放浪の達人ブログ

富士山



俺は自称さわやかアウトドア派なので山にはよく行く。
いつも平日の夜中に出発し、他の登山者と行動時間帯をズラして歩く静かな山が好きだ。
大混雑の富士山なんて行く気も起こらず今まで登ったことはなかったのだが、
今回のっぴきならない理由により高3の息子と富士山頂まで日帰りで行って来た。

仕事が終わってすぐ出発、富士山の麓のコンビニでおにぎりを買い登山口に着いたのは深夜1時近く。
準備運動もせずにすぐに登山開始。太平洋沿いに街の夜景が広がっていて見事である。
月明かりの中をずんずん登って行くと高山病で倒れている登山者が増えてくる。
8合目の小屋からはツアー登山客がどんどん吐き出され、9合目の小屋でその数は更に増え、
まもなく山頂という時になってからは登山道は大渋滞だ。噂には聞いてたが富士山恐るべし。

最近は中高年の登山ブームだ。定年後にやっと山登りという趣味を見つけたという人が多いため遭難も多い。
以前なんか中央アルプスの稜線で霧に包まれたので立ち止まって休憩していたら、
霧の中から亡霊のように横揺れに動く歩き方の老年登山者4人組が現れギョッとした。
平均年齢75歳、4人で300歳である。亀が歩くほどの速度でまた霧の中に消えて行ったのだが
彼らはちゃんと成仏、あ、間違えた、小屋に着いたのだろうか?

とにかく富士山の登山道は両手にストック、頭にヘッドライトの中高年の大群である。
まるで遊園地のジェットコースターに乗る順番待ち30分、という感じなのだ。
いや、年齢層からして市民病院のロビーに群がる診察待ち時間30分、という方が近いか。
2、3歩ヨタヨタ歩いては荒い呼吸をしながら立ち止まる人達、それを見て邪魔だ、と不平を言う人達。
頂上はすぐそこに見えていても登山道が狭くて大渋滞で前に進まないのだ。
そんな状況を何とかすり抜け日の出時刻前に山頂到着、御来光を眺めることができた。
出発から休憩を数度入れて4時間で山頂ならなかなかいいペースだ。
頭上には雲一つなく眼下は一面の雲海。その向こうに伊豆半島が望める絶好の天気だった。

下山時はさすがにヒザが痛くてプルプル震え、足を引きずるように下りてきた。
その後は温泉に入り、高速道路を走って帰路に着いたのだがコレがまた眠気との闘いだった。
この歳になって徹夜で運転をして富士山頂往復、そのまま一睡もせずに高速道路の運転はツラいのだ。
まるで5時限目の体育でプールでさんざん泳いだ後の6時限目って感じ。
しかもその6時限目の授業はボソボソと小声で呟くように話す社会の先生の授業、地獄である。
授業ならば寝てしまっても頭を叩かれるか内申書で減点を喰らうだけで済むが、
高速道路での運転は命がけだ、寝てはいけない。運転する俺の目は奈良東大寺の大仏状態、
(これを専門用語ではブッダ目という)頭の中は真っ白、まさに悟りの境地である。(笑)

金のある某芸能人ならばこんな時は迷わず覚せい剤でシャキーン!ってところだろうが、
清く貧しく美しい俺はお得用ボトルの眠気覚ましガムを噛む程度なのだ。
そして翌日は筋肉痛のためにスターウォーズの金ピカロボットC3POのように、
もしくは亡霊のように横揺れしながら亀のような速度で歩いている俺であった。


影富士


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