ミステリの部屋
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<あらすじ>早朝の教室で、高校生・中町圭介は死んでいた。コピーの遺書が残り、窓もドアも閉ざしてある。しかも異様なことに 四十八組あったはずの机と椅子が、すべて消えていた。級友工藤順也がその死の謎に迫るとき 次々現れた驚愕すべき真相とは?精緻な構成に支えられた 本格推理の力作。(「BOOK」データベースより)法月綸太郎さんのデビュー作です。昨年、ワセダ・ミステリクラブ主催の講演会で、言葉を選びながら 誠実に丁寧に、司会者の質問に答えておられた姿を思い出します。教室で死んでいた高校生は 他殺か自殺か……。推理小説マニアの級友・工藤順一が 捜査の手助けをすることに。学園が舞台となっていますが、青春ミステリの爽やかさはありません。工藤はどこか淡々としているし、同級生たちにもクールさが漂います。話の展開は凝っています。二転三転、いえ、四転五転くらいはしたでしょうか。教室の机と椅子がすべて消える、という謎も魅力的でしたが、最後にはきちんと説明がつきました。そして、読み終えたときに感じるのは、ホロ苦く、空しい思い。新本格の旗手ならば、必ずと言っていいほど「人間が描かれていない」という批判を受けていますが、この作品も例外ではありませんでした。私はトリックや謎解きに重点が置かれているのならば、それでもかまわないと思っています。ミステリの醍醐味は色々なところにあるからです。ただ、工藤君が、工藤新一ほどとは言わないまでも、もう少し魅力があってもいいのに、と思いましたw物語の末尾にある、《コーダ~あとがきにかえて》の意味がわかりませんでしたが、ノーカット版 密閉教室においては、それが明らかにされているようです。確か、法月さんが、作中のヒロインのモデルとなった女性に手紙を出し、返ってきた返信、ということだったような……。今度確かめます。法月さんには、本格ミステリにこだわり、本格ミステリに悩み、それでも本格ミステリを書き続けている、というイメージがあります。ほかの作品も読んでみたいです。特に、図書館シリーズが気になります。
2009年02月20日
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