ミステリの部屋

ミステリの部屋

2006年01月21日
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東野さんの作品は、数年前にマイブームが来て怒涛のごとく読んだものです。ここ最近間隔が空くようになっていましたが、やはり、読み出したらページをめくる手が止められませんでした。
昨日は家族それぞれにやるべきことがある静かな夜だったので、心を鷲づかみにされたまま一気に読んでしまいました。

本書は物理学者の湯川学を探偵役にした「ガリレオ探偵」シリーズの第3作で、初の長編です。
とは言っても、『探偵ガリレオ』や『予知夢』のように理系の知識を生かした謎解き連作短編集とは趣が異なります。
この作品を単独で読んでも問題はありません。


数学にしか興味のない冴えない風貌の男は、隣に越してきた靖子にほのかな想いを寄せていました。
ある晩、靖子はしつこく追いかけてきて金をせびる元夫を、娘と一緒に殺害してしまいます。
それを知った石神は、天才数学者の頭脳を生かして、靖子たちを守ろうとします。
しかし、そこには草薙刑事の友人で物理学者の湯川が関わってきました。


男はめったに居ない位の数学の天才で、湯川とは大学の同期。
この二人は静かに対決することになります。

「自分で考えて答えを出すのと、他人から聞いた答えが正しいかを確かめるのとでは、どちらが簡単か。」
そんな命題を掛けた知恵比べ。


緻密に張り巡らされた伏線に、ところどころひっかかりは覚えていたのですが、このトリックには驚かされました。

湯川は答えを出したものの、苦渋の決断をせまられます。

天才同士にしか理解できないきらめきの時を学生時代に共有した二人の男にとって、行き着く先はもっと別の世界があったかもしれないのに…。

そして、無償の愛というものがあります。
初めのうち、無償の愛なんてそんなものかと甘く見ていましたが、
ついには「どうしてそこまでできるの?」と叫びたくなり…。

それだけの価値があったのか、という思いもあります。けれども、軽い出会いがその人にとって運命的なものになることもある。彼にとってはそうだったのかも知れない。

不器用な男の精一杯の愛情表現は、それが許されることではないだけに、尚更胸が痛くなりました。

無表情に隠された思いが、切なくて切なくてたまりません。

素晴らしいミステリであり、深く胸を打つ物語でした。


【重版予約】 容疑者Xの献身 容疑者Xの献身 :東野圭吾





2008年文庫化








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最終更新日  2008年08月21日 23時20分26秒
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