月臣邸

2006.01.01
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「うわっ…人多ー…」
「つぅかさ、振袖とかどうよ? 重くね?」
「いーじゃん! せっかく貰ったんだし、大晦日だしお洒落したいんだもん」

ありえない、人込みの中。
寒空の下、私服の瑠樺と――振袖を着た、黄泉がいた。
しかし右にも人、左にも人。前にも後ろにも人――。
人しかいなくて、お賽銭箱までどれほど距離があるのやらと溜息をるきたくなるほどだ。


「ぅ…苦しぃよぅ…」


振袖を身に纏っている為、ただでさえ歩きにくい。

人込みに埋もれて息が出来なくなるのも無理は無い。

「大丈夫かよ? 抜ける?」
「っ…大丈、夫…。絶対お願いごとするんだもん…」


カラカラ、と草履がコンクリートと擦れ音を鳴らした。
ぶっちゃけ今草履の鼻緒が切れそうな状態。

だけど、黄泉は頑張っていた。


お願い事をしたい。









「…瑠樺さぁん」
「何?」
「……手、繋いでぇ…?」


歩くのも疲れたくらいになったころ。


すると、瑠樺はフッと笑ってギュッと一回りも二回りも大きな手で、その手を握る。


暖かな存在に、泣きたくなった。










「あー…もぅすぐだね!」
「そうだなー…黄泉、何お願いすんの?」
「えー? ふふ、秘密っ。瑠樺さんは?」

「ぇー……じゃあ、俺言うから瑠樺さん教えて」
「…めんどくせぇな。お前が”歌が上手くなりますように”で俺が”ナイトメアが売れますように”、それでいいだろ」
「えー!?…そ、それも大事だけど…。もっと大事なことがあるでしょー!」
「へぇ? じゃあお前は何頼むの」
「ぅーん…じゃあ、お願いし終わったら、2人同時に言おうよ? 願ったこと」
「はいはい」



やっと、自分らの番。

「これって何円入れんの? 1円? 5円? 10円?」
「…な、何円でもいいんじゃない?」
「…ゾジーお金頂戴」
「ぇえええっ!?」


自分の金でお賽銭をするなんて嫌だ、という意味のわからん瑠樺のおねだり。
渋々黄泉は瑠樺に100円を渡し、自分も100円を賽銭箱に放り投げた。
カランカラン、と金を鳴らして――手を叩き、目を瞑る。


「…………よし」


行こう、と瑠樺の手を引き神社の隅に2人で逃げた。
黄泉の振袖が赤くキラキラと光り、なんとなく眩しい。


「…んで? 何をお願いしたんですかゾジーさんは」
「だぁから、2人同時に言おうってば!」
「あー…はいはい。じゃ、行くぜ?」



「黄泉と」
「瑠樺さんと」



”ずっと、一緒にいられますように。”











「…ずっとって、いつまで?」
「死ぬまで」
「…俺は、死んでも。」


2人で同じことを願ってたなんて、嬉しくて。
微笑んで、抱き合った。


「…あけましておめでとう…瑠樺さん」
「ああ。…今年もよろしく、な」





今年なんかじゃなくて、ずっと永遠に。





降り続ける雪のように、溶けた水のように。

これからもずっと、一緒にいよう――



尻切れ。





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Last updated  2006.01.01 11:16:48
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