芥川龍之介『地獄変・偸盗』
~新潮文庫、 2011
年~
『羅生門・鼻』に続く、「王朝もの」第2集です。6編の作品が収録されています。
「偸盗」
沙金という女性頭領が率いる盗賊団に属する太郎と次郎の兄弟は、沙金をめぐって内心争っていました。奔放な沙金に翻弄される二人ですが、ある夜の盗みを機に、変化が起こります。
アクションシーンあり、微妙な駆け引きありと、私は楽しく読みましたが、解説によれば、芥川さん本人は「自分の一番の悪作」と思い、生前の単行本には収録されなかったとか…。
「地獄変」
気難しく変人で通っていた絵師・良秀をめぐる物語。彼は、自分の娘のことは溺愛しており、主人にも意外な申し出をしたりします。そんな彼が地獄変の絵を描く際の、壮絶なエピソードが語られます。こちらも面白かったです。
「竜」
ある大納言が、人々にいろんな話をするよう命じると、ある翁が話を始めます。彼が語るのは、「3月3日この池より竜昇らんずるなり」というウソの立て札を書いた法師の話。ウソだったはずですが、立て札の噂は町中に広まり、はたしてどうなる…という、こちらも楽しく読みました。
「往生絵巻」
町にやってきた妙な法師を馬鹿にする人々ですが…という話。
「藪の中」
藪の中から見つかった男の死体をめぐり、事件に関係する人々が証言をしていきます。果たして真相は…というところですが、こちらも好みの物語でした。
「六の宮の姫君」
不遇な人生を送った姫君の物語。最近、芥川さんの新潮文庫はコンプリートしたいと集めながら読み進めていますが、また 北村薫『六の宮の姫君』
を再読すると新たな味わいがあるだろうな、と楽しみです。
と、まとまりのない記事になりましたが、好みの作品が多く、今まで読んできた芥川さんの短編集ではお気に入りの一冊になりました。
(2021.03.20 読了 )
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