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革命、戦争を経た80年代終わりのイランの地。かつてクルド人が共和国を打ち立てたマハバートに、幾つもの思惑が渦巻く。イラン・クルドのゲリラ【ハッサン・ヘルムート】、革命防衛隊の小隊主任【サミル・セイフ】。そして【ハジ】と呼ばれる日本人の武器商人と、もう1人の【ハジ】。その行き着く先にあるものは・・・

これは凄い。今年読んだNo1(毎回、こんなこと書いてるな)
まぁ、冗談はさておき、本当にこれは凄いですよ(あぁ、貧弱な語彙)
一言で言えば、壮大かつ骨太。(ごめんなさい)

↑の文を読むと、なにやら小難しい歴史物?という印象を与えてしまうかもしれませんが、そんなものではありません。もちろん、舞台がイランですから、一筋縄で行くわけがないし、民族、宗教などは当然問題となります。ですが、それを異なる立場に置かれた人物を中心に据えて話を展開していくことにより、むしろイランにおける勢力対抗図のようなものがみえ、全貌を見渡せるような気になります。序章は1980年から始まりますが、この時にはもうイラクの大統領はサダム・フセインです(名前が登場するのみですが)。

しかし、そう硬く構えずに『冒険小説』として読んでも充分に面白いと思います。組織の対立抗争、憎悪復讐劇、決闘、裏切り、武器輸送、裏工作、銃撃戦などなど緊迫した場面の連続で長さを感じません。93年の【このミステリがすごい!】で、宮部みゆきさんの『火車』をおさえて1位になったのも、私としては納得。
船戸与一さんの作品は、舞台が南米だったり、殺し屋みたいな主人公であったりと馴染みのない設定、で厚いし、読まず嫌いの人も多いと思いますが(私だけ?) 時間をかけて読むだけの価値はあると思います。『山猫の夏』を読んだ時に、「思ったより断然面白いや!」と感じました。ですが、この『砂のクロニクル』と比べると少々物足りなかったかなーという気にもなってしまうのが何ともいえないですけど。この本はとにかくお薦めです。

構成としては西暦(グレゴリオ暦)、ペルシア暦(ジャラリ暦)、イスラム暦(ヒジュラ暦)を各章ごとに使い分け、それぞれに属する人物の視点から描きます。他の要素もおおいに絡み、登場人物も多彩です。フェダイン・ハルク、革命委員会、国家治安情報局、イラクグルドのゲリラ、グルジア人武器商人、アゼリ人、ゾロアスター教徒、などなど。

その中でも特に印象的なのは、革命防衛隊の【サミル・セイフ】でしょう。ホメイニの思想を絶対的に信じ、組織の一員であることに誇りを持つ、それ故に理想を追い求める。革命の幻視の中にだけ生を見つけようとしたサミル。しかし度重なる衝撃の中、その魂はどこへ向かおうとするのか?彼の生き方は高潔であるが、あまりにも辛すぎる。



『人間に与えられたもっとも豊潤なものは幻想なのだ』(下巻P505)
という登場人物の1人が語った言葉。
だが、その幻想の為に、何もかもを犠牲にしなければならないのだろうか?
これだけ多くの血が必要なのだろうか?
その背後には常に、漁夫の利を得ようとする亡者がいる。

タイトルにある【クロニクル】とは年代記を意味する。この本の冒頭にあるように、暦はいつも勝者のものである。残されている暦には載っていない、別のこの話のような年代記があっても不思議ではない。また、【砂】はイランの乾いた地を強く思い起こさせる。吹けば飛び、次々と覆い被さって新しい顔を見せ、常に水を求めるその性質がこの地の現状を表しているようで興味深い。
解説で辺見庸さんが『この作家は、現場の風景に相当期間浸かりこみ、生身をすり減らさないことには、一行たりともものを書こうとしない。』と言っているように、真の迫力、誠実さにあふれた本だと思う。





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最終更新日  2003年04月25日 02時17分09秒
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