麻耶雄嵩『あぶない叔父さん』
~新潮文庫、 2018
年~
麻耶雄嵩 さんによる、ノンシリーズの(連作)短編集です。6編の物語が収録されています。
舞台は、一年中霧が深い霧ヶ町。高校生の斯峨優斗さんが語り手で、その叔父さんが真相を明らかにする役回りを担います。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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「失くした御守」
優斗が恋人の真紀とのおそろいの御守をなくしてしまった頃、町では、有名な女性が教師と二人で死亡するという事件が起こる。最初は心中と思われたが、殺人の可能性も高まっていく。問題は、現場付近は雪で覆われており、犯人の足跡が遺されていないことだった。
「転校生と放火魔」 小学生の頃に付き合っていて転校していた明美が、ふたたび町に戻ってきて、同じクラスになる。その頃、町では放火事件が相次いでいた。
「最後の海」
優斗と仲の良い、医師の家の次男・司の家族に事件が起こる。彼の兄が警察からみのトラブルを起こし、医者を継げない状況となる。医者とは別の道を目指していた司だが、厳格な父と対立することに。叔父さんとともに司の兄を捜索する中、司の父が殺されて…。
「旧友」
叔父さんの旧友が株で儲け、町に帰ってきて、ハイカラ屋敷と呼ばれる立派な邸宅を構えた。しかし、旧友は脅迫され、なんでも屋の叔父さんに相談にきていた。ある日、叔父さんが見守りに訪れている最中、旧友は妻とともに命を落とし、その脅迫者も首をくくっていた。しかし、旧友夫婦の死は、密室状況で起こっていた。
「あかずの扉」
優斗が友人の旅館の部屋の片づけのアルバイトを終え、陽介とともに温泉を楽しんだ後、脱衣所にいると、温泉から何か落ちるような音を聞く。忘れ物を思い出し浴場に戻った優斗は、自分たち2人しかいなかったはずの温泉に、同じく手伝いにきていた男の遺体が浮かんでいるのを見つける。
「藁をも摑む」
優斗が明美と倉庫で用事を終え、クラスルームに戻っている途中、とつぜん、大きな音がし、気づくと目の前に抱き合った二人の女子生徒が倒れていた。後に、二人は三角関係で対立していたことを知るが、なぜあのような状況だったのか。
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語り手の優斗さん、実家がスナックで情報通の陽介さん、ドラマ大好きの真紀さん、そして優斗さんの元カノ明美さんの4人が主要メンバーで、事件の謎について語り合います。各事件の謎解きもそうですが、優斗さんが何を決断していくのか、ということも物語のもう一つの軸になります。
それにしても、多くを書きにくい作品です。ミステリはいろいろ読んできているつもりですが、とにかくこの趣向は斬新でした。
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