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さよなら、愛しき人よ。別れは、突然やって来た。今日は、泣きましょう。哀しくて、哀しくて、何がこんなに哀しいのかわからないぐらい、哀しくて。どうしてその想いがわからないのか。うわべだけ見れば、軽過ぎるその想い。『違う』という言葉だけでは、納得なんかできない。一度拒否したそのときから、その想いはもう二度と帰らない。今日は、泣きましょう。愛しくて、愛しくて、胸が粉粉に砕け散ってしまうぐらい、愛しくて。どうしてこの想いが届かないのか。軽く生きるには、重過ぎるこの想い。『好きだ』という言葉だけでは、何も伝えられない。直接幸せにできないなら、この想いはもうどこにも行けない。すれ違う、想いと想い。その想いが、違っていることは、最初からわかっていたはず。この想いが、結べないことは、最初からわかっていたこと。なのにどうしようもなく、愛してしまった。幸せと感じたことが、ひとつでもあったなら、それでいい。幸せと感じた瞬間が、一瞬でもあったなら、それでいい。傷付けてばかり、いたけれど。もう何も帰って来ない。それでいい。もう何も届けられない。それがいい。拙い言葉の羅列も、どこかにさまようだけ。もうこれ以上、傷付けてしまわぬように。幸せな未来が、見られないなら。残された写真の笑顔も、燃やしてしまおう。さよなら、愛しき人よ。
Jun 29, 2010
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いつも思うことは 答のない疑問 誰に聞けばいいのか 誰が知っているのか だけど思うことは 限りない好奇心 宇宙の果ても 時の彼方も この目で見たい 君とここにいる奇蹟 涸れずに涌き出る幸せ いつか消えることが 怖いだけ 僕達は何処から来て 何処へ行くのだろう そんなことはわかっている 今ここにいるのが僕達のすべて いつも一緒にいたい 限られた時間 僕が僕であり 君が君であること 見える世界がすべて 僕がここにいる奇蹟 時間も場所も変えられない いつか消えることが 怖いだけ 僕達は何処から来て 何処へ行くのだろう そんなことはわかっている 今ここにいるのが僕達のすべて 君がここにいる奇蹟 止まらない君への想い いつか消えることが 怖いだけ 僕達は何処から来て 何処へ行くのだろう そんなことはわかっている 今ここにいるのが僕達のすべて
May 11, 2006
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愛する気持ちは何処から来るのだろう 心の奥から溢れるこの想い どうすれば君に届くのだろう(2005年5月)
May 14, 2005
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大きくなったね いつものおなじみの言葉にも、うんと、明るく答える いい子に育ったな。親ばかと知りながら、そう思う 久し振りに見る母は、老けて小さく見えた ありがとう 子を持つ立場となって、改めて母の偉大さを思う 惜しみなく注がれた無償の愛 いくら感謝しても、感謝し切れない でもあなたは、そんなことを期待していないだろう そのすべては、あなたを見習って、あなたの孫に伝えよう これからはお前の時代だ まだ幼いお前だが、これからの世界はお前が創っていくのだ 5月の空に鯉のぼり 薫風に乗って、いらかの波を泳ぎきれ(2005年5月)
May 11, 2005
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どうしたってきみのことを忘れることなんてできるはずもないじゃないかどうしたってきみのことを忘れることなんてできるはずもない この怒りをこの悲しみをこのきみへの愛をどこにぶつければいい? この怒りをこの悲しみをこのきみへの愛をどこにぶつければいい? 涙も声も涸れ果ててもまだ泣いて叫んだ 土砂降りの雨も荒海の波も何も流してはくれないどうしたってきみのことを想わずに過ごすなんてできるはずもないじゃないかどうしたってきみのことを想わずに過ごすなんてできるはずもない 写真を燃やしてもメールを消してもきみは消えない きみにもらったカップきみにもらったブレスレットきみを描いた絵も この目にこの耳にこの唇にこの僕の中に きみの瞳がきみの声がきみの記憶がまだ生きている この怒りをこの悲しみをこのきみへの想いをどこに捨てればいい? この怒りをこの悲しみをこのきみへの想いをどこに捨てればいい?あの空の青さは何も変わっていないこの空の星は何も変わっていないあの海の青さは何も変わっていないこの海の砂は何も変わっていない 言葉で心が埋められるのなら幾万言の言葉を尽くそう 涙で痛みが流せるのなら幾億粒の涙を流そう雲はどこへ行く? 風はどこへ行く? 波はどこへ行く? 僕はここにいるきみはどこにいる? きみはどこにいる? きみはどこにいる? きみは…… きみにもう一度触れたい……(2005年4月)
May 3, 2005
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キミの夢を見た 楽しい夢だった 夢の中では、理想的なキミ、夢の中では、理想的なボク 声に出して言わなくても、キミはわかってくれた 幸せな気分で目覚めた朝 何故か涙がこぼれていた 今、キミが朝なら、肌に感じるだろう 暖かい太陽の光を キミに降り注ぐその光は、大いなる光の何兆分の1だろう この瞬間も、ボクらのこの地球の、半分を照らしているんだ ボクの愛は、キミひとりでさえも、照らすことはできなかった キミの夢を見た もう会うこともできないキミだけど 夢の中ではその微笑みをボクに見せてくれた キミに言えなかった言葉 心で何度も繰り返した言葉 キミには届かなかった言葉 今も出口は見つからない 今、キミが夜なら、空を見上げてごらん 見上げる夜空に、瞬く星の光は、遠い遠い、過去からの光 何億年も昔の光が、今キミの目に届いているだろう 遠い星にも、キミとボクがいるだろうか 光の中に、キミとボクが見えるだろうか キミを映した光も、何億年の未来に、届くだろうか 好きだった好きだった好きだった 愛してた愛してた愛してた 好きだった好きだった好きだった 愛してる愛してる愛してる 今はもう永遠よりも遠いキミには届かない 限りない悔悟を超えて すべてを赦し、すべてを抱き締め、すべてを愛せる人になりたいな(2005年2月)
