~講談社ノベルス、 2013 年~
第47回メフィスト賞受賞作、周木律さんのデビュー作です。
若くして数学上の未解決の問題について証明し、多くの論文も執筆したが、 28 歳の頃にとつぜん失踪し、放浪する数学者となった十和田只人さんが主人公の長編ミステリです。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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十和田は、天才建築士、驫木燿に招かれて、彼の自宅<眼球堂>を訪れた。十和田の取材を続けているルポライターの陸奥藍子とともに。
眼球堂は、奇妙な建物だった。人里離れた山奥まで上がり、ようやくそこにたどり着く。「山腹と森を穿つようにして造られた、真白い大理石の器。その内側に立ち並ぶ無数の白柱と、漆黒の建物。」それが眼球堂だった。
8つある居室のドアは、全て二重ドア。外に通じるのは前室のみ。真っ黒な「暗廊」とガラス張りの「明廊」の二つから構成される廻廊。
そして驫木は、美術、政治、心理学など、各分野の天才を建物に招き、建築が全てに勝っていることを示そうとしていた。
しかし、翌朝。「明廊」の窓から15メートル先のポールの先端に、驫木が串刺しになっているのが発見された。他殺なのか、自殺なのか、フェイクなのか。どのような方法でポールの先端にそれを串刺しにできたのか。
メンバーに多くの謎が示されたが、さらに事件は繰り返される。客たちは、不可解な状況で、死亡し、あるいは殺されていく。
全ての定理が記された「ザ・ブック」を求める十和田は、事件の真実にたどり着けるのか…。
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細かい謎解きはできませんでしたが、あることには気づくことができました。仕掛けに気づけるのは稀なので嬉しかったです。
ともあれ、不可解な状況(狭い窓からなぜ落下したのか、他殺なのか、自殺なのか; 15m 先の 10m はある高さのポールの先端にいかに串刺しにできたのか、などなど)の提示、張り巡らされた伏線、「読者への挑戦」、論理的な解明と、楽しく安心して読みました。
これは面白かったです。出版されてから、気になっていましたが、今回読むことができて良かったです。
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