玉子編 1 オムライス


カレーライス、ハンバーグは抵抗無いけど、オムライスって、なんだか、だいの男が、しかも坊主頭で、髭の生えた胡散臭そうな奴(私のこと?)が一人で、かわいいウェートレスさんに頼むのは、変じゃないですか?

「オムライスを・・・」って言ったとたん、周りのテーブルの客が一斉に振り向き、注目を浴びそうで、頼みづらいです。
フルーツパフェもそうです。(頼まんけど)

オムライスは明治から大正にかけて、日本で生まれた洋食です。

玉ねぎ、鶏肉、グリーンピースをご飯と炒めて、ケチャップで味付けし、それを薄焼き卵で包み込んだもの。

こう書くと、とっても簡単な料理に見えますが、なかなかです。

チキンライスはシットリしてなきゃいけません。あくまでもシットリね。リゾットみたいにベタベタでもいけません。

玉ねぎは焦がさず、やわらかく炒めます。もちろんバターでね。
グリーンピースは色鮮やかに、そして、皮が歯に当たるとプッと破れるくらいの柔らかさに茹でます。

お肉は大きけりゃイイってもんじゃありません。肉汁を逃がさず、歯に柔らかさが伝わる、邪魔にならない大きさ、6から8ミリ角と言ったところでしょうか。
逆に、家で作る場合、ひき肉だとどうしても硬くなって、却って存在感を感じてしまい、しっとり感が損なわれる気がします。

包む卵側は、内側は絶対に半熟でなければいけません!!
白身と黄身の色むらなんて以っての外です!!
そして僅かな焦げ目も許されません。

これらの条件が満たされた時、全てが渾然一体となり、オムライスという新しい天体がスプーンの上に誕生するのです。

チャーハンみたいにパラパラで、クレープみたいな薄焼き卵では、最後の僅かなライスと、卵の切れっ端と、グリーンピースがスプーンに入らず逃げ回り、イライラします。

これでは、お洒落ではありません。

オムライスを食べると、ちょっと胸がキュンって締め付けられる気がしませんか?(取り合えず、キュンとしたことにしてね。)

ケチャップの甘酸っぱい香りのせいなのか、それとも純白の皿に横たわる、少女の肌のような、染み一つ無い黄金色の卵の生地のせいか・・・思わず恋をしちゃいそうになりませんか?
おじさんは、くらっとします。

そんな見目麗しきオムライスなら、名古屋の籠目屋と東京の資生堂パーラーがお薦めです。その美しさに、スプーンを入れるのを躊躇う程です。どうぞ、虜に成らないよう、気を付けて下さい。

籠目屋 052-953-0288 名古屋市中区錦3-14-15 カゴメビル
    11:30~14:00 17:00~22:00 月休
    元祖オムライス 600円を試してください。トマトソースが少し多いですから、注文する時少な目に頼むか、別に頂くと良いでしょう。
   トリフのオムライスもありますが、プレーンのオムレツにトリフだけが入っていればお薦めなのですが、具が邪魔・・・。

レストラン 資生堂パーラー本店 東京都中央区銀座8-8-3東京銀座資生堂ビル4・5階 
      03-5537-6241 11:30~21:30 第1・3月休 祝営
      明治35年、日本で初めて、アイスクリームの製造・販売を行った“ソーダファウンテン”として銀座に誕生して以来100年の老舗です。あこがれの西洋料理屋さんですが、いかんせん、オムライス一皿が税サ別で3000円!!!
      恋するには高嶺の花でしょうか?


ところで、オムライスの誕生には大阪と東京に、それぞれ譲らない有名なお話があります。

北極星 06-6211-7829 大阪府大阪市中央区西心斎橋2-7-27
    11:45~21:00 水休
    大正11年に「パンヤ食堂」と言う名前で開店した北極星で、同13年頃、常連の中に、いつもオムレツとライスを注文するお客様がいらしたそうです。聞くと、胃腸が弱く、やわらかいオムレツとご飯しか食べられないとのこと。やさしい初代店主が同じ材料で何か違うものができないかと考えたのがオムライスの始まりだとか。
    現在、北極星は関西に8軒を数える繁盛店で、一日にオムライスだけで1500皿出るそうです。

煉瓦亭 03-3572-0101 東京都中央区銀座8-8-8
    11:00~14:00 17:00~20:00 日休
    言わずと知れた“元祖オムライス”のお店
    明治34年に考案された、マッシュルームや玉ねぎ、ひき肉を炒めてから、温かいご飯と併せ、その中に、とき卵を混ぜ込んでひとまとめにして、フライパンで一分も掛けないでオムライスの形を作るタイプ。これを元祖オムライスと呼んでいます。
    もうひとつは、茶巾ずしをヒントに、ピラフを薄焼き卵で包む、いわゆる“オムライス”を先々代が考案したと言われるお店です。


明治34年の煉瓦亭には負けますが、名古屋にも、明治42年からオムライスを作り続けている洋食屋さんがあります。
西洋料理 勝利亭 052-551-5886 名古屋市西区那古野1-2-17
         11:30~14:00 17:00~20:30 円頓寺商店街の東端にあります。
 明治屋がケチャップを輸入するようになったのが、明治41年。奇しくも現在のカゴメの創業者、蟹江一太郎氏が国産のケチャップを完成させたのも同じ年です。そして、ここ勝利亭がカゴメの最初のお客さんで、ケチャップを使い始めたそうです。

ここのは見た目の美しさはありませんが、うまい!!って言えるオムライスです。
卵3個も使っています。そして、卵の中にハムやタンが入っているので、すごく旨味が卵にあります。初めて食べた時、私はダシの効いた卵焼きを思い出しました。ちゃんと、半熟で、ケチャップライスと良くなじみ、グリーンピースの緑とコントラストも完璧です。
 オムライスを食べる時、やたらケチャップが掛かっていて、食道が痛い時ってありますよね?勝利亭はライスにケチャップが使ってあるから、外にかけるのは各自の好みで掛けられる様テーブルに置いてあります。
私はこういうお店って好きです。普通にケチャップライスの中に肉を混ぜないで、卵に混ぜるコダワリを持ちながら、お客さんの好みにも気を使う姿勢がある。ただの頑固親父でなく、懐の深さのある職人です。
昔ながらの商店街にぴったり雰囲気が合っているお店です。


勝利亭とは逆に、外にケチャップをかけるから、中のライスにケチャップを使わないお店も有ります。
大須の洋食屋 御幸亭 052-241-0741 名古屋市中区大須3-39-45
           11:30~14:30 17:00~21:00 火夜・水休 28日・祝営
大正12年創業。
オムライスはケチャップライスでなく、バターで炒めたハムライスで、やさしい香りがします。鳥のスープが入ってライスがしっとりし、最初食べた時、炒めてなくて、炊きたてのピラフかと思いました。包んでいる卵の中にご飯粒が入り込んで焼きあがり、内側は当然半熟で、一瞬の内にオムライスが作られているわけで、すごい技術だと思います。
ケチャップも刺々しさが感じられず、甘さも酸味もマイルドで、これだけを舐めても美味しいです。店員さんもハキハキと感じ良く、ハヤシライスも味噌カツもおいしいし、お気に入りの一軒です。残念なのは、お皿が冷たい事と、シェフのユニフォームが汚れていること。キッチンが覗けるから、もう少し服装に気を使って欲しいです。





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