May 2, 2005
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朝、目が覚めると、カエルになっていた。 驚いた。夢かと思い、頬をつねろうとしたが、なんだかぬるぬるして、うまくいかない。 寝直そうかとも思ったが、なんだか興奮して、眠れない。 どうやら現実のようだ。私はカエルになってしまった。 しかし、これくらいのことで、会社を休む訳にはいかない。今日は、大事なプレゼンがある。 体型が変わってしまったので、スーツが合わないが、身体はぶよぶよしているので、何とか押し込むことができた。 妻は、「顔色が悪いわよ。目も飛び出してるし。どこか具合が悪いんじゃないの?」と、心配してくれたが、体調は、すこぶるいい。 しかし、いつもの朝食には、食欲が湧かず、2~3日前から部屋の中に紛れ込んでいたハエを、長い舌で見事にキャッチして飲み込んでしまったときには、自分でも驚いたが、子ども達には大ウケであった。 足がやけにでかくなっていたので、さすがに靴は、履けなかった。しかしなんとなく、裸足の方が気持ちいいので、裸足で出かけた。 2本足で歩くのは、なんだかバランスが取り難い。しゃがんで、ジャンプしてみたら、自分でも驚くほどのジャンプ力。こっちの方が、楽だし、ずっと速く移動できる。 でも、この体勢だと、さすがにズボンが破れそうになる。大きいサイズのを買わなきゃ。 いつものように、満員電車にも乗ったが、人は他人のことなど見ていないものだ。 たとえ、私の姿を見たとしても、変な人(カエルだが)とは、関わり合いになりたくないのか、見て見ぬふりをする。 満員電車の中に、カエルがいるというのに、騒ぐこともなく、普段とまったく変わらなかった。 会社に着いても、それほど事情は、変わらない。事務のユリちゃんだけが、ちょっと心配してくれた。 プレゼンも、クライアントのお偉いさんが、最初は「カエルの着ぐるみを着て来るとは何事だ!」と大層御立腹だったが、着ぐるみでないとわかると、急に好意を持ってくれて、大成功に終わった。 打ち上げの飲み会では、飲み屋のお姉ちゃんに大モテだった。 カラオケでは、童謡『かえるの合唱』から、アニメソングの『ど根性ガエル』、ゆずの『かえるのご帰宅』まで、カエルの歌はもちろん、CHEMISTRYの『アシタへカエル』、BOOWYの『季節が君だけを変える』、スピッツの『月に帰る』、五木ひろしの『どこへ帰る』、オフコースの『さわやかな朝をむかえるために』といった、曲名に『かえる』が付いている歌から、松村和子の『帰ってこいよ』みたいに、歌詞の中に『かえる』が入っている歌まで、とにかく『かえる』大特集だった。 酔っ払って、千鳥足で、いや、カエル足で、家に帰る。 眠りにつきながら、思った。明日朝目覚めたら、人間に戻っているのだろうか? それともカエルのままなのだろうか? でも、カエルのままでも、何も問題ないなあ……。(2004年12月)
May 1, 2005
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私は生まれた 幾つもの命を引き継いで いつの頃からかわからないけれど 遥かな時の彼方から 最初に生まれた命から きっと数えきれないほどの命を引き継いで 私は生まれた 何故か今このとき今ここで そして お前が生まれた 幾つもの命を引き継いで きっと数えきれないほどの命に 私の命も引き継いで お前が生まれた 何故か今このとき今ここで 今引き継ごう 新たに生まれ出でしその命に 私が受け継いだ 数えきれないほどの命の歴史を 今引き継ごう 新たに生まれ出でしその命に 誰の為にでもなくただ自分の為に お前を護りたいと切に願う 私の命の証を 未来に伝えるのはお前だけ 滅びゆくこの身体に最後の役割を わが生命の使命を知れば私は死ぬことができるだろう 海の一滴(ひとしずく)だった古(いにしえ)のときから 宇宙の一塵となる遥かな未来まで 時を越えるものは命の連鎖(2004年4月)
Apr 30, 2005
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縁側に寝転んで庭先を眺める 咲き誇るコスモスはあなたの好きだった花 日差しの中に居ても 少し寒くなりました 風に揺れる木の葉 向こうに見える山山は紅く染まりました お母さん見えますか 庭で小さな池を覗いているのはあなたの孫です あなたの胸に抱いて欲しかった あなたが私に注いでくれた愛は私もこの子に注げるでしょうか(2003年11月)
Apr 29, 2005
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ボクは、サラリーマン。 今日も、満員電車で通勤だ。誰かが『痛勤』と書いていたが、全くその通りだね。 ああ、電車が来た。相変わらずギュウギュウ詰めだなあ……。ふぅ……。 さ、乗り込め乗り込め。ん? いつもより苦しくないね。なんか楽だね。みんな薄着になってきたからかな。 これなら文庫本が読めそうだ。うん。 あれ? この本、昨日も読んでいたような気がするなあ……。デジャブーか? そういや今日は、何日だっけ? 時計時計……。 ん? 9日? 11時28分? なんだ、止まってるじゃん、この時計。 あれ? 9日じゃないよな、今日は。何日だっけ? あ、向こうに新聞を読んでる人がいるなぁ。日付、見えないかな。ん~、ん~、ん? んん? 4月……11日、金曜日。 あれ? もう金曜日か? おかしいなあ、いつのまに金曜日になったんだろう? 時計が止まったのは、9日。水曜日か。 水曜日といえば、新人歓迎会をした日だ。楽しかったなあ……。今年入ってきた女の子、かわいいし、性格いいし。なんだかノリノリだったよな。 毎日あの子に会えるなんて、会社に行くのが楽しくなっちゃうよね。 でも、昨日も会社に行ったはずなのに、全然記憶がないなあ……。 9日は、1次会が終わって、2次会に行って、10時を過ぎて、さすがに女の子は帰さなきゃダメだってんで、女性陣が帰って、その後男ばかりでまた飲んで、終電に間に合わないってんで店を出て、結局終電に間に合わなくて、途中の駅までの電車に乗って、駅員に起こされて、駅を出て、タクシーがいなくて、歩きながらタクシーをつかまえようと思って、国道に出て、……! そうだ、歩きながらうとっとして、歩道の端を踏み外して、歩道から転げ落ちて、目が覚めたらそこにダンプが走って来て! ----- 読者のみなさん、今朝、あなたが乗った通勤電車にも、自分が死んだことにまだ気付いていない、サラリーマン風の男が、乗っていたかも知れませんね。あなたの隣に、影の薄い人が、立ってませんでしたか?(2003年4月)
