存生記

存生記

2010年08月25日
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「アエリータ」(1924)をビデオで見る。アレクセイ・トルストイ原作小説の映画化。『戦争と平和』のレフ・トルストイと似ているのでまぎらわしい。技師が妻の浮気を疑って射殺し、ロケットで火星に脱出する。火星には女王アエリータを戴く文明社会が栄えている。そのままパリコレに出られそうな近未来ファッションがみどころだ。

「アエリータ」に出てくるロシア・アヴァンギャルドの美学を活用した火星人の服装や建築は、映画史やファッション史でも言及される。ただ主人公が火星に出発するのは、一時間近くたってからで、映画としておもしろいのは80分のうち最後の20分である。主人公とアエリータのラブストーリーのくだりもある。地球人のようにキスをしない火星人のアエリータは興味津々だ。ただ、地球のシーンもそれまでは当時のロシア人の生活や街並みが描かれているので歴史的資料として興味深い。孤児院のシーンなどは革命から内戦に至る激動の傷跡を感じさせる。

 火星では地下の労働者たちはすっかり奴隷のようである。三分の一は冷凍保存にするぞなどと恫喝されている。しかし、自由に目覚めた労働者たちによる革命が起きる。ここからはすっかりプロパガンダ映画の展開で、ハッピーエンドで終わる。夫が地球に戻り罪を悔いて自首しようとすると、実は妻を撃った弾がはずれて妻は死んでいないことが判明する。夫が謝罪し妻も許して仲直りする展開には唖然とさせられる。革命まもない古い時代の映画ということで許せるけれども。

 その頃、日本映画は活動写真から映画という呼び名が庶民にも浸透したようだ。1923年の関東大震災で東京の撮影所は壊滅し、それどころではなかっただろう。この頃の邦画のラインアップをみていると、この時代に「アエリータ」のような長編SF映画を作っているというのはたいしたものだと思う。





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最終更新日  2010年08月26日 23時32分54秒


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