
関取千両幟(せきとりせんりょうのぼり)
豆知識
この物語は九段からなる長編だが、今はもっぱらこの部分だけが上演されている。
前提
関取 猪名川 を贔屓にしてくれる鶴屋の若旦那礼三郎は遊女錦木に惚れていて、身請けしようとしている。しかし身請けの金が足りずに礼三郎と錦木は心中するしかないと思いつめている。そこで猪名川は自分が金策するからと安心させる。礼三郎の親が息子に内緒で出してくれた金など、色々集めてもあと200両が足りないので猪名川は困っている。
しかも、同じように錦木に惚れている侍九平太が礼三郎に何かと嫌がらせをするので、猪名川は懲らしめのために殴ったこともあった。
猪名川内より相撲場の段
関取猪名川は仲間の鉄ヶ嶽と一緒に家に帰ってくる。
家では女房おとわがもうすぐ取り組みもあるので、ちょっとしたご飯でもと用意を始めた。
鉄ヶ嶽は戦績が良くなかったので、今日勝たないと、池田藩のお抱え力士の地位を失うかもしれないと焦っている。
そこへ、遊女屋の使いがやってきて「錦木の身請けの金あと200両を今日中に支払ってもらえないと、別口で身請けの話があるので、錦木はそちらに落籍せてもらいますよ。」という。
「その別口の客というのは、私のことだ。」と鉄ヶ嶽。
これは鉄ヶ嶽が実際の身請けをするのではなく、鉄ヶ嶽の贔屓の九平太の意向だと悟る猪名川であった(昔の身分のある人、金持ちは表に名前が出ると差しさわりがあるので、代理人の名前で身請けなどをした)
「こちらもどうしても錦木を身請けしたい事情があるので、そちらの話はあきらめてもらうわけにはいかないか。私はどうなってもかまわないが。」と猪名川 。
それならば、九平太が殴られた意趣返しをしても文句はあるまいと、猪名川を打ちすえる鉄ヶ嶽。くやしいが、ぐっとこらえる猪名川だった。
今度は相撲の興行主の使いがやってきて、今日の取り組みの番付だと書付を渡す。これを見ると猪名川と鉄ヶ嶽が対戦することになっていた。
鉄ヶ嶽は「魚心あれば水心というからな。身請けの話はお前の心次第」と意味深な言葉を残して去っていく。
これは勝ちを譲ってくれということだろう。礼三郎に約束した手前なんとかしないといけないが、あんなやつに勝ちを譲るのはくやしいが・・・と様々に悩んだ猪名川だったが、ここは勝ちを譲るしかあるまいと覚悟を決めるのだった。
女房おとわがあらわれ、「お前さんひどく顔色がわるいけど。何か悩み事でもあるの。」
「礼三郎さんに頼まれた身請けの金ができなくてな。」
「礼三郎さんのお父さんに相談してみてはどうかしら。」
「いやあちらのご主人は、身請け話にはひどいご立腹。そんな話をもっていったら礼三郎さんはこっぴどく叱られてしまうだろう。下手をすると二人で心中しかねない。あたら二人の命を散らせてはならないと、こちらも気をもんでいるのだ。」
おとわは、鉄ヶ嶽との話を聞いており、「まさか、お金を作るために勝ちを譲るとか考えてないでしょうね。」
「そんなことはない、必ず勝ってくる。」という言葉も力なかった。
時間が来たので、相撲場に出かけていく猪名川。
それを見送って、おとわもそそくさと出かけていく。
ここから相撲場になる。
いよいよ取り組みの順番がきて、土俵へ上る二人。
猪名川はやはり力が入らずおされぎみ。あわやというとき場外から「猪名川へご贔屓より、賞金200両進上」と声がかかる。その声に力を得て、無事猪名川は鉄ヶ嶽を倒すのであった。
試合が終わって、帰りかける猪名川に遊女屋の北野屋の主人が声をかける。
「今日はいい試合でしたな。最初は危なかったけど良く盛り返しましたな。そうそう、猪名川関に200両差し上げたご贔屓がこの駕籠にのっておられますよ。ご挨拶していかれてはいかがです。」
駕籠のタレをあげるとそこに乗っているのは女房おとわであった 。
「あなたが、200両の金の工面に難儀をしておられるとおとわさんが、わが身を売ってお金を作られたのです。」
駕籠にのって去っていくおとわを、いつまでも見送る猪名川であった。
(その後の話)
九平太は悪事が露見して捕えられ、鉄ヶ嶽は何者かに切り殺され。悪党は滅んで
礼三郎と錦木は結ばれ、おとわも礼三郎の親が金を出して自由の身になりハッピーエンドとなる。
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