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2019.04.07
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泡坂妻夫 『亜愛一郎の狼狽』
~創元推理文庫、 1984 年~

 泡坂妻夫さんのデビュー短編ほか、計8編の短編が収録された短編集です。端正な姿でありながら、あわてんぼだったり少し抜けたところがあったり、それでいていざという時の腕っ節は強いというカメラマン、亜愛一郎さん(名字は亜)が活躍します。

 それでは、簡単にそれぞれの内容紹介と、感想を。

―――

「DL2号機事件」 墜落予告がなされたDL2号機は、無事に目的の空港に到着。予告の同機とされていた男は、大きな地震があったばかりの町に引っ越していた。男を狙う犯人は。

「右腕山上空」 会社ピーアールのため、気球での国内一週が企画され、芸人の男が出発することとなった。しかし男は、出発後まもなく、拳銃で頭を撃ち抜いて死亡した。空中密室といえる事件の真相は。

「曲った部屋」 沼地の跡に建てられた団地は、建物が傾くという不具合があった。その他、大量の虫の発生に、火葬場の煙が入ってくるなど、大変な状態に。そんな団地で、殺人事件が発生。亜愛一郎は、なぜすぐに真相を見破れたのか。

「掌上の黄金仮面」 巨大な如来が建てられた向かいに、ライバルがホテルを建設し、奇妙な空間ができあがった。その如来の手のひらの上に、黄金仮面が現れ、そして何者かに銃殺される。ホテルには犯人と目される男がいたが、彼が持つ拳銃では、その部屋から銃撃することは不可能だった。

「G線上の鼬」 タクシー強盗がはやる頃、一人のタクシー運転手が犠牲になった。慌てて逃げた運転手とその同僚たちが被害にあったタクシーに戻ると、そこで強盗が殺されていた。犯人は運転手なのか。

「掘出された寓話」 有名な会社を創設した気むずかしい老人が、童話を自費出版した。出版社は明らかな誤字などを修正し出版したが、男は激怒し、もとの字のとおりに出版するよう主張、結局誤字に直して再版されるという事態が起こった。果たして男の意図は。

「ホロボの神」 戦時中、ホロボの島で一人の男が経験した奇妙な事件。島の先住民の酋長の妻が死亡、その後酋長は建物にこもり、村人に建物を見張らせた。そして、そのような状況下で、頭が撃ち抜かれて死亡、建物にあった「神」の像も消失していたのだった。

「黒い霧」 カーボンが町中にまかれ、町内会では疑心暗鬼から大げんかが起こる。誰が、何のためにカーボンをまいたのか。

―――

 泡坂さんは奇術師としても有名ですが、特に「右腕山上空」の空中密室にふれたときに、なるほどと感銘を受けました。良質のマジックを見せてもらい、さらに種明かしをしてもらっているような感覚でした。

 デビュー作「DL2号機事件」は、物語が進むにつれ謎が深まるというか、奇妙な感覚が増していき、終盤で一気に解決されるすがすがしさが素敵です。

 その他、「掘出された寓話」は、作中作者の意図や真相もすごいですが、これを作られた泡坂さんの力のすごさを感じます。「ホロボの神」も、好みの物語でした。

 泡坂さんの作品はいつか読みたいと思っていたので、この度読めてよかったです。亜愛一郎シリーズの短編集を順番に読んでいこうと思います。

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Last updated  2019.04.07 22:08:51
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