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私 : 森友学園問題 で、 官庁が国有地売却の公文書を改ざんし、政治家の関与も疑われている ということから、この寄稿では 政治と官僚の関係に歴史的に焦点をあてている 。
日本の政治と官庁の関係 には、 苦い歴史 があり、1 920年代には、政友会と民政党が政権交代 するたびに、自党に有利な官僚人事を行った。
これが 政党批判 を招き、 軍部の台頭 につながった。
政官の癒着 は、今に始まったことではなく、 国有地払い下げへの政治家の介入も明治からあった が、 近年、官庁に対する政治の介入がとくに目立つ。
それは、 戦争体験世代の政治家 は、 右派であっても露骨な介入を控えていた が、これに加え、 もっと大きな原因 は、 日本社会の変化に伴い、自民党と官庁が保ってきた昔の秩序が不安定になってきたこと 。
A 氏 : 自民党政権が安定していた時代 には、政治家は性急な無理強いをせずとも、 ゆっくりと要求を実現させる「熟柿戦術」をとればよかった し、 官僚たちも、規制を口実に要求を断ったり、「盥回し」にしてやり過ごしたりしていた。
だが、 政権喪失を経験した自民党は、そんな「大人の構え」を失ない、官庁もかつての力を失い、政権に近づくことで影響力を回復しようとした。
私 : 「文芸春秋」5月号の報道 によると、 今回の改ざんの背景 には「 官邸との距離を少しでも縮めたい 財務省 のなりふり構わぬ事情 」「 何とか権力中枢と結んで『オレたちが仕切ってる感』をもう一度取り戻さないと組織のモラルが本当に底抜けしかねない、との本能的な危機感 」があったという。
行政学者の金井利之 氏によれば、 そうした変質を促進したのが、「政治主導」「規制改革」の誤用。
90年代の官僚不祥事を経て台頭した「政治主導」 は 、「単に与党に基盤のない橋本/ 小泉首相 と与党との権力抗争における標語にすぎなかった」 が、 「これが勘違いされ、与党政治家が行政に容喙することは正しいことである、という間違った発想がまかり通ってしまった」 。
さらに 「規制改革」は、官僚が政治家の要求を断る口実を奪う事態を招き、その結果の一つが、国家戦略特区での加計学園問題である という。
A 氏 :また、 以前は官僚の昇進は、年次などの慣行で決まっていた が、 「政治主導」を掲げた改革で2014年に「内閣人事局」 ができ、 内閣が官庁幹部600人の人事を左右できるようになった。
政治学者の加藤創太 氏によれば、 「600人の候補者の多くは、次の役職が与えられなければ退官という立場にある。以前なら天下りポストが用意されていたが最近は非常に限られる」。
このことが、「忖度」がはびこる背景だ という。
私 : 昔の秩序を懐かしむより、現代に即した制度改正を考えるべきだ と 小熊 氏はいう。
日本の官庁人事の問題点 は、 「政治主導」が強すぎることだけではなく、もっと問題なのは、人事のチェック機関がなく、選考過程が不透明なことである という。
政治との癒着が生じやすいのもそのためで、この点は、旧来の慣行による省庁人事も同様 。
米国は大統領が変わると、官庁幹部は大幅に入れ替わるが、ただし、その多くは民間からの登用なので、官庁の官僚たちが昇進を期待する「忖度」は働きにくい。
また 上院が人物審査を行い、チェック機能を果たしていて、米国は大統領と議会が分立している制度なので、大統領による人事を上院がチェックする。
A 氏 :では、 日本と同じ議院内閣制の英国や豪州 はどうか。
この場合、 議会多数派は首相と一体なので、内閣による人事を議会がチェックするのでは十分でない ので、 代わりに、幹部公務員は公募を原則とし、独立の選考委員会が能力を審査する。
登用された公務員は政治家との接触が制限 され、 政治的中立が求められ、制度の細部は英国と豪州 で違うが、独立機関が能力を審査する趣旨は共通 。
私 :これらと比べると、 日本の制度の問題 が見えてくる。
日本の現行制度 は 「他国にも例がないほど強大な権力を「内閣人事局」 や大臣に与えている」 うえ、 人事の適正さをチェックする仕組みがない。
独立の機関を設けて、登用された官僚の能力を誰もが納得する形で審査し、透明性のある人事にすれば、官庁と政治の癒着も制限できる だろう。
実は類似の制度の導入は、戦後改革でも試みられた歴史 があり、 当時の占領軍は、入省年次などによる人事をやめ、専門能力での登用に変革しようとした 。
その目的で、職務能力に応じた人事を掲げた1947年の「国家公務員法」 と、 省庁を超えた独立人事機関としての「人事院」が作られた。
だが官庁の抵抗で、旧来の人事慣行が「当面の処置」として残され 、 「人事院」も形骸化。
現在の事件は、戦後改革が未完に終わったために起きた問題だともいえる。
小熊 氏は 「日本の官庁は、『昭和の繁栄』には貢献した。だが新しい時代に即した変化を遂げなくては、国の未来を危うくする」 という。
安倍首相は「膿を出す」 というが、 自らが「膿」の中にいる ことになる。