存生記

存生記

2009年10月25日
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「ロング・エンゲージメント」のDVD。「アメリ」の監督、女優、スタッフで固めている。第一次世界大戦の婚約者の行方を追うヒロインを描く。とはいえ、そこからさまざまな人物のエピソードに枝分かれしてゆくので、話を追うのは大変かもしれない。台詞も多い。しかも軍服を着た男たちの顔を見分けるのは難しい。フランス人ならばお馴染みの俳優なので造作もないのかもしれないが。

 そういうわけで、ラブストーリーと謎解きに加え、軍人たちに復讐する女性まで登場する。復讐シーンもなかなか凝っている。流暢なフランス語を話すジョディ・フォスターも出てきた。内容盛りだくさんで咀嚼するのが難しい。それだけのテーマなのでやむをえない面もある。第一次世界大戦のフランスの被害はハンパなものではない。描こうとすればいろんな人物を取り上げたくなる。行方不明の兵士を探すことは、記憶を掘り起こす作業でもある。ハッピーエンドは国民的トラウマの癒しにもなるだろう。キューブリックの「突撃」もそうだったが、フランス軍内部の陰惨な粛清がここでも描かれる。

 ジャン=ピエール・ジュネ監督の音声解説がおもしろい。ドイツ兵は類型的にならないようにあえて優しい顔つきの人を選んだ話、どこまでがCGなのか、どの名作を参照してとったショットなのか、コルシカが好きだから原作のマルセイユ出身の兵士をコルシカ人に設定を変えたら酷評された話……次々に明かされていく。二時間以上ずっと喋り続けるのも大して苦ではないようだ。それだけ一つ一つのシーンに思いが込められ、エピソードもあるのだろう。

 時代が時代だけに古色が周到に施され、セピア色の映画に仕上がっている。役者たちの迫真の演技にも引きこまれる。でも何かが足りない。脚本だろうか。原作の小説の映画化にあたってはけっこうエピソードを刈り込んだようだが。





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最終更新日  2009年10月25日 20時57分55秒


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