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フェージャのロシア語雑記 -その10-
Федина всякая всячна о русском языке (No.10)
季節はもうすぐ春ですね。我が家では3月から4月にかけてイベントが目白押しで嬉しいやら忙しいやら。3月3日のひなまつり、8日の国際婦人デー、14日のホワイトデー(これは別にいらないと思うんだけど)20日の結婚記念日、4月12日の妻の誕生日。ゴールデンウィークを迎えるころにはお財布はきっとすっからかんです。ロシア語でいうと「ポケットに風がヒューヒュー吹いている」状態ですね。( ветер свистит в карманах у кого )
さて、今回はロシア語で書かれた文学作品に触れてみましょう。
★文学作品を読もう(その1)
以下は3年前に逝去したキルギスの作家チンギス・アイトマートフの1958年の小説『ジャミーリャ』« Джамиля »の一場面です。この作品はのどかな農村の風景と主人公のジャミーリャに対する恋心が抒情的に描かれている純愛小説で10代の方にぜひ読んでいただきたい名作です。邦訳は浅見昇吾訳『この星でいちばん美しい愛の物語』花風社 1999年、小笠原豊樹訳『絵の中の二人』(世界文学全集30 集英社 1965年)があります。個人的には後者の方が正確な訳だと思います。前者はちょっと意訳しすぎの感もありますが、平易な日本語になっているので中学生くらいでもすいすい読める感じです。
では原文を見ていきましょう。
Джамиля была под стать *1 матери - неутомимая, сноровистая, только вот характером *2 немного иная. Я горячо любил Джамилю. И она любила меня. Мы очень дружили, но не смели друг друга называть по имени. Будь *3 мы из разных семей, я бы, конечно, звал её Ждамиля. Но я называл её «Джене», как жену старшего брата, а она меня - «кичине бала» - маленьким мальчиком, хотя я вовсе не был маленьким, и разница *4 у нас в годах совсем невелика. Но так уж заведено *5 в аилах : невестки называют младших братьев мужа «кичине бала» или «мой кайни».
(日本語訳)
ジャミーリャは義母にそっくりだった。働き者でよく気がきいた。ただ性格だけは少し違っていた。僕はジャミーリャが大好きだった。ジャミーリャも僕を好きでいてくれた。ものすごく仲はよかったのだが互いを名前で呼ぶことは許されなかった。もし二人が同じ家族でなかったら、当然僕は彼女をジャミーリャと呼んでいただろう。しかし実際は僕は彼女を兄嫁のように「 義姉 さん」と呼んでいた。一方彼女は僕のことを「小さなボクちゃん」と呼んでいた。とはいっても僕は全然小さい子でもなかったし、二人の年齢だってそんなには違わなかった。だが村ではそういうしきたりだったのだ。嫁連中は夫の弟たちを「小さなボクちゃん」あるいは「私の 義弟 ちゃん」と呼ばねばならぬという・・・。
(文法・語法)
*1 под стать чему ~に似ている
*2 「~の点で・~に関して」という意味の造格。前置詞по+与格にも同様の用法がある。
Фудзияма - первая гора в Японии и по высоте и по красоте
ср.Елена лицом удивительно похожа на мать.
Вчера шёл град величиной с куриное яйцо.
*3 будь быть の二人称単数命令形で仮定を表す。 Если бы と同義。
ただし будь の場合、これを含む節の動詞は仮定法(条件法)ではなく直説法となる。
Если бы я был художником, я нарисовал бы этот красивый пейзаж на полотне.
ср. Будь я художником, я нарисовал бы этот красивый пейзаж на полотне.
*4 ~の違いという場合 разница чего と разница в чём の2パターンがあることに注意
*5 заведено ~という決まりになっている。同義語に принято がある。
(補足)
文中に« »で出てくるのはキルギス語の単語です。
Джене - жена старшего брата
кичине - маленький, бала - мальчик
кайни - младший брат в роду по мужу
■ 文学作品を外国語で読むというのは大変な根気が必要ですね。教科書用に抜粋されて解説もあるテキストならいいのですが、何の説明もない原文を辞書を片手に読んでいくのは本当に骨の折れる作業です。すでに邦訳が出ていれば助けにはなりますが、誤訳もないとは言えないので注意が必要です。辞書に載っていない単語もあれば、ネイティブスピーカーに聞いても分からない表現もあります。(実際私の妻はロシア人でそれなりの高等教育を受けていますがやはりすべての質問に満足のいく答えはなかなかもらえません。)しかしそれでも翻訳ではない、作家の魂がこもった文章をそのまま読んでいるという行為には非常な興奮をおぼえます。余談ですが、今回紹介した作品には随所にキルギス語の単語が出てきます。浮気性(語学の世界だけですよ)の私はすぐに色々な外国語に手をつけてしまうのですが、このキルギス語もなかなか魅力的です。チュルク諸語の一つで親戚にカザフ語やウズベク語、トルコ語などがあります。残念ながら日本語で書かれているものは絶版になっていて(飯沼英三著『キルギス語入門』ベスト社1996年)手元にあるのは英語で書かれたインディアナ大学出版の入門書だけ。音声教材がついていないのでなかなかやる気スイッチが入りませんが、いつかきちんと勉強しようと思っています。(っていう外国語が5つ6つあるんですけど・・・)ではまた!
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