池上俊一『ヨーロッパ史入門―市民革命から現代へ―』
~岩波ジュニア新書、 2022
年~
前回紹介した 『ヨーロッパ史入門―原形から近代への胎動―』
18
世紀から現代までを扱う本書の構成は次のとおりです。
―――
まえがき
第1章 啓蒙主義から市民革命へ―近代市民社会への道程( 18
世紀)
第2章 近代世界システム―国家・帝国・資本主義( 19
世紀)
第3章 二つの世界大戦―悪夢の世紀( 20
世紀)
第4章 ヨーロッパはどこへ―解体か再生か( 21
世紀)
文献案内
あとがき
ヨーロッパ史年表/事項・人名索引
―――
前著同様、概説書なので印象に残った点などをメモ。
第1章は 1715
年(ルイ 14
世没年)~ 1789
年(フランス革命)までの「短い 18
世紀」を扱い、第2章は 1789
年から 1914
年(第一次世界大戦)までの「長い 19
世紀」(ホブズボームの言葉)を扱います。第2章の標題は著名なウォーラーステインの研究の名ですが、ウォーラーステインには言及がなく、その主要概念である中心・周縁・辺境という語にもふれられていなかったように思います。
第2章で興味深かったのは、「移民の時代」と題された節。今でこそ、「移民」といえばEU域外(アフリカやアジアなど)からEU諸国への移民がクローズアップされますが、 19
世紀にはむしろヨーロッパから世界への移民が盛んだった、ということです(もちろん植民地化とからめて)。
第3章は二つの世界大戦についての概観と戦後の世界を描きます。冷戦後も「ロシアとの対立はなかなか抜き難く」 (172
頁 )
とありますが、ついに先日、ロシアはウクライナに侵攻してしまいました。
第4章は 21
世紀のヨーロッパを見据えます。池上先生は、ヨーロッパの最大の特徴はその「多様化」とし、いかに「多様化」を大切にするかを重視しています。
以上、2冊をあわせてヨーロッパ史を概観できる良書だと思います。
(2022.02.21 読了 )
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