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2026年09月07日
『やはり最後は「水とエネルギー」だった』
カテゴリ:
健康・ダイエット
『やはり最後は「水とエネルギー」だった』
もし明日、大地震が起こり、電気も水道もガスも止まったら、私たちはいったい何日間、生きていけるでしょうか。
俳優であり猟師でもある東出昌大(38)さんは、2026年6月、この問いを自分自身の生活で確かめる、非常に興味深い試みを行いました。
想定したのは、巨大地震によって電気、水道、ガス、さらに携帯電話の基地局まですべて停止した世界です。東出さんは北関東の自宅に留まり、約1カ月間、「インフラが完全に止まった被災生活」を送りました。
食料は備蓄していた米や畑の野菜に加え、鹿や猪などの狩猟肉、川魚、釣った魚などです。
夜はヘッドライトの明かりで本を読み、天気予報を見ることもできないため、雲や風、木々の音から翌日の天候を感じ取りますなお、妻と1歳の娘さんは同じ家で通常の生活を送り、冷蔵庫や冷凍庫、洗濯機、スーパーで購入した食品なども使っていました。あくまで東出さん本人だけが「インフラ停止生活」を実践するという設定です。
動画も拝見しましたが、私がとくに興味深いと感じたのは、単なる「防災グッズ紹介」や「サバイバル訓練」ではなかったことです。むしろ、文明によって便利になった生活の中で、私たちがいつの間にか失ってしまった感覚を取り戻す実験のように見えました。
東出さんは、こんなことを語っています。
「東京から移住してきて暇ができた時、不便と思われがちだけれど、幸せを感じる瞬間が増えたんです。都会では食べ物がなんでも売っているし、Uberもある。でも仕事に忙殺されて、栄養補給として瞬間的にバーッと食事をしたりする。娯楽も多様化しているからやりたいことが増えていて、心の安寧からは遠ざかっているのかもしれない」
この言葉こそ、今回の実験の本質を表しているように思います。
便利なものを失ったことで、かえって「人間が生きるために本当に必要なもの」が見えてきたのです。
6月の畑には、ブロッコリー、レタス、キャベツ、キクイモ、ジャガイモ、トマト、ピーマン、ナスなどが育っていました。さらに備蓄していた米、鹿肉、川魚があります。その意味では、都会のマンションで突然ライフラインが止まる状況とはかなり条件が違います。それでも、この1カ月から見えてくるものは非常に大きいものでした。
⭐️ 水――人間は「食料」より先に水で困る
東出さんが、この生活で最も強く感じたもの。
それが「水」でした。
本人の言葉を借りれば、「水の確保がえらいこっちゃ」だったそうです。
約20リットルの空容器やウォーターバッグを持って、山の湧き水を汲みに行きます。途中からは車を使うようになったそうですが、本当の大災害であれば、やがてガソリンも手に入らなくなるでしょう。
そうなると最後に頼れるのは、自分の足と身体です。
成人の身体の約60%は水でできています。食料なら、ある程度の備蓄があれば比較的長く耐えることができます。しかし水はそうはいきません。脱水が進めば血液量が減り、腎臓への血流が低下し、汗をかいて体温を調節することも難しくなります。つまり、人間が生きるうえで最初に直面する最大の問題は、「何を食べるか」よりも「どこから水を得るか」なのです。
東出さん自身、実際に生活してみて初めて、その量の多さに驚いています。
「被災生活が1日なら、飲み食いに2リットルあれば大丈夫かもしれない。でも、続く場合は手や体を洗うのにも必要です。節制して5リットル。家族3人なら15リットル、20日間なら300リットル……。いや、みんなどうするんだ!?」
この「1人1日5リットル」ですら、決してぜいたくな量ではありません。飲料水だけではなく、料理をするにも、手を洗うにも、身体を清潔に保つにも水が必要です。東出さんの生活では、行水を1回するだけでウォーターバッグ1個分の水が消えていきました。家族3人で1日15リットル。20日なら300リットル。
これをペットボトルだけで自宅に備蓄し続けるのは簡単ではありません。
そこで見えてくる答えがあります。
本当に重要なのは、「大量の水を家に置いておくこと」だけではありません。近くに湧き水や井戸、川など、継続的に水を得られる場所があること。そして、そこまで水を汲みに行き、何十キロもの水を持って帰ってこられる身体があることです。
つまり、究極の備蓄とは倉庫の中だけにあるのではありません。「水源」と「身体」そのものも、備蓄なのです。
⭐️ 塩漬けと発酵――冷蔵庫よりはるか昔から存在した人類の知恵
次に問題になるのが、食べ物の保存です。
電気が止まれば、冷蔵庫も冷凍庫も、巨大なただの箱になります。肉や魚をどう保存するのか。東出さん自身も、常温で肉を保存するのはかなり難しいだろうと予想していたそうです。
しかし実際には、昔ながらの「塩」が活躍しました。
「塩漬けでだいぶもちました。3週間目に食べきったので、それ以上はわからないですけど。10%の塩だと腐るみたいで、1キロの肉に対して150グラムくらい塩をまぶしてジップロックで保存しました」
肉1kgに対して約150gの塩。
塩によって食品中の水分環境が変化し、微生物が増殖しにくくなります。