Apr 28, 2005
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何が君の幸せ? 何をして喜ぶ? わからないまま終わった 小さな命 夢を持つこともなく 泣いてばかりで 痛かったろう 苦しかったろう 何もできなかった 何もしてやれなかった 生まれてすぐに 逝ってしまった君…… 悲しまないで そこにいた時間 短かったけれど 幸せだったよ そのお腹の中で 包み込み 育んでくれた そのときから 愛してくれた 慈しんでくれた 喜んでくれた 大事にしてくれた 不安の中で 絶望の中で 痛みに耐え 産んでくれた 頭を撫で 頬ずりをし キスをして 抱きしめてくれた 手を握り じっと見つめて 心配して 涙してくれた その一つひとつが そのすべてが 幸せだった 喜びだった だからもう 悲しまないで たくさんたくさん 幸せを感じたよ……(2002年10月)
Apr 27, 2005
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炎天下、蝉の声と、肌がじりじり焼ける音を聞きながら、前を歩く男が煙草にライターで火を点けるのを見て、私はふと、マッチって、どうしてマッチと云うのだろう? と思った。 マッチ。漢字では、確か燐寸と書く。 近藤真彦に関係があるのだろうか? それとも、ビタミン・す~に関係があるのだろうか? ん? ひょっとして、ビタミン・す~って、ビビアン・スーを捩(もじ)っていたのだろうか? もしそうだったとしたら、ちょっと遠いし、これでは誰も気付かないだろう。失敗だ。 マッチ。英語では、何と云うのだろう? much。多い。たくさんの。 そうか、箱の中に沢山入っているから、マッチと云うのか。でも、muchは不可算名詞に使う言葉だ。マッチは1本2本と、数えられるぞ。お金も1円2円と、いや、この場合、1ドル2ドルの方が適切か。お金も1ドル2ドルと数えられるけど、ハウマッチだ。何故だろう? わからない。 matchという単語もある。試合。競技。 成る程。試合や競技でその勝敗を賭けるとき、現金の代わりにマッチ棒を使うから、マッチと云うのか。それとも、マッチ棒の頭と箱の側面の薬品を擦り合わせるのを、……いや、これは無理のあるこじつけだ。 マッチプレー。マッチポイント。マッチング。こまっちんぐマチコ先生。いや、それは、まいっちんぐだ。 そうだ、『マッチ』と云う英語を調べるのではなく、マッチを英語で何と云うのかを調べるのだった。 match。マッチ。マァ~ッチ! マッチはmatchだ。試合のmatchと同じ綴りだった。 そうか! マッチのことを、英語でmatchと云うから、マッチのことは、マッチと云うんだ。 マッチ。マッチ! マッチ? ハウマッチ。マァ~ッチ!! まいっちんぐ、マッチッチッチッヽヽ……。 その頃私は、熱く熱せられたアスファルトの上に倒れ臥していた。耳の穴から、どろどろに蕩(とろ)けた脳みそを、とろとろと流しながら……。(2002年8月)
Apr 26, 2005
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暑い夏 キミといた東京の夏 アスファルトの路、コンクリートの壁、そそり立つ摩天楼 高層ビルの地上200メートルで祝ったキミの誕生日 花火がはじけるカクテルに、喜ぶキミが好きだった 「このアトのコト、考えてる?」……考えてなかった 壁のタイル、流れる人波、あふれる人工の光 地下街の階段で、初めてキミとキスをした みんなが見ている? 見ていない? そんなこと、関係なかった 花火大会、浴衣のキミ キミの水着姿はどこにもなかった 「無口なあなたが好きよ」ヨクキクコトバ でも、言葉にしないと想いは伝わらなかった 愛が見えない、どれが愛、どんな愛、「それがあなたの愛?」 そうさ僕の愛は見えない、聞こえない、味もニオイもなかった いつ電話してもいないキミ 僕は何人の中の1人だった? 大きなスクリーンに映し出された僕からキミへのメッセージ キミはそれを見ることもなく、アスファルトのシミとなって消えた…… 暑い夏 キミといた東京の夏 今年もこのマチに夏が来た 僕は今でもこのマチに生きている(2002年8月)
Apr 25, 2005
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弱き心に宿るもの それは闇 不安 恐怖 そこから悲しみが生まれる 狭き心に宿るもの それは氷 猜疑 嫉妬 そこから裏切りが生まれる 熱き心に宿るもの それは炎 情熱 挑戦 そこから冒険が始まる 広き心に宿るもの それは愛 誠実 寛容 そこから安らぎが生まれる 強き心に宿るもの それは光 信頼 希望 そこから優しさが生まれる 我が君は如何なる心をお持ちだろうか(2002年5月)
Apr 24, 2005
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優しくなりたい優しくなりたい 私は優しい人になりたい でもそれは無理 優しくなるにはまず強くなければならないから 私は強い人ではないから 強くなりたい強くなりたい 私は強い人になりたい でもそれは無理 強くなるには人の気持ちがわからなければならないから 私には人の気持ちがわからないから 独りぼっちの私 強くない私 優しくない私 人の気持ちをわかるには 人の気持ちをわかるには 人の気持ちをわかりたい人の気持ちをわかりたい 私は人の気持ちのわかる人になりたい でもそれは無理 人の気持ちをわかるには優しくなければならないから 私は優しい人ではないから 優しくない私 強くない私 独りぼっちの私 落ちていく落ちていく 暗闇の底に落ちていく ぐるぐる回る 終わりのない螺旋階段 いやだめだ そんなネガティブ・スパイラルに落ち込んではだめだ 少しずつ、人の気持ちがわかるようになればいい 少しずつ、強くなればいい 少しずつ、優しくなればいい 私は独り でも そこから始めよう、ポジティブ・ステップ(2002年2月)
Apr 23, 2005
