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2022.10.08
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John W. Baldwin, Masters, Princes, and Merchants. The Social Views of Peter the Chanter and His Circle , 2 vols, Princeton, 1970

12-13 xiv+343p )と注・付録(第2巻、 287p )の2巻本という大著です。神学者ペトルス・カントル (1197 年没 ) と、彼の弟子たちが、同時代の教師、君主、商人をどのように見ていたか、その「社会へのまなざし」 social views を分析することが、本書の目的とされます。
 まず、本書の構成は次のとおりです。(拙訳)

―――
前書き
第1部 ペトルス・カントルとそのサークル
 第1章 ペトルス・カントル
 第2章 パリにおけるペトルス・カントルのサークル
 第3章 神学的教義
第2部 教師
 第4章 パリとその諸学校
 第5章 神学者たち
 第6章 学術的生活
 第7章 エピローグ―名高い教師たち
第3部 君主
 第8章 俗権 regnum と教権 sacerdotium
 第9章 宮廷での奉仕
 第 10 章 屋外 field での奉仕
 第 11 章 財政での奉仕
 第 12 章 エピローグ―同時代の君主たち
第4部 商人
 第 13 章 商人とその活動
 第 14 章 信用、投資、交換
 第 15 章 高利への戦い
第5部 改革
 第 16 章  1215 年の [ 第4回 ] ラテラノ公会議
―――

 第1部は本論の予備的作業として、ペトルス・カントルの経歴と著作を概観(第1章)した後、彼の弟子たちの略歴と著作を概観(第2章)し、さらに神学的教義(第3章)として、特に悔悛を中心とする秘跡や聴罪司祭の資質、個別の状況への配慮といった議論を分析します。
 第2部は教師について。教授資格や自由学芸、医学・法学に関するペトルスらのまなざしを見た後、第5章はペトルスが神学教師の活動として重視する「読解」「討論」「説教」について論じます。特に興味深いのは第7章で、学生たちの経済状況や、肉の誘惑について論じています。
 第3部は君主について論じます。第8章で俗権と教権に関する理論的な議論をみて、第9章は宮廷に仕える聖職者たちのしごととしての読み書き能力の重要性や、法律家へのまなざし、さらにジョングルールなどのエンターテイナーらの活動について論じます。第 10 章は戦争、関連してその財政面や傭兵の活用、そしてトーナメントと狩りについて。第 11 章は税制などについて論じます。第 12 章は、ペトルスらの著作は、一般的な道徳への関心から個別の君主に言及することがまれとしつつ、一部言及される同時代の王や領主についてみています。
 第4部は商人について。特に商人の「うそ」や高利についてのまなざしを論じます。
 最後の第5部は第4回ラテラノ公会議での議決から、結婚や聖職者独身制などへの、ペトルス・カントルとそのサークルのまなざしについて論じています。

 購入から全体に目を通すまでに約7年もかかってしまいましたが、基本的な文献なので、この度(一部ざっとですが)通読できてよかったです。

(2022.06.18 読了 )






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Last updated  2022.10.08 16:27:09
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