島田荘司『新しい十五匹のネズミのフライ―ジョン・H・ワトソンの冒険―』
~新潮文庫、 2020
年~
島田荘司さんによる、シャーロック・ホームズシリーズのパスティーシュ長編。
それでは、簡単に内容紹介と感想を。
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「赤毛組合」には、ホームズの裏をかく陰謀があった。
黒幕の予想通りの「解決」の後、ホームズは難しい事件が舞い込まないためドラッグ漬けになり、精神病院に入院してしまう。その間に、「赤毛組合」事件の犯人たちは刑務所から脱走し、警察でも行方がつかめなくなる。犯人たちが口にしていた「新しい十五匹のネズミのフライ」という言葉の意味とは。
不在のホームズにかわり、ワトソン博士が真相をつきとめようと奮闘する。
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これは面白かったです。
本書を読みたいがために、先にホームズシリーズを全部読んでおいたのですが、正解でした。(もちろん、ホームズシリーズを読んでいなくても、本書は純粋に楽しめると思います。)
「まだらの紐」や「這う人」執筆の裏話が語られるのも面白いですし、プロローグでホームズを罠にはめるための陰謀が語られるシーンも面白いです。
と、ファニーな(笑える)要素も盛りだくさんであると同時に、愛する女性のためのワトソン博士の奮闘や白人上位主義に苦しめられる人々や女性へのワトソン博士のまなざしは印象的ですし、なにより表題の「新しい十五匹のネズミのフライ」という言葉の意味や、犯人たちがいかに脱獄不能といわれる刑務所から脱獄したのか、という興味深い謎の解明も素敵でした。
島田荘司さんには、 『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』
(光文社文庫、 1994
年)という、同じくホームズもののパスティーシュ作品があり、そちらも面白かったですが、本作もとても楽しめました。
良い読書体験でした。
(2022.05.10 読了 )
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