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2017.08.19
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~白水社、2016年~
(Robert Louis Wilken, The First Thousand Years: A Global History of Christianity , Yale University Press, 2012)


 キリスト教の発生から間の1000年間を、通史的に、同時に邦訳の副題のとおり地域別、テーマ別に描く大著の邦訳です。註のあるがちがちの専門書ではなく、一般書のかたちで、訳文もとても読みやすい一冊です。
 著者のウィルケン(1936~)はヴァージニア大学名誉教授。邦訳書として、『ローマが見たキリスト教』(ヨルダン社、1987年)、『古代キリスト教思想の精神』(教文館、2014年)があるようです。
 訳者の4名は、東北大学の出身者あるいは在籍者でいらっしゃり、古代史~初期中世史を専門とされています。
 本書の構成は次のとおりです。

―――
序章
第1章 エルサレムでのはじまり
第2章 エフェソス、ローマ、エデッサ―キリスト教の拡大
第3章 キリスト教共同体の形成

第5章 カタコンベを建設する
第6章 教養ある信仰―アレクサンドリアのオリゲネス
第7章 迫害―カルタゴのキプリアヌス
第8章 キリスト教徒皇帝―コンスタンティヌス
第9章 ニカイア公会議とキリスト教の信条
第10章 修道制
第11章 キリスト教的エルサレム
第12章 皇帝ユリアヌス、ユダヤ人、キリスト教徒
第13章 司教と皇帝―アンブロシウスとテオドシウス
第14章 建築と芸術
第15章 音楽と礼拝

第17章 教皇としてのローマ司教
第18章 キリスト教社会のルール―カノン法
第19章 ヒッポのアウグスティヌス
地図
―――



・単なるキリスト教の通史ではなく、ローマ皇帝との関係や当時の人口の状況、扱う都市・地域の経済的状況など、社会的背景にも十分目配りされていて、生き生きとした叙述となっているように思います。

・修道院(修道制)を扱う歴史叙述の中では、最初期の人物として挙げられるアントニオスについての評価が興味深いです。彼は、「修道制の創設者というよりはむしろ刷新者と呼ばれるべき」で、「教会の歴史における彼の象徴的地位は(中略)[伝記作者の]アタナシオスの文才によるところが大きい」(162頁)。たしかに、アントニオス以前から、隠修士のような生き方をしていた人物はいたようで、もしその人物について感動的な伝記が描かれていれば、その人の名が修道制の歴史の冒頭に挙げられるようになっていたかも知れません。

あらためて、訳文もとても読みやすく、初期キリスト教の状況を生き生きと描く良書だと思います。

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Last updated  2017.08.19 14:06:46
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