〇街道(朝)
上り坂の街道を山南敬介(32)が遊女しの(22)の足に合わせてゆっくり歩いている。
しの は赤い鼻緒の草履をはいて山南の後を苦しそうに歩いている。
茶屋が見えてくる。
山南「しの、ひとやすみするか」
山南が振り向いて言うと、しのがコクンとうなづく。
〇茶屋・中
運ばれてきたあんをかけた団子をしのがほおばる。
しの 「海はまだまだ遠いの」
山南「次の峠を越したら大津宿だ。海はその向こうだ」
団子を食べ終わったしのが立ち上がる。
2人は街道を歩きだす。
〇峠の上り坂・
満開に咲く桜の木の下で2人が花を見上げている。
しのがかがみこんで苦しそうに咳込む。
山南が手ぬぐいをしのにわたす。
しのが起き上がると手ぬぐいに血がにじんでいる。
山南「この峠を越えると琵琶湖が見えるぞ」
2人が歩き始める。
2人のまえに突然、馬に乗った沖田総司(21)が現れる。
沖田「山南さんはこの女のために隊を逃げだしたのですか」
馬上の沖田がしのをにらんでいる。
山南「この女と一緒に海が見たかったのさ」
沖田が馬から降りる。
沖田「山南さんが新選組から逃亡するわけを知りたくて追ってきました。納得できる理 由ならこのまま帰ります」
山南「新選組の大義名分に飽き飽きして、人を切るのが嫌になった。この女に海を見せ たがったから、この女は郭から俺は新選組から逃げだしてきたのさ」
沖田「納得できません。武士の手本として師と仰いでいた山南さんが、遊女のためにご 法度するなんて許せません」
山南「逃亡の罪は隊の掟だと、ここでお前に切られるか、隊に連れ戻されれて切腹するかだ。労咳病みのお前に俺が切れるかやってみろ」
山南が刀の鯉口をきる。
馬を近くにつないで戻ってきた沖田も刀を抜く。
山南「しの、俺たちから離れろ!」
しのが後ずさりして山南から離れる。
刀を抜いて睨み合う2人を人が遠巻きにしてみている。
始めに山南が頭上から沖田に攻め入る。
沖田が刀の先を払って素早く右に移って打ち込みをはずし、山南の胴を襲う。
沖田の剣を受け止めた山南の剣と沖田の剣がつばぜり合いしながら2人の体が移動していく。
(つづく)
いろんな幕末小説の中から私が独断と偏見で創作したものです。
剣道に詳しい人がいたらこういう立ち合いはないと思われるかもしれません。
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