☆f4♪LOVE アンクミの徒然日記

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愛すればこそ






零に手を引かれ 部屋の中へ 「ごめん イスないんだ ベットに座って」
キラの前の床に座る零 いつもの零じゃない 彼から感じられる悲しみはなんだんだろうとキラは思った

「樫野君何かあったの? いつもの樫野君じゃないみたい」
じっと黙っている零 良く冗談を言って私を笑わせてくれたのに


突然来たキラに少し戸惑う零 今の俺の顔をキラが見たら きっと心配するだろう でも見えないはずなのに いつもと違うと言う そんなに俺は 酷い姿なんだろうか
一週間ずっと母の事を考えていた 何度思い出そうとしても
思い出すのはいつもの光景ばかり 父の言う通り 俺は自分で記憶を閉じ込めてしまったのだろうか それとも父は自分の都合のいいように 俺に話したのだろうか

「キラ 君の両親は君の事 愛してくれてるかい??」
時折聞こえる車の音 部屋の中はシ~ンと静まり返っている
長い沈黙の後 零がポツリとそう聞いてきた

「樫野君 やっぱり何かあったのね お父様が倒れたって 達也君から聞いたけど お父様に何かあったの?」

心配そうに零を見るキラ 「ん~~ん 親父は大丈夫だよ」
「そう 良かったわね」大丈夫と言ったけど まだ何か心配事がある様子の零

「キラのお母さんって どんな人?優しいかい」
「え~~とっても優しいわよ 厳しい時もあるけど でも親だから当たり前かもね 小さい時は私あまり体が丈夫じゃなかったの
良く熱出していたけど 一晩中起きて私を看病してくれたわ 夜中に私をおぶって病院に行った事も 何度かあった だから母には凄く感謝してる 早くピアニストになって母を助けたいの 私の為に随分苦労させちゃったから」

「そうか キラはお母さんに凄く愛されてるんだね」
又だ 彼がとき時奏でる 悲しみの旋律 

「親だから 自分の子供を愛するのは 当たり前だよね 樫野君のご両親だって 同じよ」

親なら 自分子供を愛するのが当たり前か!でも俺は違う
母親に愛されていると思っていたのに 本当は違った
「キラ もし自分が親から愛されてなかったとしたら それでも親を愛するかい 憎んだりしないかい?」

彼は何を悲しんでいるのだろう ベットから降り彼の側に座ると
手を伸ばし 彼の顔に触れると キラの手に冷たいものが
泣いているの どうして こんな彼は初めてだった

零が慌てて キラの手を取る 泣いている事をキラに気づかれたくない

「樫野君 何があったのか話してくれる 私じゃ力になれない
貴方が泣くと私も 悲しくなるわ」
彼の腕に触れながら 彼の手を握ると 彼の涙がキラの手に何度も落ちて来る 

父から聞かされた零の過去 一番愛して欲しい人から 拒絶された零
「キラ 俺どうしたらいい 親父からその話を聞いても 俺 母さんを憎めないよ 憎めたらきっといいのに 母さんに会いたいよ 会って本当のこと聞きたい 俺を愛してるかいって 愛して欲しいって」

「いいのよ 泣いて ずっと我慢してきたんでしょ」
零の目からは止めどなく涙が溢れていた 

「樫野君 お母様は貴方の事 絶対愛してるはずよ だって貴方を連れて行かなかったでしょ 大切な貴方をお父様に預けて行ったじゃない」

まるで子供のように泣きじゃくる零 抱きしめた彼の身体が震えている 幼い彼を残して行く母親の気持ちをキラは解る様な気がする どんなに辛かっただろうに

「樫野君 お母様は貴方を本当に愛していたと思うの きっと貴方を連れて行きたかったとは思うけど そうしなかったのは愛していたから 出来なかったのよ だからお母様を憎んじゃいけないわ」

夕闇が迫る部屋に零の押し殺した泣き声が 静かに響く

暗い闇の中に居た零 今一すじの光が差す それがキラなのかもしれない

長い~長い~闇の中を さ迷い歩く路の先にさす光 
今 その光を目指して 零は歩き出した




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