島田荘司『ローズマリーのあまき香り』
~講談社、 2023
年~
御手洗潔シリーズ長編の最新刊です。
1977
年。世界的に有名なバレエダンサー、フランチェスカ・クレスパンが、「スカボロゥの祭り」上演の最終日に、何者かに殺害されます。
4幕ある舞台のうち、2幕と3幕の間の 30
分の休憩中に殺されたはずのフランチェスカですが、4幕まで踊りきるのを多くの観客が観ていました。しかし、彼女の額からは血が流れ、ラストは、前日までの筋書きとは異なる演技となっていました。
また、地上 50
階の、フランチェスカが殺された控室のドアは施錠され、控室の前の廊下は、警備員がじっと監視しており、完全な密室状況で…。
20
年間未解決だった事件は映画化され、ハインリッヒがその映画を御手洗さんに紹介します。そこから、収容所で育ったフランチェスカの壮絶な人生と事件の謎を追う旅が始まります。
完全な不可能状況という魅力的な謎の提示に、作中バレエ「スカボロゥの祭り」の原作となるファンタジーのような物語、そしてユダヤ人のたどった運命、近年の戦争と、本作も読みどころが盛りだくさんです。いま簡単に触れたファンタジーも作中作として描かれますが、これ自体も面白いですし、もちろんしっかり伏線になっているのも魅力でした。
事件の捜査に当たるダニエル刑事や事件の鍵を握るとされたルッジさんなど、登場人物も魅力的です。
単行本で 600
頁超えという、今回も大作ですが、どんどん読み進められました。
これは面白かったです。良い読書体験でした。
(2023.05.05 読了 )
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