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打ちひしがれて、帰る道 こんな気分は、雪より雨がいい 肩に頭に丸めた背中に落ちるのは だけど白い、雪、雪、雪 どんなに強く愛していても うまく愛せるとは限らない 不器用だなんてでもそれは ただの言い訳 行き場のなくなった僕の愛は 雨に流してしまいたい 肩に頭に丸めた背中に落ちるのは だけど白い、雪、雪、雪 雨やこんこ、雨やこんこ 鉛色の空から、落ちて来るのは白い雪 行き場のなくなった僕の愛を 雪に封じ込めたとしても 春になればまた そこに見つけてしまうだろう(2002年2月)
Apr 22, 2005
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やがて死んでしまうのに 人は何故、産まれて来なければならないのだろうか 時間という流れの中で 浮かんでは消える泡のように でも、生きてください いきてください 一瞬にも満たない生命を 嬉しいことも、悲しいことも 認識できないほどの、短い時間の出来事 すぐに忘れ去られる 誰も覚えていない でも、生きてください いきてください 一瞬にも満たない生命を 魂は、何処から来て、何処へ還るのか 宇宙の源か、宇宙の涯か 縮んで、落ちて行く 膨張し、拡散する 浮遊する、翻弄される 塵よりも小さな生命(2001年10月)
Apr 21, 2005
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2001年 8月18日土曜日 雨 いよいよ明日だ。このように、一日の終わりに、日記をつけるようになってから、ちょうど1年になった。私は、明日、死ぬ。 何故死ぬのか、どうやって死ぬのか、わからない。でも、明日、死ぬということだけは、知っている。自殺する訳ではない。いや、しないと思う。少なくとも今、自殺する意思は、無い。 何故、明日、死ぬのだろう? わからない。まだ小さい頃、無責任な占い師が予言したのか、はたまた、夢枕に立った神が告げたのか、それとも、祖父か誰かの遺言なのか、全然覚えていない。 『2001年8月19日の日曜日に、おまえは死ぬ』。いつの頃からか、その言葉が私の耳にこびりついている。私が知っているのは、それだけだ。 去年の8月19日、いよいよあと1年となって、この日記をつけ始めた。何か残しておきたいと思って。遺言も書いたが、私が死ぬ前に、死ぬことを知っていた、ということを残しておきたいのだ。 2001年。学生の頃は、まだまだ先の未来だと思っていた。21世紀。20世紀の私には、20世紀が、生きる世紀だった。 しかし、私にはさしたる夢も希望も無かった。死ぬ日がわかっていたからではない。なりたい職業も、したい仕事も、私には無かった。特異なほど平凡に、学生時代を過ごし、普通のサラリーマンになった。 平凡に、ときには楽しく、過ごせればよかった。しかし、彼女はできなかった。寂しくなかった、と言えばウソになるかも知れないが、仲間たちと、飲み、遊ぶ。それで十分だった。結婚なんて、しない。できないと思っていた。 しかし、縁あって、美佳に出会った。結婚したいと思った。美佳を愛し始めて、私の子どもを、この世に残したい、と思った。 愛する美佳と、由香、拓哉、梨花たちと、これ以上一緒にいられないのは悲しいが、それは私には最初からわかっていたことだ。十分な愛情と、思い出を、残してやれただろうか。 明日死ぬことは、私の他には、誰も知らない。両親や美佳さえも。学生時代、親しい友人に、話したことがあるが、誰も信じる訳がなかった。誰も信じなかった。 もちろん、会社にも、何も言ってない。密かに、私なりに、仕事のけじめはつけた。あとは、中村たちが、何とかしてくれるだろう。 美佳にも、言わなかったことは、許して欲しい。この日のために、少し多めにかけておいた生命保険と、どうせ払わないのだからと、ちょっと無理してローンを組んで買ったこの家で、子ども達と、平和に暮らして欲しい。預金もある。私が死ぬことにより、家と、お金だけは、十分に残してやれる。一生お金に困ることは無いだろう。 死ぬのがわかっていたからといって、保険金が下りないなんてことはないだろうか? まさかね。 美佳も、まだ若いのだから、他の誰かと結婚しても構わない。しっかり者だから、変な男にだまされることもないだろう。でも、わかっていると思うが、由香、拓哉、梨花の幸せも、考えて欲しい。なんだか勝手な願いだとも思うが。 もっとパニックに陥るんじゃないかと思っていたが、自分でも意外なほど落ち着いている。事実は事実として、受け入れるしかないと思っているのだろうか。 もう、眠くなってきたので、寝ることにしよう。明日の朝、そのまま目覚めないのかも知れないが。 おやすみ。美佳、由香、拓哉、梨花、ありがとう。幸せだったよ。 --- 2001年 8月20日月曜日 曇 あれ? まだ生きている!!! --- この男はその後、一念発起して事業を起こし、見事成功。しかし、絶頂期を迎えた、2007年8月19日の日曜日、飛行機事故で死んだ。 皆さんも、『イチ』と『シチ』の聞き間違いにご注意を。(2001年8月)
Apr 20, 2005
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山と海 空と大地 未来と過去 太陽と月 破壊と創造 左と右 理性と感情 個と群れ 愛と恋 動と静 剛と柔 攻と守 怒と喜 楽と哀 背中と胸 放置と抱擁 出会いと別れ 浮気と本気 無口と饒舌 凸と凹 行く、待つ 許す、許さない 抱く、抱かれる 目を開く、目を閉じる キミとボク そして……男と女(2001年8月)
Apr 19, 2005
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「空を翔けたいな」 君はいつもそう言ってた 教室の窓から空を眺めるのが好きだった 君は僕を『ともだち』と呼んだ たった一人の『ともだち』と だけど…… 『ともだち』なんて空虚な言葉 僕には君を助ける勇気なんてなかった ごめんよ 気が付かなかった あのとき君が屋上に行ったなんて 用務員のおじさんが鍵を開けたままにしていたその隙に 僕の机の中に残されていた君の置き手紙 感謝の言葉であふれてた 僕にはそんな資格はないよ 君がいつも空を眺めてた教室の窓に 何故だか目を向けた瞬間 君が落ちて来た ほんの一瞬の出来事 見える筈がないのに わかる筈がないのに まるで写真を撮ったかのように 窓の外を落ちて行く君の顔が僕の目に焼き付いている 君は目を閉じ微笑んでいた 空を飛べたのかい 君は鳥のように空高く翔けて行ったのかい 「空を翔けたいな」 君はいつもそう言ってた 僕は強くなろう 僕は強くなろう 君の『ともだち』になれるように(2001年7月)
