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それを見ているうちに、俺は学生時代にドラム缶風呂に入ったことを思い出したんだよ。
A氏 :昔もドラム缶風呂は一般的ではなかったがね。
私
:それが富士山の富士宮口の確か2合目の山小屋で入ったんだよ。
俺が、学生時代に夏休みでブラブラしていたら、ちょっと、ノイローゼ気味で休学していた同級生にバッタリ会った。
いろいろ話して彼のうちに行ったら、彼の母親に「内にこもってばかりいるのでよろしく」と言われた。
A氏 :今でいう うつ病 なのかね。
私
:そこで、富士山に行こうとなった。
俺は山登りは好きだったが、富士山は登ったことはない。
混んでいる富士山は嫌なので8月初めは避け、8月20日前後を選んだ。
夜、富士吉田口駅を下りて馬返しから登り出した。
A氏 :当時は、5合目までの自動車道路なんかない頃だね。
私
:意外に時間がかかり、ご来光は頂上で拝めなかった。
しかし、天気には恵まれたね。
ところで、うつ病の彼は8合目あたりの急な坂になると、苦しいと言い出したんだ。
頑張れと言って、励まして登っていたら、いつの間にかいない。
下を見るとのびている。
下山してくる人に頼んで登ってくるように言ってもらったほどだ。
9合目あたりからは背中を押すようにして登らせたよ。
A氏 :大分、疲れていたんだね。
私:
それが愉快なんだ。
頂上の平なところについたら、平気な顔でスタスタと歩き出すんだね。
逆にこっちが背中を押したりして疲れたね。
A氏 :精神的なものがあったんだね。
私
:下山は 富士宮口
にむかって降りた。
頂上に着いたのが遅れたので、下山は午後になってしまった。
2合目あたりまで降りたが、夕方になった。
予定を変えて山小屋に泊まるしかなくなった。
しかし、その予定をしていなかったから金に余裕はない。
幸い、すでにシーズンオフなので小屋は空いている。
手持ちの米や缶詰を提供してなんとかとめてもらうことにした。
A氏 :当時はのんびりしたもんだね。
私:
そこで夕方、まだ、 明るいうちにそこのドラム缶風呂に入ったんだよ。
だから、ドラム缶風呂はなつかしい思いであるんだね。
A氏 :どういう印象だった?
私
:さんまのように別に異常な体験をしたという印象ないね。
自然に普通の野天風呂にはいる感じだったよ。
なんだか、 水は雨水だというようなことは聞いた。
翌朝、また、あるいて富士宮駅に向かった。
ところが運のいいことに、カラのタクシーの運転手が歩いている我々に「 学生さん、富士宮駅に行くんかね。今、客を乗せて帰るところでクルマはカラだから、タダで富士宮まで乗せてやるよ
」という。
もちろん、乗せてもらった。
A氏: 当時のシーズンオフの富士登山はのんびりしていたんだね。
私 :しかし、当時から山はゴミだらけだった記憶があるね。
A氏 :うつ病の彼はどうなったの?
私:
富士宮駅に着いたら、彼は東京の友だちに会いたいと急に言い出した。
俺は長野方面に行くことを予定していたから、駅で別れたよ。
それから、1週間くらい後に彼の家であったような気がするが、母親から感謝されたが、学校も忙しくなり、それきり彼とは会っていないね。
どういう人生をたどったかね。
A氏 :人生いろいろだね。
私 : ドラム缶風呂 はそのときだけだね。
富士登山はそれだけで終わりで、二度登る気もしなかったが、ドラム缶風呂はなつかしい思い出だね。
浅間山 2006.07.17