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2023.06.24
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~角川文庫、 1973 年~


 表題作である由利先生シリーズの長編と、2編の短編が収録された作品集です。


「蝶々殺人事件」 世界的ソプラノ、原さくらが殺された。その遺体は、コントラバスのケースに入れられ、歌劇団の集う会場に届けられた。東京公演を終え、それぞれのスケジュールによって大阪に向かったメンバーたちだが、さくらは予定とは異なる行動をとっていた。派手な交友関係が騒がられるさくらの死の真相は。
「蜘蛛と百合」 三津木の知り合いの美青年が殺された。死の間際に彼が口にしていた、君島百合枝という、金持ちの美女が事件に関係しているようだった。三津木は、由利先生の忠告にもかかわらず、接近した百合枝に夢中になりはじめ…。
「薔薇と鬱金香」 無名の戯曲家の劇を観ながら、鬱金香夫人、あるいはマダム・チューリップと呼ばれる著名な婦人、弓子は具合が悪そうなしぐさを繰り返していた。その後、彼女の関係者が、彼女の前夫を殺した罪でとらえられ、監獄で死亡したはずの薔薇郎を目撃したと話しているのを、三津木たちは耳にする。
―――

 表題作は、三津木さんが過去を振り返り小説を執筆したという体裁の、由利先生&三津木シリーズでは珍しいタイプの作品です。さらに、読者への挑戦も付されていて、本格探偵小説のだいご味が味わえます。この作品を​ 「本陣殺人事件」 ​と同時期に連載していたのですから、戦後の横溝さんの圧倒的な熱意と力量がうかがえますね。「本陣殺人事件」は個人的に思い入れが強く大好きな作品ですが、「蝶々殺人事件」も名作だと思います。
 その他2編は本格度では劣りますが、怪奇性が味わえます。「蜘蛛と百合」では、三津木さんが女性にまいってしまうという、こちらも珍しい姿を見せてくれます。
 大坪直行氏による解説は、「蝶々殺人事件」執筆の背景など詳細に書かれていて参考になりますが、関連するトリックがみられる横溝作品への言及や、わりとはっきりと根本的なネタバレをしてしまっている記述もあるので注意が必要です。
 とまれ、バラエティに富んだ作品集です。

(2023.02.18 読了 )

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※表紙画像は横溝正史エンサイクロペディアさまからいただきました。





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Last updated  2023.06.24 22:59:11
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