冷蔵庫が登場する何千年も前から、人類は塩漬け、乾燥、燻製、発酵などを利用して食料を保存してきました。つまり、私たちの祖先は「電気がなければ食べ物を保存できない」という世界で生きていたわけではありません。むしろ現在の私たちが、冷蔵庫という便利な機械に頼りすぎて、古くから受け継がれてきた保存技術を忘れてしまったとも言えます。
東出さんの場合、塩漬けした鹿肉はそのままでは当然かなり塩辛いため、食べる前にお湯で塩を落としていました。しかも、その塩分や肉の旨味が溶け出したお湯を捨てずに、野菜スープとして利用します。限られた資源の中では、「捨てるもの」がほとんどなくなっていくのです。
⭐️ 情報を失うと、身体の感覚が戻ってくる
さらに興味深かったのは、食料や水だけではありません。
携帯電話もテレビも天気予報も使えなくなると、人間は自然を見るようになります。
東出さんは、風や木々の音の変化から雨を感じ取るようになったと語っています。
「乾いた風が吹くと木々がサワサワ。『これから雨が降るぞ』という時には、木々が湿気を帯びてザワザワザワになるんです。山奥で聞くと『やばい、もう降る』と焦燥感を覚える。人間の心象を表すオノマトペで『心がザワザワする』というのはこういうことなんだなと思いました」
とても興味深い表現です。情報がなくなると、不安になると思うかもしれません。ところが逆に、人間の身体に備わっていたセンサーが目を覚まし始めるのです。
空を見る。
雲を見る。
風を感じる。
湿度を感じる。
木々の音を聞く。
現代人がスマートフォンの画面に任せてしまった仕事を、自分の感覚がもう一度引き受け始めます。そして1カ月の生活が終わる前夜、東出さんはさらに印象的なことに気づきます。
「明日でこの生活が明けるという日の晩に、『天気予報見られるんだ。でも、それで予定を考えなきゃいけないのか』って。その日暮らしでパタッと寝ていたのが、先々のことを考えるうち眠れなくなりました。情報は便利なようだけど、考えることが増えて、煩わしさが息苦しさにもなる。日常ってのは煩雑なんだな」
私は、この感想の中に現代社会の問題が凝縮されているように感じます。私たちは「情報が多いほど自由になる」と考えています。しかし情報が増えれば、それだけ判断しなければならないことも増えます。
明日の天気。
来週の予定。
仕事のメール。
ニュース。
SNS。
メッセージ。
将来の予定。
まだ起きてもいないことまで、頭の中で処理し続けなければなりません。便利さは、私たちの労働を減らしたように見えて、別の種類の仕事を大量に増やしたのかもしれません。
⭐️ 食料は「備蓄するもの」だけではなく「生み出すもの」
今回の生活では、東出さんには畑があり、山があり、川がありました。
さらに調べてみると、家には約200kgもの米の備蓄があり、「これなら2年くらい大丈夫だ」と安心したそうです。
そして地域には人がいます。自分が持っていないものは、誰かが持っているかもしれない。
野菜を米と交換する。
魚を肉と交換する。
労働力を食料と交換する。
災害が長期化すれば、個人の備蓄だけでは限界があります。その時に生きてくるのは、地域のコミュニティです。
つまり本当の「防災力」は、倉庫に積み上げられた保存食の量だけでは測れません。
水源があること。
食べ物を育てられる土地があること。
動ける身体があること。
火や熱を得られること。
そして、助け合える人がいること。
これらすべてが、生き延びるための資源になります。
⭐️ やはり最後は「水とエネルギー」
今回の東出さんの生活では、食料は比較的豊富にありました。
一方で、電気と水道は使えない。
だからこそ、何が本当に生活の土台なのかが、逆にはっきり見えてきます。
食料は備蓄することができます。
畑があれば作ることもできます。
川や山があれば、魚や肉を得ることもできます。
しかし、その食料を育て、調理し、保存し、身体へ届けるためには、必ず水とエネルギーが必要になります。
植物を育てるにも水がいる。火を起こすにも燃料というエネルギーがいる。水を汲みに行くにも、人間の筋肉というエネルギーがいる。米を炊くにも熱がいる。寒い季節に身体を守るにも熱がいる。
つまり私たちの文明を最後まで分解していくと、最終的に残るのは、「水」と「エネルギー」です。
電力網が止まっても、太陽が消えるわけではありません。
ガスが止まっても、火そのものが消えるわけではありません。
水道が止まっても、地球から水がなくなるわけではありません。
重要なのは、それらを自分たちの生活へどう取り込めるかです。
近くに水源があること。
熱や電気を自前で得られること。
食料を育てられること。
そして、それを扱える身体と知恵があること。
東出昌大さんの1カ月間の試みは、単なる「芸能人のサバイバル企画」ではありませんでした。
便利さを一枚ずつ剥がしていったとき、人間の生活のいちばん下に何が残るのか。
その答えを、非常にわかりやすく見せてくれた実験だったように思います。
スーパーでもなく、
コンビニでもなく、
冷蔵庫でもなく、
最後に私たちの命を支えているのは、
水とエネルギー。
そして、それらを自分の手で利用できる「身体」と「知恵」なのです。
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最終更新日 2026年09月07日 08時18分43秒
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