竹田陽一ランチェスター系講演会・勉強会 東京・西村のNo.1経営ブログ
1
皆さん、チャールズ・チャップリンの「モダンタイムス」で風刺し批判したのはある会社のことですが、なんという会社か分かりますか?それは大量生産、大量消費の基本的な考え方です。まあ、現代の資本主義の原型とも言えます。(続きです。)それは「フォード」です。この会社は工業界において革命を起こしました。一つは「大衆車」という考え方です。そう言うとそんな物かと思う人もいるかも知れませんが、これはもう極端なことを言うと「プライベートジェット」をみんなが持てるようにしたと言っても過言ではありません。当時、車という物は特定の階級の人間しか乗れない物でした。当時の車には運転席がありませんでした。なぜなら、車というのは後部座席に乗る物でした。ジェット機もそうですよね。もう一つ彼が起こした革命があります。これは自動車業界ならぬ、工業界どころか現在の日本の飲食業界にも影響を与えています。その基本となる物が「ベルトコンベア方式(流れ作業)」です。彼が「大衆車」をつくろうとしたとき、いや自動車業界に参入しようとしたときに大きな問題が有りました。それは彼の雇える人は車にはそんなに詳しくありませんし、当時の車の作り方は数人の職人で一から十まで完成させるというやり方でした。それを克服したのが、流れ作業(ベルトコンベア方式)というものでした。彼はそれを食肉のたい対抗上でヒントを得たと言われています。つまり、工員達に高度な技術はいりません。担当の部品を組み立てればいいわけです。ただ、その作業は熾烈だったと言われています。これは有名な工員の妻の言葉です。「フォード様、失礼を承知で申し上げます。うちの主人はもはや機械の奴隷です。機械が動いている間 はトイレにも行けません。帰宅後はぐったりとして子供を抱きかかえてやることもできません。 このままでは家庭が崩壊してしまいます」(ある労働者の妻)そして、これを皮肉ったのが例のチャップリンのモダンタイムスだったのです。それに対するフォードのコメントがこれです。「あなたは幅の狭い定義に文明を当てはめようとしています。この進歩はもう止められません。 過剰生産といいますが、全世界が満足するまで続くでしょう。いや、満足してもそれは続くかも しれません」それで、ここでフォードの活用したものが科学的生産手法です。製品の単純化、作業の標準化、行程の標準化です。これは現代も工業界でも活用されているものですね。また、チェーンストア理論もそれの応用と言われています。そして、彼の思想を総括したものが「フォーディズム(フォード・イズム)」です。これは生産性の向上による利潤を労働者の収入に反映させるもの」でした。これは、ヨーロッパの資本家とは対照的な考え方でした。ヨーロッパの資本家は労働者から搾り取ると言う基本的な考え方でした。これが後にユダヤ人への迫害の元になりましたし、フォードが間接的にかかわったのは皮肉な話しです。ところで、フォードが労働者の収入を上げたのには、思想的な意味もありましたがそれ以外に差し迫った問題もありました。と言うのは当時のアメリカの農家の人達はヨーロッパ等に比べ裕福とまで行かないか分かりませんが、ある程度の収入はあったと言われています。農地開拓がしやすかったせいといわれています。ですから、ある程度の収入を与えないと雇えなかったわけです。それもあって余計生産効率の追求が進んだのかも知れません。そしてここで一つの構図が出来上がりました。生産性の向上→大量生産→利益の向上→労働者の収入UP→消費→利益の増大→大量生産→労働者の収入アップ→大量消費…というものです。大量生産、大量消費と言う現代の資本主義の象徴というものを生み出したのです。いわゆる「いいもの安く」です。ただし、これはある条件が前提です。それは人口の増大です。大量生産を支えるものは、大量の消費です。また、これは経営戦略的に言うと強者(市場占有率26.1%)を持っている企業だけしか本当は利益が出ないのですが、市場の増大がそれを隠していました。市場そのものが大きくなっているので、それがカバーできていたわけです。しかし、しかし、しかし、ここで大きな問題が起こってきました。日本の人口は2006年を境に減少しだしたのです。つまり、「フォーディズム」を支えていた「大量消費」が成り立たなくなっています。経済の土台そのものが変わってきたのです。そして、この「フォーディズム」から派生した「いいもの安く」のビジネスが成り立たなくなってきています。その一つの証拠が大手メーカーのほとんどが国内売上では利益を出せなくなっていると言うことです。ですから、彼らは海外に出て行くしか生き残る道が残っていないわけです。そのような視点でかわいそうなのだ、チェーンストア理論で進んでいる飲食業です。ちなみに居酒屋の倒産が過去最悪(最多)のニュースが入ってきました。倒産と言っても、民事再生です。つまり、大手の大型店舗を抱えている企業が倒産しているわけです。ある意味では、国内市場では大量生産・大量消費という「フォーディズム」が終焉を迎えていると言うことです。ある意味ではこれからは賢く、この時代の変化に対応できる素早い中小企業が生き残る時代の到来でもあると考えています。ただし、中小企業だから生き残れるのでなく、この市場の変化を見極め、いち早く対応し手行ける企業が生き残れる時代が来ているとも言えるわけです。最後に書きますが、「フォーディズム」そのものはここですべて書いてはいませんが、元々は利益の追求より社会貢献を使命とする崇高な思想であったことは間違いありません。明日が皆さんにとってよい日でありますように。
2011.02.25
閲覧総数 1295