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Oct 4, 2016

宇治見氏特別寄稿＜改訂＞：( その６/6 )　「チェコの Třešť におけるシュンペーターのファミリー・ヒストリー」

カテゴリ：寄稿（宇治見、マドレーヌ、トキめき橋氏ほか）

＜改訂＞

VI. Gr ü ners　ファミリー（一族）

夫の死後、Schumpeter XⅡ の夫人、即ち、

わが Schumpeter の母親は、新たな人生について模索

しなければならなかった。

　このことは、Schumpeter のその後の人生に決定的な

影響を与えた。

　母親、及び彼の2番目の夫人「 Anna 」は、彼にとって

「守護神」となり、彼の知的努力に対し刺激を与えること

になった。

　これは、心理学的に大変興味のある現象であり、

1926-49の彼の日誌（ハーバード大学アーカイブズに保

存）が重要である。　

　以下では、Třešť の Schumpeter ファミリー（一族）

と、母親の生いたちとの関係につき、いくつか考察して

みたい。

　Jana ( Johanně ) Gr ü ner (1861-1926)は、

Jihlava の外科医 Julius Gr ü ner（1827-1887）の娘で

あった。

　Jihlava (ドイツ語名　Iglau )は Třešť の10キロメー

トル北にあり、現在50,000人の人口を有する。

　図2で示したように、Schumpeter X1 の子供たちは、

その夫人を Třešť からではなく近在から探した。

　（たとえば、 Jihlava , Třebíč ,そして Telč ）。

　これらの町はいずれも Třešť よりは大きい。

　Schumpeter 一族の富と名声は、より上位にある近隣の

町の知的階層の人々との結婚を可能にしたという議論も成

り立つ。

　Gr ü ner ファミリー（一族）は、医者の家系として知られ

尊敬されて来た。

　Franz Julius Gr ü ner（1797-1879）は、 Julius

Gr ü ner の父親である。

　彼は Jihlava に若いときにやって来た。

　ここで長い間医者として働き、1841-69年に町の病院

の院長になった。

　彼はまた植物学者であり、コケの植物の研究を専門と

した。

　Johanně の父親は最初陸軍の軍医だった。

　その後、彼の父親の後をついで、1869年町の病院に

勤務した。

　そこで彼は死ぬまで働いた。

　彼女の母親（1835-1888）Julie Wydra は、

Podebrad に生まれた。

　Johanně には、　妹 Willhelmine （1865年生まれ）

がいた。

　彼女は、　結婚後 Klimesch という名前をもらった。

　さらに弟 Friedrich（1869年生まれ）がおり、

　彼はウイーンで鉄道の職員として働いた。

　わが Schumpeter の父親は、　仕事上の実績を残す前

に死んだが、 Schumpeter ファミリー（一族）は、少なく

とも17世紀初頭以降、商業、製造業に従事し、時には地方

の役所の仕事に係わった。

　Gr ü ner ファミリー（一族）は、　医者として権威ある

一族であった。

　これら一族の優れた特徴は、 Schumpeter が Třešť

を離れる時、彼に与えられたはじめての保証であり、

後押しとなった。

　これら２家族が、　彼にどういう影響を与えたか、

その証拠はないし、確認のしようもない。

　そもそも、彼が生まれた外的環境は、田舎町に生まれた

という状況の中では、飛び切り恵まれたものだった。

　しかしそれらといえども、彼の将来の人生を保証するに

十分なものではなかった。

　彼が、その後成功するには、後の幸運を待たなければ

ならなかった。

　Schumpeter ファミリー（一族）には、　輝かしい天才

といわれる人や高貴な身分の人は含まれていない。

　この事実は、彼が、なぜ一族の系譜を調べようとしなか

ったかの理由の一端を物語っている。

　むしろ彼には、この家系図を、違う角度から見たいと

いう興味があったかもしれないが。

　本論を書くにあたり、

Mr. Metoděj Burian( Třešť市長 )、Mr. Karel Brázda,

そしてMrs. Eva Pízová に御世話になり、負うところ

大であった。

本論が実現したのも、彼らと意見交換し、また惜しみなく

資料を提供いただいたことによるものであり、

心より感謝したい。

以上

「 The Soul of the German Historical School 」,

2005年、Springer社（NY）発行、塩野谷祐一著

宇治見氏訳（2010年10月）

★

★

欄外追記

　　塩野谷祐一教授の講演録から（宇治見氏の提供）

★

シュンペーター教授が日本(一橋大学)を訪れたときの記念写真

　（兼松講堂前で）

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★

：：：蛇足：：：

・ イノベーションの5分類 (Web)

１． 新しい財貨 すなわち消費者の間でまだ知られていな

　　　い財貨、あるいは新しい品質の財貨の生産。

　２． 新しい生産方法 、すなわち当該産業部門において

　　　実際上未知な生産方法の導入。これはけっして科学

　　　的に新しい発見に基づく必要はなく、また商品の商

　　　業的取扱いに関する新しい方法をも含んでいる。

　３． 新しい販路の開拓 、すなわち当該国の当該産業部門

　　　が従来参加していなかった市場の開拓。ただしこの

　　　市場が既存のものであるかどうかは問わない。

　４． 原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得 。この場

　　　合においても、この供給源が既存のものであるか――

　　　単に見逃されていたのか、その獲得が不可能とみな

　　　されていたのかを問わず――あるいは始めてつくり

　　　出さねばならないかは問わない。

　５． 新しい組織の実現 、すなわち独占的地位（たとえば

　　　トラスト化による）の形成あるいは独占の打破。

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