Apr 18, 2005
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ああ、平和は何処へ行ったの 何故、人は殺し合うの 山も川も緑も大地も すべて焼き払われた 一瞬で消えてしまえるのなら いっそその方がいいのかも知れない それでも あなたを産んだ母さんは あなたを守りたいのです たとえこの身が引き裂かれようとも ああ、また今日も生き延びて いったい何人この手で殺したろう 空も海も街も村も すべて焼き払いながら 語り合った仲間たちも今は屍 次は俺かも知れない それでも おまえを育てた父さんは おまえを守りたいのだ たとえこの身が砕け散ろうとも たとえこの身が引き裂かれようとも たとえこの身が砕け散ろうとも おまえを あなたを守りたいのです(2001年5月)
Apr 17, 2005
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おめでとう おめでとう 誕生おめでとう おめでとう おめでとう 今日から君は、僕の娘 桜の花咲くこの季節。君の名前は桜子にしよう おめでとう おめでとう 入園おめでとう おめでとう おめでとう 今日から君は、幼稚園児 桜吹雪に青い空。友達たくさんできるかな おめでとう おめでとう 入学おめでとう おめでとう おめでとう 今日から君は、小学生 いつまで一緒にお風呂に入ってくれるかなぁ おめでとう おめでとう 入学おめでとう おめでとう おめでとう 今日から君は、中学生 初恋もするだろう。もうしたか? ちょっと心配だなぁ おめでとう おめでとう 入学おめでとう おめでとう おめでとう 今日から君は、高校生 カレシなんか、作るんじゃないぞ。勉強・部活に励みなさい おめでとう おめでとう 入学おめでとう おめでとう おめでとう 今日から君は、大学生 遊んでばかりいちゃダメだぞ。門限は守るように おめでとう おめでとう 入社おめでとう おめでとう おめでとう 今日から君も、社会人 会社には変な奴がいっぱいいるから、ほんとに気をつけて おめでとう おめでとう 結婚おめでとう おめでとう おめでとう 今日から君は、…… 桜の花散るこの季節 おめでたくなんかないや、チクショー!(2001年4月)
Apr 16, 2005
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薄暗いバーのカウンター 無口なマスター 2本しか残っていないマールボロー ジッポのライター グラスにダブルのシーバース 瞼に浮かぶのは君の顔 頬を伝うふた筋の涙 悲しげな君の瞳 泣かないで 泣かないで 抱き寄せるほど気障じゃない 泣かないで 泣かないで 謝れるほど強くない 楽しげな二人連れ 遠く聞こえる笑い声 残り1本になったマールボロー 折れた吸殻がひとつ 一息に呷るシーバース 頭に浮かぶのは君のこと 君にかけた言葉君の言葉 好きなのは君の笑顔 泣かないで 泣かないで 泣き顔を見るのは好きじゃない 泣かないで 泣かないで ひとりで飲むほど強くない(2001年3月)
Apr 15, 2005
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カワイイね、キミ キレイだナ、キミ ステキだネ、キミ ダイスキな、キミ キミといつもイツモいつも 一緒にいたい キミといつもイツモいつも 一緒にいたい 大きなカオ、小さなテ 厚いクチビル、細いアシ 頭イイけど、ジコチューで 気がツヨイけど、ナキムシな ぜんぶゼンブぜんぶ キミのコト ぜんぶゼンブぜんぶ キミのコト アイしてる(2001年3月)
Apr 14, 2005
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春一番吹いて、春がやって来た 春の薫りを乗せて、髪を巻き上げて 重いコートを脱いで、両手を広げよう そのまま目を閉じて、空へ飛べそうだ 春の薫りの中で、春の香りの中で 春告鳥鳴いて、春がやって来た 紅い梅の花、その枝を渡り 丸めた背中を伸ばして、深呼吸しよう 一緒に歌おうか、一緒に謳おうよ 春の薫りの中で、春の香りの中で 春だ、春だ、春が来た(2001年3月)
Apr 13, 2005
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「ははは、うっ、いてっ、ててててて……」 「あ、あなた、大丈夫?」 「あ、ああ、大丈夫だ。それよりあれ、持って来たか?」 「新聞ね。売店で、4紙、買って来たわ」 「よし、俺はこっちとこっちを見る。おまえはこっちとこっちを見てくれ」 「ええ」 「……うひゅ、間違いない。そっちは?」 「こっちもよ。同じだわ」 「うひゃ、うひゃ、うひゃひゃひゃひゃ、ひゃ、ってっ」 「あ、うふふ、あなた、うふふふ、そんなに、ふふふ、笑っちゃ、はははは、駄目よ」 「だって、これが、笑わずにいられるかって。何せ、さ、さ、3億円……」 「しーっ! 駄目よ、そんなに大きな声で言っちゃあ」 「大丈夫だよ。この病室には、俺達だけだし、それに、……」 「それに、何?」 「あ、いや、何でもない」 「まさか、あなた、あの、お気に入りの看護婦にでも、言ったんじゃないでしょうね!」 「(うっ、スルドイ!)い、いや、あ、まあ、うん。いや。だ、大丈夫だよ。ちゃんと、誰にも言うな、ここだけの話、ってくぎをさしたから」 「馬鹿ね! 誰にも言うなって、ここだけの話と言ってみんなに広がって行くのよ!」 「いやあ、そう。いや、だ、だけど、なんだなあ。あの、車に跳ねられたときには、死ぬかと思ったよなあ。それが……」 「うふっ、あなた、うわごとで、ケーキ、ケーキって、言ってたそうよ」 「どうも、あけましておめでとうさんでございます!」 「あ、あけまして……、ん? 失礼ですが、どちらさまで?」 「いやだなあ、旦那。隣りの病室の、同じ日に入院した……、覚えてませんか?」 「ああ、どうも……」 「聞きましたよ、旦那。おめでとうございます」 「えっ? 何が?」 「いやだなあ、旦那。とぼけちゃって。宝くじですよ、た、か、ら、く、じ」 「うわっ、あなた、それ、どうして?」 