ってるなんてすごく不思議な感じ。



今、俺と瑠樺先輩は繋がってる。

気持ちよくて、心地良くて、嬉しくて。



「あぁ…っるか、あ…ッ…」
「黄泉…っ」



2人、同時に達して。



すごく暖かい、愛を感じた。






神様、俺…すごい幸せだよ。

ありがとう……















今、俺は。
瑠樺先輩と好き合えた喜びだけを噛み締めてる。
他のことなんか、考えられないくらいに。







――知ってる?   幸せはね。   長くは続かないんだよ。








俺は、気付かなかった。



脱いだセーラー服の、襟の裏に――盗聴器が、あったこと――…。















「…フン」



バキッ、と受信機を壊しイヤホンを外す。

このジメジメとした湿気は、どうやら外では雨が降り出したらしい。


昨日ヤった帰り、黄泉のセーラー服に盗聴器を付けてみたけど――やっぱ、気付かなかったんだな。
フン、やっぱバカだしなぁアイツは。



「"新弥をかき消してやる"、ねぇ…」



ククッと笑みが零れる。

良かったねェ黄泉。
大好きな大好きな瑠樺先輩と両思いになれて。


俺との行為の時とは違う、嬉しそうな甘い声――。
吐き気がするよ。




「あーあ。…もうゲームオーバーかあ」


クスッ。

イヤホンの耳あてをバキッと握り壊し、天を睨んだ。






「残念だね、黄泉」



もう、終わり。
最後に君の涙と悲痛を見て、さよならしようか。



――腸が、煮えくり返る。











「…俺を差し置いて1人だけ幸せになろうだなんて

 許さないよ、黄泉――…」






後悔、させてあげる。





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Last updated  2005.12.30 12:58:13
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