森護『紋章学入門』
~ちくま学芸文庫、 2022
年~
著者の森護さん (1923-2000)
1998
年によれば、文教大学非常勤講師をなさっていたようですね。)
本書は、初出は1979年で、1996年の改訂版を文庫化したものとのことです。
本書の構成は次のとおりです。
―――
第1章 紋章とは
第2章 紋章の起源
第3章 紋章の構成
第4章 楯
第5章 フィールドの分割―分割図形―
第6章 オーディナリーズ
第7章 チャージ
第8章 ディファレンシング
第9章 マーシャリング
第 10
章 現行のマーシャリング
第 11
章 オーグメンテイション
第 12
章 イギリス王家の紋章史
参考文献
索引
―――
本書は大きく4部構成になっています。
第1章~第3章が、紋章に関する前提で、紋章とは何か、その起源は、そして紋章の楯を支えるサポーターや冠、兜飾りなどの紹介となっています。
第2部にあたるのが第4章~第7章。紋章の基礎編です。
第4章は、楯の形状、部位の名称、紋章に使われる色彩と規則について論じます。
第5章から第7章までは紋章に置かれる図形についてで、第5章は楯の分割(縦二分割、斜め分割、4分割など)について論じます。先に「置かれる図形」と書きましたが、厳密には第5章で紹介されるのは楯の分割方法であり、実際に置かれる図形は第6章と第7章です。
第6章のオーディナリーズは、抽象図形ということで、紋章に置かれる縦、横、斜めの太線(形状も直線でなく波線だったりギザギザだったり様々)などを扱います。
第7章のチャージは、紋章でよくみられるライオンやワシなどの具体的図形のことで、主に先に触れた2種の動物について詳述されますが、冒頭では、靴や墓、パンツなど、珍しい図柄も紹介されます。
第3部にあたる第8章~第 11
章が応用編で、第8章のディファレンシングは、「親子であっても同一の紋章は認めない」 (239
頁 )
との原則から、親子、兄弟、分家などの違いを示す技法です。たとえば、同じ図柄でも、楯の周囲に縁取りを入れるなどの技法がこれに当たります。
第9章マーシャリングは、複数の紋章を組み合わせる技法で、たとえば名家の女性を妻に迎えた男性が、自分の家系の紋章と妻の家系の紋章を組み合わせて新たな紋章を作る、ということです。第 10
章は、現代に見られるその具体例や技法の紹介です。
第 11
章オーグメンテイションは、「王などの主権者が臣下に功績その他の理由によって加増を許す紋章」 (317
頁 )
で、「家門の誇りとしての効果は絶大」 (318
頁 )
だということです。
第4部にあたる第 12
章は、紋章前期から現代までのイギリスの紋章史概観となっています。
中世ヨーロッパの紋章については、 ミシェル・パストゥロー
の諸論考で勉強していますが、紋章用語や具体的技法については不勉強な点も多かったので、本書で基本的な事項がおさえられるのはありがたいです。
(2022.10.01 読了 )
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