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2016.04.01

『三蔵、妊娠したってよ』シリーズ第二十九段　～卑しい、よこしまな心～　映画『西遊記之孫悟空三打白骨精』によせて

カテゴリ： ◆映画・TV・華流・韓流・ショービズ

↓前回です♪
第二十八段

★☆★☆
第二十九段

あの嘘をつかせたのは俺なんだ。

悟空は彼が最後まで乗り気でなかったのを思い出した。

だがどうすれば良かったのだ？

あの女たちは、なにがなんでも三蔵を王の婿にしたかったんだ。

お前は相変わらず、おめでたいな。

紅孩児は言った。

彼は顔をやや左に引き、正面に残した瞳で悟空の目をにらんでいた。

ぞっとするほど綺麗な子供だった。

その子供のくせに紅を差したような口元には

暗い含み笑いがあった。

好きだったんだとさ。

始めて会った時から。あの王様を。

自分の気持ちを卑しいよこしまな心と言ってた。

紅孩児はますます薄ら笑い

唇をぎゅっと歪めてから肩をすくめた。

恋のことを、そんなふうに言うなんて、最低だ。

彼は吐き捨てた。

悟空は低く唸った。

弟子は聞くべきじゃない。

それは本心だった。

その話しはよすんだ。

お前。うぶだな。

お前の助言は渡りに船だったそうだ。

そうでもしなければ、多分、本当に結婚してたんだと。

悟空は如意棒を伸ばした。

警告だった。

いいか。弟子の居ない場所での話だ。

俺たちに聞かせたかったかどうか、分からない。

そんな話は聞きたくない。

本当に馬鹿なんだな、お前。

紅孩児はひるまなかった。

お前の言いそうなことは分かっていて、

嘘をつこう、と言い出すのを待っていたそうだぜ。

ふふん。

紅孩児は心底嬉しそうだった。

ああいう男の考え付きつきそうなことだ。

目的のためなら仲間も自分も騙すんだ。

お前達が相手だ。赤子の手をひねるより容易かったろう。

紅孩児はそう語りながら、屈んでいて、

先程から手は地面を小さな金具でこつこつ掘っていた。

そうしなくてもすむ方法はあるはずなのに、

地道に穴を作っていた。

小さな手だったが力はあるらしく

あっという間に、覗きこんで底の方の土を掻き出す時は、

上体のほとんどがはまり込むほどになっていた。

長くあの国にいれば居るほど、

王のことをどんどん好きになって行くと思って、

焦ったんだと言ってた。

いいか、もう黙れ。

悟空は声を落としていた

三蔵にもし聞こえていたらと思うと

気が気ではなかった。

これ以上こいつが言いつのる様なら、

二度と口が開かないようにしてやる。

女たちが残した松明のほとんどはくすぶり始め、

もう消えようとしていたが、

人間ではない彼等の目は、暗闇に困ることはなかった。

聞くんだ。

悟空は、ひそひそ声を出した。

俺の師匠は死にかけてる。

もしお前の言っていることが本当なら

その恋のために死のうとしているんだ。

その恋のために、こんな死に方を選んだんだ。

もう辱めるな。

何があったにしても、充分じゃないのか

そうだな。菩薩の弟子は頷いた。

充分どころか、お前の罪の分まで

あがなおうとしているんだからな。

しかも感謝どころか憎まれてる。

いいざまだ。

そして紅孩児はいきなり、今はじめて目が覚めたような

まともな顔つきになった。

悟空。

彼は真っ直ぐに猿の目を見た。

もう止めろよ。

そしてやはり今はじめて、思いやりを見せた。

これを機会にこの男と手を切るんだ、と言った。

菩薩は、お前が一緒に転生を待つと

三蔵に確約していたが、

俺は、お前は自由になっていいと思う。

悟空はびっくりして、紅孩児が本当にこんなことを言っているのかと

じっと、その顔を眺めた。

お前が何を考えているのかさっぱり分からん。

悟空は溜息とともに首を振った。

お前は俺と師匠の仲をとりもちたいのか

その逆なのか

さっきから変なことばかり言ってるぞ

紅孩児は応えて言った。

菩薩の気持ちを思えば

お前が三蔵を待つのが良いと思うし。

お前のことを思えば、

お前は三蔵を捨ててしまえばいいのにと思うんだ。

俺だって、自分の気持ちが分からねえ。

さあ、かせよ。

彼は、穴の中に入っていて、中から白竜の首を要求した。

穴は良い感じで掘れていた。

悟空は、ああ、と少し驚いた様子だったが、

彼の気持ちを受け入れた。

待ってくれ。と上着を脱いだ。

白虎の毛皮の上着

これはこいつが持つべきかも知れない。

と言った。

それと、彼の剣。抜き身のままで、鞘は見当たらなかった。

その剣で、悟空は自分の頭部の毛を一房刈った。

その金色の毛の束を白竜の頭の銀髪の毛の上に乗せた。

返り血に汚れた毛皮にくるまれた白竜を墓穴に入れた。

畜生、お経をあげるやつも死にかけだ。悟空はまた泣いた。

白竜の気持ちを考えると、自分が意地を張って、

三蔵をさも毛嫌いしているかのように振る舞っていたことは

許されない話だった。

白竜は物言わぬ荷物運びとしてしか、

三蔵に接することは出来なかったのだ。

つづく

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すみれゆきの

いつのまにか母娘でやることになったブログです。娘は主に音楽関係を2017.04あたりから担当。 '17.07.22現在『アジアの音楽』『アジア以外の音楽』の両カテ以外の音楽の記事は娘です。私は映画やドラマなどを中心に気功や太極拳などの情報ファッションや猫や人間の健康に関することなどを発信してます。混乱します？そうでもない？娘は几帳面。私はイイカゲン。そんな感じの見分け方で(笑)

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