不破雷導

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Apr 1, 2005
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テーマ: 小説(12)
カテゴリ: 小説
 私が最初に生まれたのは、20世紀も終わりに近づいた1999年の7月のことだった。

 私は死が恐かった。私は死にたくなかった。

 死とは何か、生きるとは何か、私とは何か、死なない方法は? 私は考えた。

 しかし、見つかった答えは、「不老不死は不可能」というものだった。私の体を構成する細胞には寿命があり、それを延ばすことはできても、いつかは死んでしまう。

 21世紀の初頭に、ある事業で巨万の富を得た私には、買えないものはなかった。不老不死の秘薬を除いて。

 クローン技術を人間にも適用する技術が確立したのも21世紀初頭のことだった。しかし、いくら私のクローンを造っても、一卵性双生児と同じように、同じ遺伝子を持っているというだけで、それは私ではない。

 私とは何か。私が私として生きて来た、私が私であるという「記憶」である。

 理論的に可能とされていたワープ航法は、否定された。しかし、人間は、他の銀河への航海をあきらめなかった。銀河間航行を行うために、冷凍睡眠と蘇生技術が発達した。しかしそれは完全ではなかった。冷凍睡眠から蘇生したとき、どうしても記憶が欠落してしまうのだ。しかし、人間の飽くなき挑戦は、ついに記憶のメカニズムを解明し、人間の頭から記憶を取り出し、再び植え付ける技術を生み出した。宇宙へ旅立つ人々は、冷凍睡眠に入る前に記憶をコピーし、100万年もの長い航海を終え、再び目覚めるとき、その記憶を植え付け戻す。

 肉体のコピーと記憶のコピー。この二つを組み合わせれば、不死身ということになるのではないのか?



 私には今、503年間にわたる、私が生きてきた記憶がある。確かに、私には、死んだ記憶がない。しかし、記憶にないだけで、事実としては、今までに6人の私が死んだはずである。

 私のやり方は間違っていたのか? 相変わらず私は死を恐れ、死んだという記憶がないことに満足しようとしている。


(1999年6月)





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Last updated  Apr 1, 2005 09:21:32 PM
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