「どうしてって、看護婦さんから聞いたんで。もう、病院中、その話題でもちきりですぜ、旦那」 「なんですって!!」 「ひえ~~~」 「そこで、ものは相談なんですがね、旦那。同じ日に入院したよしみで、その、ちょいと、私にも、おすそ分けを……」 「な、何を。何であんたに……」 「ほらあ、だから言ったでしょ」 「いいじゃないですか、旦那。たったの、500万、500万円で、いいんですよ。3億円もあるんだから、500万円ぽっち、何でもないでしょ? それで、私たち家族4人は、救われるん……」 「いやあ、どうですか、お具合は?」 「あ、先生。おかげさまで……」 「結構、結構。にぎやかですな」 「いや、この人は……」 「実はですな。個室を用意しましてな、そちらに移って頂こうかと……」 「えっ? ど、どうして? 個室なんか……」 「あ、いや、個室の使用料は、こちらで持ちますのでな。その代わり、我が病院へ、寄付の方をちょっと……」 「ひえ~~~、せ、先生、あなたまで……」 「うわ~」 「キャー」 「こっちよ、こっち、この患者さん!」 「何だ、何だ」 「きゃー、あ、それ、当たりくじぃ!? 見せて~!」 「あ~、見た~い。私も~。見せて見せて~」 「うわっ、やめろ、触るな!」 「旦那ァ、500万円……」 「是非、寄付を……」 「あああああ! やめてくれ! もう……」 「きゃああ! あなた! 何するの!」 「旦那!」 「やっだー、この人、食べてるぅー」 「うぐうぐうぐ」 「よしなさい!」 「あなた、駄目よ、吐き出して!」 「ははははー、食っちまったぞー! へへーい。ざまあ見ろー」 「な、なんてことを……、旦那ァ」 「あなたああああ」 「やっだぁー。つまんなーい」 「慌てるな! これより、緊急手術、3億円摘出手術を行う! 君たち、今すぐ、クランケを第1手術室に運んでくれたまえ!」 「ひえ~~~、助けてくれ~~~~~!!!」(2001年1月)
Apr 12, 2005
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男は、焦っていた――。 今日は、12月25日。クリスマスだが、同時に、男の息子の、誕生日だ。男の息子は、満7歳になる。男は、仕事もそつ無くこなすが、また所謂家庭的な人物で、休日は勿論、平日でも成るべく早く帰って、息子と遊ぶような人物だった。男の息子は、この春、小学校に入学したところだ。そして、男も同じ時期、課長に昇進した。それで、以前にも増して、仕事が忙しくなって仕舞った。流石のこの男も、夜の帰宅は遅くなり、休日も、接待ゴルフや仕事で潰れ、子どもと遊ぶ時間は、無くなって仕舞った。小学生になった息子と、顔を合わせなくなって、久しい。朝、寝顔を見て家を出、夜、帰って来て、やはり寝顔を見るだけの毎日だった。そして、誕生日。男は、日頃の罪滅ぼしのつもりで、今日は、今日こそは、早く帰って、喜ばせてやるつもりだった――。が。 退社時刻間際になって、部長に呼ばれた。急いで資料を作ってくれ、と言う。明日必要なので、今日中に、仕上げなければ成らない。部下は、数人いるが、彼等に任せられるような内容ではない。男は、それでも、3時間かけて、完璧な資料を書き上げた。時計を見る。もう、8時半だ。息子への誕生日プレゼントは、息子の好きな変身ロボットを買って、既に自宅のクローゼットに隠してある。問題は、バースデー・ケーキだ。妻に任せず、男が自分で自宅近くのケーキ屋に予約したのだ。息子の大好きな、チョコレートケーキだ。ケーキ屋までは、会社から、1時間かかる。男は、思い付いて、財布から、予約カードを取り出した。見ると、ケーキ屋の電話番号が書いてあった。会社を飛び出して、駅まで走りながら、携帯電話を取り出し、その電話番号をプッシュする。店は、9時に閉店するのだが、9時半まで待っていてくれる、と言う。良かった。男はホッとしながら、丁度来た電車に飛び乗った。 お待ちしておりました、と言う店員に、恐縮しながら、男はケーキを受け取った。自宅まで、走って5分。もうすぐだ。もうすぐ、息子の笑顔に会える。待ってろよ。信号が、赤になった。いつもなら、立ち止まって、次の青信号を、待つのだが、焦っていた男は、それでも左右を確かめて、渡ろうとした。そのとき、やはり信号が赤になりかけたのを見て、急いで右折して来た車が、男に向かって、突っ込んで来た。 男が最後に見たものは、無残に潰れた、バースデー・ケーキと、折れ曲がり、散らばった、7本のローソクだった。ケーキの方へ、手を伸ばし、男は、薄れ行く意識の中で、呟いた。 ごめんな……。ケーキ、潰れちまった……。(2001年1月)
Apr 11, 2005
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子猫がいました。 夜の路を、ヨチヨチ歩きで、渡っていました。 そんなに広くはない路だけど、子猫にとっては遠い向こう側です。 ヨチヨチヨチと、路の真ん中まで来ました。 自転車に乗ったおじさんが来ました。 子猫に気が付いて、微笑んでいます。 子猫を見ながら、子猫の横を、通り過ぎて行きました。 でも、子猫にとっては、自転車は大きな怪物です。 子猫はびっくりして、立ち止まってしまいました。 子猫は、動かなくなりました。 肢を曲げて、その場にうずくまってしまいました。 自転車に乗ったおばさんが来ました。 おばさんは、地面の方を見ていません。 遠くの方を見て、自転車をこいでます。 そこに子猫がうずくまっていることに、気が付きません。 おばさんの自転車は、どんどん子猫の方に走って行きます。 あぶない! そう思った瞬間、おばさんの自転車は、子猫のしっぽの先をかすめて、 走って行きました。 よかった。 子猫は無事でした。 でも、おばさんの自転車が、あと10センチ左側を通っていたら、 子猫は轢かれてしまっていたでしょう。 子猫が、自転車の重さに耐えられるのかどうかはわかりません。 でも、もし、おばさんの自転車に轢かれていたら、 ただではすまなかったでしょう。 子猫はうずくまったままです。 歩こうとはしません。 また、さっきのようなおばさんの自転車が来るかも知れません。 このままでは、とても危険です。 僕は少し引き返しました。 近付くと、子猫はニャアニャア鳴いていました。 お母さん猫を呼んでいるのでしょうか。 でも、お母さん猫は、見当たりません。 僕は、子猫の首の後ろをつかもうとしました。 急に、子猫は仰向けになって、ギャアギャア鳴きます。 大丈夫だよ。 僕はそう言って、子猫の首の後ろをつかんで、 路の脇の安全な場所へ運んでやりました。 子猫はうずくまったままです。 ニャアニャア鳴いています。 でも僕は、二度とは振り返りませんでした。(2000年11月)
