存生記

存生記

2010年01月14日
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ラッパ屋第35回公演「世界の秘密と田中」を紀伊國屋ホールで見る。大画面テレビのイメージに慣れてしまっている自分としては、後ろの席だったのでじゃっかん不安があったがすぐに消し飛んだ。舞台の役者の迫力はすごい。たちまち引きこまれた。設定の切り替えもスムーズかつ意表を突いており、舞台ならではの妙味をかもしだしていた。

仲の良いアパートの住民たちのやりとりを見せながら、親の介護と自分の人生というシリアスなテーマを取り上げる。40歳を前にしたときのアイデンティティ・クライシス。40歳に限らない。いい年をした母親であれ、恬淡とした老いた芸術家であれ、ひょんなことから世間の枠からはずれてゆく。個性的で、どこか子供っぽい人たちがハチャメチャだったりしんみりさせたりするやりとりを室内で繰り広げる。予想外の設定で笑いを散りばめながら、最後は気持ちよく大団円を迎える。

脚本を担当した鈴木聡は、黒い小さなノートをいつも持ち歩き、「世界の秘密に触れた気がするフレーズ」を見つけると書きとめたそうだ。劇中では含蓄のあるフレーズがいくつも乱れ飛んでいたが、きっと何冊もたまったノートから引用され、磨かれていったのだろう。

テレビも映画も親も先生も友達も「予告編」ばかり語る、というようなくだりは印象に残っている。結果としてミスキャストになるような期待感ばかり煽られ、肝心要のことは示されることはない。「世界の秘密」は、簡単に教えてもらえるようなものではないのだ。そのことは、教えてもらおうと相談しにいって、あとで手痛いしっぺがえしをくらうことになる主人公がまさに体現している。

こうやって感想を言葉にすると抹香臭くなるが、芝居自体は理屈を吹き飛ばすようなカーニバル的な楽しさと賑わいと活力に満ちていた。





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最終更新日  2010年01月15日 01時34分31秒


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