有栖川有栖『幽霊刑事』
~講談社、 2000
年~
有栖川さんによるノンシリーズの長編です。刊行はもう 20
上司に呼び出され、「すまん」の言葉とともに射殺された神崎達也刑事は、気づくと幽霊となってこの世に戻っていました。フィアンセの森須磨子刑事は自分に気づくことがなく、絶望的な気持ちになる神崎刑事ですが、イタコ家系の後輩・早川刑事には自分が見え、会話できることに気づきます。
早川刑事の協力を得ながら、上司の犯罪を立証しようと奮闘する神崎刑事ですが、その上司も密室状況で死亡するのが発覚します。所属署の度重なる不祥事もあり、上層部は事件の解決(もみ消し)に躍起になりますが…。
物語は幽霊となった神崎刑事の一人称で進みます。物を通過できるけれど触れることはできなかったり、早川刑事以外には自分の姿や声が見聞きできなかったり、眠ってしまったりと、いろいろな設定が面白いです。早川刑事のキャラクターも素敵です。
いかに上司の犯罪を立証するか。手に汗握る展開の中、その上司も殺されてしまい、さらに謎が深まるという、ミステリとしても抜群に面白いですが、幽霊の存在を全く信じないフィアンセとの行方にも注目です。
おそらく 20
年近く前に読み、その後一度は再読している(はず)と思いますが、それでも今回が 10
年以上ぶりの再読と思います。感動できる物語、という印象は残っていましたが、あらためて楽しめました。有栖川さんの作品はどれも安心して楽しめますが、その中でも私には好みの物語でした。
(2021.05.28 読了 )
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