ミステリの部屋

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2005年10月11日
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先日感想を書いたばかりの「 Xの悲劇 」に続き、早速「Yの悲劇」を読みました。
ミステリー史上の傑作中の傑作と言われている作品ですが、とんでもないことに私は犯人を忘れていました。
登場人物はほとんど覚えているのに、どうやったら犯人を忘れられるのか自分でも不思議です。


「マッド・ハッター」と呼ばれるハッター家の当主ヨークの死体がニューヨーク湾で引き揚げられました。
続いて娘の毒殺未遂が起こり、その後、一族のあいだに、悲惨な事件があいついで起こります。
サム警視の依頼で事件を調べていた名探偵レーンの推理では、あり得ない人物が犯人なのですが……。


これは、各種ベストテンで一位に輝くとても有名な作品ですが、さすがに読んでいるとぐんぐんひき込まれていきました。
まずは呪われたとでもいうべき一家のかもしだす、異様な雰囲気が目を引きます。

これはレーンも予想していませんでした。
しかも、その殺人の唯一の目撃者は目と耳と口が不自由なのです。

パズラーとして評価の高いクイーンですが、ここでは本当に見事です。
緻密に張り巡らされた伏線は、のちの推理に全て生かされて、まさに論理的な推理が展開されます。
レーン氏が推理を披露する場面では、それまでどうにも解釈のつかなかったことが、すとんすとんと納得の行く形で次々に解決して真相に迫っていくことに、ただただ目を見張るばかり。
警視のサムと検事のブルーノがとても間抜けに見えますが、実は自分も同じだということに思い当たります。

そして意外な犯人。

さらに意外な結末。

さすがに途中で犯人を思い出しましたが、それでも論理的謎解きは快感でした。

あとがきに、「レーン最後の事件」の犯人を明かしているので、新潮文庫の「Xの悲劇」の解説は読まないでください、と書いてあります。「Zの悲劇」の解説ではその犯人が書かれているそうです。
昔らしいおおらかさという表現してありますが、そんなことが許されるんでしょうか。





 Yの悲劇改版:エラリ・クイーン /大久保康雄(新潮文庫) 



 Yの悲劇: エラリ・クイーン /宇野利泰 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 



 Yの悲劇:エラリ・クイーン /鮎川信夫 (創元推理文庫)









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最終更新日  2006年11月28日 13時38分22秒
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