Apr 10, 2005
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暑い。熱かった。その日、その瞬間。夏。真夏。真夏の昼下がり。照りつける太陽。全身を包み込む湿気。アスファルトから立ち昇る陽炎。音が聴こえる。太陽光線の降り注ぐ音が。いや、それは、蝉の声か。幾重にも重なり、身体中の穴という穴から浸入して来る。いや、鼓膜を破ろうとするかのように、耳に輻湊する。熱線は、遠く近く、肌を刺す。騒音は、遠く近く、耳を突く。ふらふらしながらも、足は地に着き、私の体重を支えている。いや、ふっと体重が消え去り、光と湿気と蝉時雨の海の中に漂う感覚。錯覚? いや、錯覚ではない! 金属音。ゴムとアスファルトが軋む音。上下左右の感覚を奪う、強い衝撃! 何処が痛いのか判らない程の、激痛! 目に映るのは、光か闇か。鼻の奥に漂う鉄の匂い。そして意識が、消えていった……。(2000年9月)
Apr 9, 2005
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生きている 生きている 生きているって、なんだろう 生きている 生きている 生きているって、なんだろう 君は今、生きているか 僕は今、生きているか 君は今、死んでいるか 僕は今、死んでいるか その目で、何を見る? その耳で、何を聞く? その鼻で、何を嗅ぐ? その舌で、何を味わう? その身体で、何を感じる? 研ぎ澄ませ! 研ぎ澄ませ! 感覚を、研ぎ澄ませ! この頭で、何を考える? この口で、何を語る? この手で、何を創る? この足で、何処まで走る? この身体で、何を見せる? 鍛えろ! 鍛えろ! 感性を、鍛えろ! 鍛えろ! 鍛えろ! 肉体を、鍛えろ! 生きている証を 生きている証を 生きている証を!(2000年9月)
Apr 8, 2005
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立ちたいんだ、ボク、この足で だって、高いでしょ 立ちたいんだ、ボク、もう一度 だって、広いでしょ だって、だって、見下ろされなくて、済むでしょう? でも、青空を、見上げるのは、好きなんだ(2000年8月)
Apr 7, 2005
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暗 私 で 生 明 く の も き る 悲 人 あ て く し 生 の い 楽 い 瞬と る し 間き く か ら は(2000年5月)
Apr 6, 2005
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ごめんね チャイルドシートに座らせないで ごめんね 嫌がる君を縛りつけることより ごめんね 自由に座らせることがやさしさだと勘違いしていた ごめんね 君に嫌われるのが恐かっただけなんだ ごめんね 臆病な私を許しておくれ ごめんね 事故なんて起こさないと思っいてた ごめんね 事故を起こしても死ぬなんて思っていなかった ごめんね 君はいつまでも元気でいると思っていた ごめんね 嫌なことは考えられなかったんだ ごめんね 馬鹿な私を許しておくれ いくら悔やんでみても 時は戻らない いくら涙を流しても 君は戻らない ごめんね 君を守ってやれなくて ごめんね 君を愛しているなんて思い上がりだった ごめんね 愛されることしかできなかった ごめんね 君のことより自分のことばかりを考えていた ごめんね 悔やむことしかできない私を ごめんね 涙を流すことしかできない私を許しておくれ ごめんね……(2000年4月)
Apr 5, 2005
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いつもと変わらぬ景色の中で いつもと変わらぬ時間の中で 君の大好きだった車が 誰も耐えることのできない重い重い車が 君の小さな体の上を通って行った 青い空を飛んで行く 飛行機を見上げて輝いていた君の瞳 今はもう輝かないその瞳 緑の中を駆けて行く 疲れを知らず遊び回っていた君の体 今はもう動かないその体 赤い夕焼けに歌うたう りんごのように赤く染まっていた君の頬 今はもう赤くないその頬 白い雪を初めて触った 落ちてくる雪を受けては溶かしていた君の手のひら 今はもう冷たいその手のひら 一瞬のような永遠のような3年間 確かに私の腕の中にいた君の命 君はいったい何処から来て 何処へ行ってしまったのか 思い出だけを残して 思い出だけを私の胸に刻み込んで(2000年4月)
Apr 4, 2005
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襖一枚隔てた隣の部屋から、絹を裂く様な妻の悲鳴と、年老いた産婆の濁声が高く低く、断続的に聞こえて来る。 私が此の家に来て三年に成る。妻と出会ったのは七年前。東京のK大学の文学部に入学した私は、教室の隅で同じ講義を受けて居た彼女に一目惚れした。 声を掛けた。逃げられた。然し、そんな事位で諦められ無い。 徹夜して手紙を書いた。何度も何度も書き直して、結局最初に書いた内容と大差無い、単純な内容に成った。 手紙を渡した。彼女は、驚いた顔をして、其れでも受け取って呉れた。私は彼女に会う事が怖く成って、一週間大学に行く事が出来無かった。 一週間の間、彼れ是れと思い悩み、決心と云うか、諦めと云うか、兎に角そう云う物が着いて、漸く大学に行けたのだった。 其処に待って居たのは、私宛の手紙を持った、彼女だった。其れからの四年間は丸で夢の様であった。 卒業を前にして、将来の事を話し合う様に成り、彼女から彼女の家の事情を打ち明けられた。 彼女の家は、地方の資産家で、放って置いても生活に必要な金額以上のお金は入って来る。然し何故か、代代女の子供しか生まれ無い、女系の血統で、代代長女が婿養子を取る仕来たりに成って居るのだそうだ。彼女は其の長女で、私に婿養子に来て欲しいと言った。 幸い私は次男だし、物書きを目指して居る身に取っては、働か無くても好きな文学に没頭出来ると云う境遇は、正に願ったり叶ったりで、断る理由等何処にも無かった。 斯くて、卒業と同時に、壮大な結婚式が執り行われ、私は此の家に入ったのだった。 