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「 書評・朝日新聞デジタル
」
新人とはいえ、並なみならぬ筆力の持ち主で、こなれた語り口は読みやすく、長さを感じさせない。本業は司法書士とのことだが、その経験がよく生かされている。(中略)
純粋のミステリーではないが、 広美
の正体については二転、三転する仕掛けがある。 竹原
が、しだいに 広美
に引かれていく過程にも、無理がない。
結末は、ある程度予測がつくものの、読後感のよい 爽やかな小説
だ。
2 .「未完のファッシズム」片山杜秀著・新潮選書12年5月刊・待ち数22
「図書館要旨」
天皇陛下万歳!
大正から昭和の敗戦へ-時代が下れば下るほど、近代化が進展すればするほど、日本人はなぜ神がかっていったのか。 皇道派vs.統制派
、 世界最終戦論、総力戦体制
、そして 一億玉砕
...。第一次世界大戦に衝撃を受けた軍人たちの戦争哲学を読み解き、近代日本のアイロニカルな運命を一気に描き出す。
「書評・朝日新聞デジタル」
現在の日本には、つぎのような見方が行き渡っている。それは、 日露戦争までの日本人
は、 合理的・現実的・普遍志向的
であったのに、以後、日本人は 非合理的・非現実的・反普遍的
となってしまった。ゆえに、日露戦争までの日本人のあり方を参照すべきである、というものだ。本書は、そのような 司馬遼太郎的史観
をくつがえすものである。
たとえば、日本人が 日露戦後 に 非合理的・精神主義的 となったのは、第1次大戦を十分に経験せず、 日露戦争の体験 を通して世界を見ていたからだといわれる。確かに、日本軍は 青島要塞 (ようさい)の攻略において ドイツ軍 に楽勝したように見えるが、それは日露戦における 旅順要塞の惨劇 をくりかえさないために、 軍の近代化 をはかったからだ。 大量の砲撃 を先行させ、 歩兵戦 を避けたのである。逆に、 第1次大戦 でドイツ・フランス・ロシアは、むしろ日露戦争における 日本軍の肉弾戦 から影響を受けていた。(中略)
その中で、 石原莞爾
は満州を領有すれば日本を 大産業国家
にできると考え、独断で 満州事変
を起こした。にもかかわらず、彼の考えでは、日本は将来「 持てる国
」になるまでは、決して戦争をしてはならなかった。(中略)
つまり、皇道派も統制派も「 持てる国
」との戦争を拒絶していたのだが、ほとんど政治的に失脚してしまい、結果的に、 短期決戦+包囲殲滅戦
という戦法だけが正統的なものとして受け継がれたのである。
満州事変
をきっかけに「 持てる国
」との長期的な戦争に突入していったとき、日本軍には「 玉砕
」という戦法しかなかった。この過程を考察して、著者は「 背伸びをするな
」ということを「歴史の教訓」として見いだしている。