
大井川の段
深雪はこけつまろびつ大井川の岸までやってくる。
川越人足に尋ねると、駒沢たち一行はすでに川を渡り、今は増水のために川止めにになっていると。
川止めとしって泣き崩れる深雪、「その人に会わせてと願って、艱難辛苦もいとわずに尋ね歩いてようやくに夫に巡り合ったと思ったらこの川止め。私はどこまで運が悪いのだろう。もう2度とあうこともできないのだろう、それならこの大井川に飛び込んで死んでしまおう。」
(夫とめぐりあった喜びもつかぬ間、絶望の淵に突き落とされる深雪の嘆きの深さ)
両手で石をかき集め袂にいれようとする深雪。
そこへ、戎屋徳右衛門と秋月家の下男関助がかけつけてくる。深雪を止める二人。
「お嬢様 関助が参りました、必ず阿曽次郎様にお添わせしますから、短気は起こさず落ち着いてください。」
泣き崩れる深雪
関助「私は浅香さんと手分けして、お嬢様を探しておりました。しばらく前浅香さんが私の夢枕に立って『お嬢さんは嶋田宿にいるから早く助けに来て』とおっしゃいました。それで私は嶋田宿まで急いでやってきたのです。浅香さんはどうしておられるのです。」
深雪「先月私は浅香に巡り合い、家に帰ろうといわれたところを悪者が私をさらおうとしたので、浅香は私を守るために戦い、深手をおって、なくなりました。その時『嶋田宿の古部三郎兵衛と言う人が私の父だから、この守り刀をもって秋月弓乃介の娘だと言って訪ねなさい。』と言い残しました。」
徳右衛門がその刀をちょっと見せてくれというので、渡す深雪。
徳右衛門はその短刀を自分の腹につきたてる。びっくりする関助と深雪。
徳右衛門「さぞや驚かれたこととは思いますが、古部三郎兵衛とは私のことです。私はその昔深雪さまのおじい様秋月兵部様にお仕えしたものです。同じ屋敷の女中と深い仲になり不義密通と御手打ちになるところを、弓乃介様のお情けで、そっと逃がしていただきました。そして、ここまで流れ着き暮らして女の子を儲けましたが、妻が病死し、男手ひとつでは育てがたく、この守り刀をつけて親戚に養女に出しました。その子が秋月様に奉公してお嬢様を助けたのも何かの因縁でございましょう。駒沢様があなたに渡された眼薬は甲子の年生まれの男の血とともに服用すれば、病がなおるとか。私はまさに甲子の年生まれ、どうか私の血にて薬をお飲みください。」
関助がもっている入れ物に血を受けて深雪にのませると不思議やその目が開いてものが見えるようになった。
それを見届けて徳右衛門は、これで満足したもはや思い残すことはないと死んでいくのだった。
(割愛されたお話の結末)
深雪の目が開いたというのはいいけれど、これではなんだかすっきりしないと言う人のために、お話の結末を。
関助と深雪は衣装を整え大坂にある駒沢の屋敷までたどりつく。
そこに居合わせたのは敵方である大友家の残党をやっつけ、国元へ帰る途中の主君大内義興だった。
もともと縁談まであった駒沢と深雪のことであるからここで祝言をあげれば良いと、義興は祝言をあげさせる。
そこへ、先代の駒沢了庵の息子が登場し、岩代が大友の残党と内通していた証拠をみせたので、殿に同行していた岩代はついにとらえられる。
以前に深雪をさらった山賊というのが大友の残党であり、軍資金稼ぎに山賊をやっていたのだった。また、深雪を逃がしてくれた山賊の手下というのが潜入捜査をしていた熊沢の息子だったのだ。
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