浦賀和宏『デルタの悲劇』
~角川文庫、 2019
年~
2020
―――
10
歳の頃、斉木たち3人は悪行のかぎりをつくし、いじめ、けんかなどは日常茶飯事だった。しかし、どんくさい同級生が池でおぼれて死んでから、とつぜん彼らは大人しくなった。
そして、少年の命日にあたる成人の日、斉木たちの前に、少年の友人だったという八木剛と名乗る男が現れる。彼は、斉木たちが少年を殺したのを見ていた、罪を告白するよう彼らに迫ってくる。
逆に三人の側も、八木が 10
年も経ってからつきまとってきた理由を探ろうと試みるが…。
―――
浦賀さんらしい、非常に仕掛けのある作品。だまされないぞと思いながら読みましたが、見事にやられてしまいました。
また、『デルタの悲劇』は本書のタイトルであり、また作中の浦賀さんによる作中作のタイトルでもあるのですが、作中の浦賀さんの遺作とされます。
浦賀さんが亡くなったのち、ハルキ文庫から『殺人都市川崎』という作品が刊行されているようですが、作品自体の衝撃度もさることながら、現実との奇妙な符号もあいまって、非常に印象的な作品になっていると感じました。
(もっとも、初期から 『浦賀和宏殺人事件』
という作品もあり、最近では 『究極の純愛小説を、君に』
など、浦賀さん自身を登場させる作品は珍しいわけではないのですが…。)
あらためて、作品自体もすぐれてフェアなミステリとなっていて、ぐいぐい引き付けられながら読み進めました。これは面白かったです。
(2020.10.17 読了 )
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