メキシカン・アメリカンな暮らし

メキシカン・アメリカンな暮らし

呼び捨てかMamaか




結婚5年目の今更ながら、お姑ごんのことを「お義母さん」ではなく、名前で呼べば良かったと少し後悔している。
先日、『Hey!レイモンド(Everybody loves Raymond)』を観ながらふと思ったことだ。

アメリカでは、地域や育ちによるとはいえ、嫁や婿が姑のことを、Mrs.○○○(ミセス・○○○(姓))と呼ぶ人もいれば、名指しで呼ぶ人もいるという。
勿論、中にはMomやMotherなどと、自分の母親のごとく呼んだりする人もいるが、私もその一人だ。

結婚してばかりの頃は、お姑ごんやお舅ごんをどう呼ぼうかなんて迷い、用がある時は彼らの肩をとんとんと叩いて注意を引いていた。
しかし、それじゃあ不便だろうと思った私の夫は、『僕が呼ぶようにMamaって呼べばいい』と言い、私はそれに素直に従った。
厳密に言えば、“従った”というより、日本では「お義母さん」と呼ばなければいけないように、アメリカではMomやMotherなどと呼ぶのが当たり前だと勝手に思ってしまっていたのである。


私がお姑ごんをMamaと呼び始めた時は、お姑ごんが私を拒否している時期でもあったせいか、私がMamaと呼ぶ度に、

『貴方のお母さんじゃないわよ!』

といちいち言い返していたのだが、それでも、Mama、Mamaと言い続ける私に、
無駄な努力はしないと諦めたのか、お姑ごんと私の間でも、私はお姑ごんをMamaと呼ぶ、ということに落ち着き、今に至るという訳だ。


そしてMamaと呼び続けて3年後、、、
幸か不幸か、「アメリカではお姑ごんを名で呼んでも差し支えない」
ということを初めて知ることになったのである。


ある日、隣に住む知人が彼女自身のお姑ごんと口論をしたらしく、私の家へ駆け込んできたのだが、その彼女のお姑ごんまでやってきたから吃驚したことがある。

それから二人は、『マリー(仮名)、ここは私の家ですから貴方のルールは適用されないんです』やら、『デヴラ(仮名)、私の言い分も聞いて頂戴よ。』
などと口論を続け始めたのだが、その時のやりとりを聞いているだけでも二人の位置がほぼ同等であることに気付いたのだ。
同等と言うと語弊があるかもしれないが、私が日本で見てきた姑嫁の会話でなかったというのは確かである。
例えば、嫁が『ここは私の家ですから貴方のルールは適用されないんです。』などと姑に言うことにも驚いたのだが、私の母が私の祖母(つまりは私の母から見ると、姑)にこんな風に自分を主張するという光景は一度も見たことがない。
もし主張したとしても、「姑に盾突く嫁」としてしかみなされないだろう。
もしかしたら、私の家族が「古い」だけなのかもしれないが、少なくとも、デヴラはマリーを夫の母親として尊重しているし、反対にマリーはデヴラを「自分の嫁」というよりは「自分の息子の奥さん」として尊重してあっているように見えたのである。

日本でお姑ごんを呼び捨てにしようものなら、早速家族会議が開かれるくらい深刻な問題になりそうだが、まずアメリカでは、家柄を気にする家庭以外は、結婚イコール嫁入りまたは家に入るという観念は日本に比べて断然薄い気がするし、まして、家族の共有物的存在=「嫁」などという表現は余り使われないような気もする。

それに、Daughter-in-law(結婚がきっかけでつながりを持つ娘。すなわち息子の妻。)という言葉は存在しても、大抵は、あくまで「息子の奥さん」として位置づけられることが多い気がするのだ。


また、自論だが、MomやMotherなどと呼びながら自己主張するのと、名で呼びつつ自己主張するのとでは、幾分違いが出るのではないかという思いも多少はある。

例えばMomやMotherなどと呼ぶと、お姑ごんとしては、自然に母性心理が動き、
母親としての態度が強く出てしまうのではないだろうか。
そこで、いざDaughter-in-lawが反対の意見を言うと、『あら、この子親に反抗してるわ。』となって問題が余計大きくなるような気がしてならない。

親になると、子どもには自分の言うことを聞いて欲しいし、自分がこれこそ最良と信じるルールには従って欲しいという願いが出てくるというが、十分に成長した上で、突然家族の一員になったDaughter-in-lawには彼女なりのやり方が既に備わっているということも念頭に置かなければ、衝突の可能性は大だと思うのである。


さて、私の「お姑ごんを名で呼ぶ」作戦はどうなったかと言うと、たった1度だけの挑戦に終わってしまったのだ。
私がお姑ごんの名前を呼んだ時は、さすがにお姑ごんも何事か?とかなり驚いてしまったが、
私自身も『冗談です・・・。はい。』と交わしてしまったのである。
お姑ごんは今までMamaと呼び慣れ続けてきたからそれで驚いたのだと思うが、
いや、、、それにしても、私はなんて小心者なんだろうか、、、。





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