そして昨年、妻が妊娠した。矢張り女の子だろうか。私は心配なので、近代的な設備の有る病院に診て貰いたかったが、此れも仕来たりで、全ては近所に住む産婆に任された。妻も、義妹達も、此の産婆に取り上げられたそうだ。 一際高く長い妻の悲鳴に似た声がした。其れに続いて一瞬、確かに産声が聞こえた。然し、其れは直ぐに消え、続いて聞こえたのは、其れまでとは異質な妻の胸を引き裂くような悲鳴だった。只ならぬ雰囲気を感じた私は、決して開けては成らぬと言われて居た襖を開けた。其処に見たのは……。 目と口を半開きにした儘、放心状態の妻。其の妻と未だ臍の緒が繋がって居る産まれたばかりの児は男の子だった。だが、其の児の首は、不自然に曲がって居り苦悶の表情を浮かべ、其の儘止まって仕舞って居た。産婆は産湯に使う筈だった桶の湯で手を洗い乍、何やら呟いて居た。 「此の家は、此の家には、男の子が産まれる筈が無い……。男の子は産まれては成らんのじゃ……」(2000年1月)
Apr 3, 2005
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それは、私が小学生の頃だった。 当時、私が住んでいたのは、公営の団地で(両親は今も住んでいるが)、洗面所というものがなかったので、台所の流しで歯を磨いたりしていた。 その時も、寝る前の歯磨きをしているところだった。 台所なので、換気扇があるのだが、それは頭のすぐ上の位置にあった。当時すでに古かったのか、かなり大きな音を立てて回っていた。 奥の部屋から、母の叫び声が聞こえてきた。と言っても切羽詰まった感じではなく、何か私に話し掛けているようだった。 私は、歯を磨きながら、「んー?」、「あいー(なにー)?」と聞き返したが、換気扇の音がうるさくて、母が何を言っているのかわからなかった。 『うるさいなあ』と思いつつ、換気扇を止めると、やっと母が言っていることが聞こえた。「…ちゃん、換気扇止めてって言ってるの!」(1999年7月)
Apr 2, 2005
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私が最初に生まれたのは、20世紀も終わりに近づいた1999年の7月のことだった。 私は死が恐かった。私は死にたくなかった。 死とは何か、生きるとは何か、私とは何か、死なない方法は? 私は考えた。 しかし、見つかった答えは、「不老不死は不可能」というものだった。私の体を構成する細胞には寿命があり、それを延ばすことはできても、いつかは死んでしまう。 21世紀の初頭に、ある事業で巨万の富を得た私には、買えないものはなかった。不老不死の秘薬を除いて。 クローン技術を人間にも適用する技術が確立したのも21世紀初頭のことだった。しかし、いくら私のクローンを造っても、一卵性双生児と同じように、同じ遺伝子を持っているというだけで、それは私ではない。 私とは何か。私が私として生きて来た、私が私であるという「記憶」である。 理論的に可能とされていたワープ航法は、否定された。しかし、人間は、他の銀河への航海をあきらめなかった。銀河間航行を行うために、冷凍睡眠と蘇生技術が発達した。しかしそれは完全ではなかった。冷凍睡眠から蘇生したとき、どうしても記憶が欠落してしまうのだ。しかし、人間の飽くなき挑戦は、ついに記憶のメカニズムを解明し、人間の頭から記憶を取り出し、再び植え付ける技術を生み出した。宇宙へ旅立つ人々は、冷凍睡眠に入る前に記憶をコピーし、100万年もの長い航海を終え、再び目覚めるとき、その記憶を植え付け戻す。 肉体のコピーと記憶のコピー。この二つを組み合わせれば、不死身ということになるのではないのか? 私は、毎年1回、記憶を記録することにした。そして、私のクローンを作成し、18歳まで育てた後、冷凍睡眠に入らせた。私が「死んだ」ら、クローンを蘇生し、私の記憶を植え付け、私は「生き返る」のだ。 私には今、503年間にわたる、私が生きてきた記憶がある。確かに、私には、死んだ記憶がない。しかし、記憶にないだけで、事実としては、今までに6人の私が死んだはずである。 私のやり方は間違っていたのか? 相変わらず私は死を恐れ、死んだという記憶がないことに満足しようとしている。(1999年6月)
Apr 1, 2005
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休みの日 窓から差し込む太陽の光で早起きした 部屋の中は温室のように暖かい 窓を開けると少し冷たい風が気持ち良い そうだ、布団をほそう バルコニーの手すりに布団を掛けた そのとき風が 飛びたかったんだな、布団も空を 飛びたかったんだな、布団も空を 飛んで行け、どこまでも 飛んで行け、どこまでも 飛んで行け、どこまでも でも今夜、どうしよう(1999年5月)
Mar 31, 2005
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ガラッニワトリが息せき切ってフクロウの家に駈け込んで来た。「コケッ!コケッ!」「おや、なんだい、ニワトリじゃないか。どうした、そんなに慌てて。」「コケッ!コケッ!」「コケッ!コケッ!じゃ、何言ってるか分からないよ。まったく慌て者なんだから。言葉を話しな。」「フウ、フウ、フクロウさん、一つ聞きたいことがあって来たんですよ。フクロウさんは物知りだと聞いたもんで。」「おう、そうかい。しかし、何もそんなに慌てることはなかろう。」「いやあ、何しろニワトリは、3歩あるくと物事を忘れるって言うから、忘れちゃいけないと思って急いで来たってわけでさ。」「なるほど。いいよ、何でも聞いてみな。」「………。」「どうした?」「………。」「聞きたいことがあるんじゃないのかい?」「…忘れた。」「え?」「フクロウさん、忘れちゃいましたよ~。え~ん。」「おいおい、泣くことはないだろう。泣き止みな。いいよ、いいよ、そのうち思い出すだろうから、そしたらいつでもいいからまた聞きに来なさい。」「ふぁい。」ニワトリはしょんぼりしてフクロウの家を出て、今来た道をとぼとぼと歩き出した。しばらく歩くと、急に目を輝かせて顔を上げた。「あっ、そうだ!思い出した!」ニワトリはきびすを返すと、フクロウの家に向かって駆け出した。(最初に戻る)(1999年5月)
Mar 31, 2005
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