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nomination1103

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2006年04月24日
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カテゴリ: 読書日記
梅田望夫さんの『ウェブ進化論』(ちくま新書)に続いて、佐々木俊尚著『グーグル Google 既存のビジネスを破壊する』(文春新書)を読んだ。

またまたR30さんの ブログ で同書のことを知ったのがきっかけである。読む前には今回はもう、感想をアップするのはやめようかと思っていたのだが、実際読んでみて、やはり非常に考えさせられるところが多かったので、今の感想を率直にアップしておくことにする。

この本に書かれていることは、大きく言って次の3点である(と、ネタバレしちゃって申し訳ないのだが)。

・Googleの進化は、既存のマスメディアやITベンダー、Yahoo!、マイクロソフト、Amazon等にとっては大きな脅威となる。

・一方、中小企業にとってはGooleの検索エンジンはニッチビジネスを展開する上で大きな味方である。

・Google一極集中は、「Google八分」、プライバシーの侵害、政治権力の介入等、かつて考えられなかったような巨大なリスクを生みつつある。

改めて自分自身の立ち位置を考えると、不思議な感慨にとらわれてしまう。私はかつてはしがない業界紙の地方支局の現地採用の記者で、マスコミ業界の端くれに属していた。その時の記憶は、まだ体のすみずみに染み付いており、昨今ネット上で起こっているあれこれの出来事に直面した際も、つい、「わが身の危機が迫っているのではないか」と反射的に感じてしまうことが未だにちょくちょくある。

その一方で、私の現在の仕事は、第3セクターのファッション系産業支援機関の職員で、中小企業の皆さんをサポートすることだ。お蔭様で、仕事を通じて、地元のみならず、全国の優秀な中小企業の皆さんと知り合うことが出来た。その方々の中には、正直、ネットでしかやり取りをかわしたことのない方も多いが、不思議な親近感、このように申し上げるのは非常におこがましいのだが、ある種の仲間意識すら感じてしまうことが多々ある。



このまま手を打たなければ、急激に衰退に向かうであろうマスメディアと、ネット活用で、ビジネスはおろか人生の可能性まで大きく広げていける中小企業ーーその両者の生き様を見ながら私が痛感していることは、前、『Web進化論』の感想にも書いたが、「マスコミの働き口が減ったとしても、中小企業、ベンチャー企業に新たなビジネスチャンス、新たな働き口は必ず開拓できる」という確信である。

ここまで書いてきて、どうしても書かざるを得ないのだが、例えば自分と同年代の、40歳前後のマスコミ人の方々とか、もう少し上の世代、いわゆるネットエイジに間に合わなかった世代の方々にとって、「マスコミで働く」ということの意味はどこにあるのだろうか?

大昔、学生時代や卒業して婦人服の販売を経た後業界紙に入った頃は、新聞の業界で言えば、まだ人権派、社会派と言われた大先輩の方々の書かれた本なども書店には沢山並んでいて、私のようなへっぽこ記者ですら少しはそういった本を読み漁ったものだった。

そういうものは好きではない、という人にとっては、時代はバブル経済の時期、経済記者としてあれこれ取材したい対象というものもあった筈である。

あるいは、「海外へ行きたい。世界のいろいろな国を取材したい」という問題意識とか。

青臭い考えかもしれないが、そういう思いの根っこの部分が残っていれば、今、このネットという世界で起こっているあれこれの事象は、あらゆる専門領域の記者にとってやはり何らかの形で取材したい、という風になってくると思えてならないのだが。ネットにどっぷりと関わってこの現実が今後どのような方向に進んでいくのかを是非この目で見たい、そして、その内容について皆で議論してみたい、という欲望に駆られはしないのだろうか。

長時間労働、現実の生活に追われて、それどころではない、というのが、特に大手企業さんに勤めておられる方の実情なんでしょうね。それと、一般紙に勤める私の友人も以前話していたが、守秘義務の問題、これはもちろん大きな問題なので。

私はやはり、最初のブログ記者となるのは、その多くがジャーナリストもしくは元ジャーナリストにならざるを得ないのではないか、という風に思っている。特に、政治や外部不経済の領域(環境、福祉等)など、圧力に屈せず、しかも複眼的思考で物事を見て積極的に動くことが求められる分野は尚更だ。

表現する媒体が変わっていったとしても、ジャーナリスト魂は死なない、そう思いたいですね。

嬉しいことに、私の身近なところでも、 コレ コレ コレ などの記者ブログが立ち上がっている。まあ、ファッションというのは、炎上する心配も少なく、比較的やりやすい分野だからだというのもあろうが、皆様と一緒になって、新しい形のインタラクティブなメディアのスタイルを追求したい、同書を読んで改めてそう感じましたよ。

しかし、この本の読後感は、暗い。正直、梅田氏の『ウェブ進化論』を読んだ跡に感じた爽やかさとは対照的だ。

それは何故か。既存マスコミやITベンダーの将来見通しもさることながら、最終章の第6章「ネット社会に出現した『巨大な権力』」の問題提起が、非常に深刻な未来を予感させる内容だからである。

「グーグル八分」、これをやられたら事実上ネット販売なんかは不可能になってしまうという、恐ろしい言葉も出てくる。

前このブログでも取り上げたことがあるが、世界中のデータベースを全て収容しようという衝撃的な試み。



幸か不幸か、というか、そうなるべくして同社はアメリカ、という、一方では世界で最もリベラルで万人に対してチャンスの開かれている経済大国でありながら、その一方では強権国家、好戦的な国家の顔も持つ国の企業である。万一、戦争のためにGoogleの持つ非常に高度な技術とプライバシー情報が利用されるようなことになってしまったら?

Googleが中国政府の圧力に屈して検閲を容認しているということも取り上げられていたが、あることに関する情報を全てシャットアウトする、というような恐ろしいことが、既に隣の国では行われてしまっているのだ。

もちろん、梅田氏の本ではないが、大衆の持つ自浄作用、バランス感覚が危険を回避していくだろう、楽天主義がうまく働き、世界はよりよい方に進んでいく、と出来ることなら考えたい。しかし、ある国の世論が、ある時期急進的な方向に一気に傾く、というのは、過去の歴史でもしばしば見られたことだ。

これまでもネット上では、Googleの一極集中に対する懸念はいろいろなところで語られており、珍しくないと思われる向きもあるだろうが、この論点は梅田氏の著書には強くは現れていないものであり、これを世間一般にアピールしたという一点だけでも、佐々木氏の著書が出版された意味は大きいのではないか。

長くなってきたので、続きは数日後(ゴメンナサイ、忙しいので)に書きます。





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最終更新日  2006年04月24日 23時19分19秒
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