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2018.04.14
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Giles Constable, Letters and Letter-Collections (Typologie des sources du Moyen Âge occidental, fasc. 17), Brepols, 1976, 67p.

ジャイルズ・コンスタブル『書簡と書簡集』(西欧中世史料類型第17分冊)

A- II

A.文献史料

II .書簡

*   *   *

レオポール・ジェニコが創刊した叢書『西欧中世史料類型』から、第17分冊、ジャイルズ・コンスタブル『書簡と書簡集』を紹介します。

 著者のコンスタブルは 1929 年にロンドンで生まれ、アメリカに移住し、ハーヴァード大学で学びます。その後、ハーヴァード大学教授、プリンストン高等研究所歴史研究部門中世史教授を歴任されています。(略歴や著作については、コンスタブル(高山博監訳)『十二世紀宗教改革―修道制の刷新と西洋中世社会』慶應義塾大学出版会、 2014 年、 xiii-xvii 頁参照。)

 本書の構成は次のとおりです。

―――

文献目録

第1章 ジャンルの定義

第2章 ジャンルの発展

第3章 書簡の批判的評価

第4章 校訂版

第5章 書簡の歴史的価値

―――

 まず、第1章では、書簡や書簡集の厳密な定義は困難として、その性質、形式の特徴などが指摘されます。ここでは、「真正の authentic( 書簡 ) 」=「書簡の形式で書かれ、またある程度書簡ジャンルの規則に沿ったあらゆる書かれた著作」、「本当の real( 書簡 ) 」=「実際に送られた、あるいは送ることを意図された書簡」、「虚構の fictional( 書簡 ) 」=「範例書簡や書簡形式の概論のように、送られることは意図していないが同時代人によって書簡としてみなされた書簡」という区分が示されているのが興味深かったです。また、原則として書簡は短く、また一つの書簡には一つの主題を書くべきという風潮があったことなども興味深く読みました。一方、(本ブログではまだ紹介できていませんが)同じ叢書の『例話』や『説教』のように、書簡史料自体の明確な定義が示されていないのは少しもったいないように感じました。

 第2章は、古代 (4-6 世紀 ) 、カロリング期 (8-9 世紀 ) 11-12 世紀、後期中世の4つの時代に分けて、書簡ジャンルの歴史的発展を略述します。私の関心から興味深かったのは、 11-12 世紀はいろんな話題の書簡が書かれること(アベラールとエロイーズの恋文、十字軍の状況を伝える書簡、大学の成立に伴う学生の手紙など)、後期中世には書簡専門のライターも登場し、彼らの書簡がこんにちに続く個人的な書簡のはじまり、といった流れです(中世には書簡は公的な性格もあり、また日付を書かないという特徴もあったとか)。


 第3章では、書簡が作成される流れ(「作者」が自分の考えを言葉にし、それを発言し、筆録者(作者自身であることも)が書き留めるという口述筆記が基本)、真正性を保証するための署名や印章(封印)などの慣行が紹介されます。


 第4章は、本書刊行時点で利用可能な史料の紹介、1ページだけの第5章は、書簡は「中世における生活や思考のほぼ全ての側面にふれる」ことができる、歴史学研究において非常に有用な史料であることを指摘します。

 私自身、研究の中で書簡史料を用いることがあるので、史料論として名高い本叢書で書簡の概要をつかんでおきたいと思っていました。今回通読できて良かったです。

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Last updated  2018.04.14 13:51:59
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