存生記

存生記

2010年09月09日
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「ヒックとドラゴン」を新宿で見る。3Dアニメで見栄えのする飛ぶシーンはさすがの迫力。急速に進歩した分野ではないか。これ以上何をどうするのだというくらい見事である。技術的には進歩でも想像力的には退化だという意見もあるかもしれないが、臨場感があるのは事実。原作は児童文学だそうだが、活字もアニメもそれぞれはりあうことなく別のものとして生き延びていけばいい。

 バイキングの少年ヒックがドラゴンと親しくなるにつれて、ドラゴンを倒す訓練に励む日々に疑問を抱く。若者が自分の世界を拡げて高揚させてくれる乗り物(=相棒)に憧れるのはいつの時代も変わらない。アニメのモビルスーツもそういうものだ。とはいえ最近の若者はバイクに乗らなくなっているそうだから、こういう衝動をどう手なずけているのか、そもそもなくなってしまったのか。ケータイがむしろそういう身体感覚の延長や拡大として機能しているのかもしれない。死という生の限界と戯れるバイクとは違って、ケータイではそういう身体感覚は得られないが。

 父親たちのマッチョで戦闘的な価値観は、子供たちの共生の価値観の前に反省を迫られる。バイキングというと戦闘集団のイメージがあるだけに象徴的だ。ヒックの孤独な戦いによって、大人たちの競争原理に盲目的に従うだけが人生ではないことを他の人たちも知ることになる。とはいえ、ヒックはドラゴンと結局戦うはめになり、それなりの代償を払うことになる。最初から共生で皆がうまくまとまるようなおとぎ話になってはいない。「やむをえず」巻き込まれるというところに観客は共感する。魔物と対決して乗り越えるところにカタルシスをおぼえる。最終的に非力な少年が知恵をしぼりながら仲間の協力で大きな成果を達成し、父とも和解を果たす。かくして清々しい余韻とともに映画は終わる。





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最終更新日  2010年09月10日 02時41分33秒


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