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いつもちょっと被害妄想気味で思い込みの激しい火星人。
先日冷蔵庫をのぞいて首をかしげる。
冷凍庫にいつも入っているお弁当のおかずの減り方が激しいというのだ。
「誰か食べとる」
いいえ、誰も食べてませんが?
火星人の言う誰かとは娘たちのこと。
しかし最近は娘たちも以前ほど大食いでなくなり夜に冷凍食品をつまんだりはしない。
夜食べると太ると思っているから。
一応娘たちにも聞いてみる。
長女は「食べたら食べたというわ。そんな事でウソはつかへんわ」という。
それでも夫はイヤ食べられていると言い張る。
「食べても別にいいんや。食べたら食べたと正直に言うてくれたら」
と言う具合。
でも一時のことを思えばこの被害妄想ずいぶん軽くなり明るくなった火星人。
一時は家でもふさぎこんでいた。
胃潰瘍にもなった。
一見脳天気に自分の楽しみだけを追及しているような火星人だが案外繊細なのかも。
10年前のこと。
そのころ私はまだパート現役で忙しくしていた。
夫は今とは違って家庭のことも子供のことも一切タッチせずそのことを言うと喧嘩になるだけなので私も何も言わなかった。
こんな奴あてにしないでやっていくと思っていた。
だから当然夫の世話は手抜き、ほとんど会話もなかった。
ある日夫は仕事から帰ってきて言う。
「誰かが尾行してくるンや」
そんなバカな。若い女の子なら付いてくる人もあるけどこんなオヤジの後を付いていっても何のメリットもない。
たまたま同じ方向に帰る人やったンやと答えた。
何でそんなバカな思い込みをするのかと思った。
当時はあんまり真剣に夫の話も聞かないし取り合わなかった。
近所の道を通っていたらそこを通るな!と知らない人に大声で怒鳴られたとも言う。
だからそこの道は通ってはいかんのヤと言う。
私道ならともかく天下の公道誰がとうろうと人に迷惑を掛けなければ全然問題はないはず。
その人が何か勘違いをして夫を怒鳴りつけたのか?それとも夫でない誰かに言ったのを自分のことと夫が勘違いしたのか?
はたまたその人がチョットおかしい人だったのか?
どちらにしても普通ならそんな事をいつまでも人は気にはしないだろう。
ずいぶん長い間そのことを言っていた。
尾行の話を私が取り合わないので火星人は予想外の行動に出た。
仕事帰りに私の実家を訪ねて話を聞いてもらったらしい。
翌日母から電話を貰った。
誰が聞いているわけではないのに声を潜めて話し出すからどんな話かと思えば自分が尾行されているという話。
両親はうつ病か何かにかかったと心配して電話してきたのだ。
私は両親を安心させようと「いつもそんな事言うトンのよ。気にせんといて」と答えた。
しかし正直家族以外にまでそんな事を言うのは困ったことだと思った。
当時夫は何らかの心の病にかかっていたと思われる。
思われるというのは結局正式な医師の診断を仰いだわけではないから。
勿論受診は勧めたが必要はないといわれた。
父はしばらく休職をしたらとアドバイスをくれたが受診しないと診断書ももらえないし休職も出来ない。
私は本を読んだり友達に相談して情報を集めた。
気をつけてみていると家でもテレビも見ないで何か考え込んでいる風。
多分職場のストレスが原因と思われる。
阪神大震災や職場の人事異動。
特に人事異動では新しい職場の人と上手くやっていけるかものすごく心配していた。
「血を見る結果になりそうな気がする」などと言っていた。
確かに夫の職場には個性の強い面々、気の短い人もいる。
だが仮にも大人の社会人だからそんな事件になるなんてありえない。
それに異動のずっと前から気をもまなくても問題が出てきたらその時に考えたらいい事。
夫は先を勝手に思い込みで予想しては勝手に妄想して悩む。
だから私はそんな事は問題が起きた時に考えるようにしたらいいと答える。
私は当時チョット腹を立てていた。
共働きなのに何の協力もしないで好き勝手パチンコや将棋をしているくせにまだ気晴らしが足らないのかストレスから病気になる。
病気になったことを責めるつもりはないけどチョット自分勝手な気がする。
しかしほっておくわけにも行かない。
友達のアドバイスも合って休日には夫の好きな景色のいいところやホームセンターに出歩くようになった。
家族が出来るのは話を聞いてやること、気晴らしに付き合うことそれくらいしかない。
気がつくと元の明るい夫に戻っていた。
今でもときに被害妄想的な言動もあるが前とは段違いによくなっている感じがする。
結局受診もしなかったし薬も服用しなかった。
時間はかかったが。
病人の私がこんな夫といっしょにやっていくのは正直辛かったこともあった。
調子の悪い時はいくら私がアドバイスをしても前向きな意見を言っても聞き入れないからいやになる。
夫は物の見方、考え方が一面的でコウと思い込んだら意見をなかなか変えない。
私はそんな夫にこういう見かたもある考え方もあると柔軟にいろんな角度から見るように勧める。
最近はようやくそういう見かたもあるなと人の意見に耳を傾けるようになった。
だが手を抜いて話を適当に聞いているとまた落ち込むかもしれない。
また家であんなくらい顔をされるくらいなら話くらいいくらでも聞いてあげる。
けれど私が寝た後帰ってきて起こしてまで話をするのは勘弁だ。
ストレスにならないようになるべく優しくとは思うもののつい怒ってしまう。
話を聞いてやらないと逆切れもある。
20年以上たっても取り扱いの難しい火星人。
今もチョット嫌なことがあると仕事を辞めたい、あと3年も勤められないと愚痴る。
悪いが老後の生活を考えたら60までは最低でも働いてもらわないと。
楽隠居なんてまだまだ先だ。
皆大なり小なりのストレスを抱えて家族のために頑張っている。
本当は辞めてのんびりするのがいいのかもしれないがそうも行かない。
心の病気の人に頑張れといったらいけないらしいがなだめすかしてあと3年は頑張ってもらいたいと思っている。
あと三年、頑張れとは言わないで応援していきたいと思っている。
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