MATRIX7
1
FIAが共通エンジンの採用を決定したという発表があると、ワークス側は予定されていたジュネーブ会議へのボイコットを決めた。入札を決めたという宣言に怒りの炎が上がったことは間違いない。安ければ儲かるというエクレストン的な発想は否定される。共通エンジンならば撤退すると覚悟を決めているメーカーは多い。安ければ満足というのは信念のないルノーくらいになる。FIAはF1脱退はありえないと楽観視していたけれど、ワークス側の覚悟を見て、方針を変更したというのが和睦の真相だろう。 FIAの一方的な強行姿勢に反発していたワークス側の意見をまとめたのは、フェラーリのモンテゼモロだった。物別れに終わると見られていた会議は、画期的な合意に達したと伝えられている。FIAは共通エンジンを断念したとしか思えない。もちろん、取引としてさまざまな条件が加えられている。プライベートチームに10億円程度で供給するという話などだろう。そんなものは金の問題だからシビアにはならない。各ワークスの製造するエンジンを認めるか否かが議論の分かれ目になる。それをFIAが飲まないうちは、話し合いのテーブルにもつかないだろう。 フェラーリとトヨタの代表だけが出席したジュネーブ会議は、予想外の展開でFIAと和睦を成し遂げている。もめていたコスト削減で、双方が合意したというのであるから、政治的な決着であることは確かだろう。500億円を超える予算を持つフェラーリとトヨタが、大幅なコスト削減に同意したというのも驚きになる。これまで、FIAは予算を削減するさまざまな提案を行ってきたが、常にフェラーリの反対でつぶされている。(大幅な予算削減案はフェラーリに対するの陰謀だと考えて闇に葬ってきた) 金融危機による高級乗用車の販売不振が、F1コスト削減の背景にあることは間違いない。フェラーリやレクサスのユーザーは資産家であり、株価暴落の深刻な影響が出ているので、早めに手を打とう考えても不思議ではない。ルノーやBMWやホンダは、もともと400億円程度の予算なので、コスト削減に文句はない。マクラーレンも有力スポンサーのF1撤退を計算すれば同意するしかない。これから削減の数字が議論されることになるけれど、人員削減にならない程度の数字に収まるはずである。どこまで削れるかは、ワークス内部で検証しないと不明な点が多い。スタッフの解雇騒動にならない範囲で収める腹積もりだろう。 3レース1エンジンとテスト距離の削減が合意事項として伝わっている。もともと金土日の3日間続けて使うことを前提にエンジンは設計されているので、(現在、金曜日はテスト専用エンジンの使用が許可されている)土日の4日間(2レース)が6日間(3レース)に拡大されても、エンジンの設計を変える必要はない。グランプリ開催が17まで増えると、合同テストを減らすことにも反対は少ない。レースチームはシーズンをほとんど無休で営業している。長距離遠征が必要な合同テストが減れば、完全休養日が増えてくるから、スタッフは誰しも歓迎するだろう。 禁止されるはずだったカスタマカーも認められる可能性が高くなっている。反対論の急先鋒だったウィリアムズが資金不足に泣かされて、多額の借金を重ねているからになる。F1マシンの共同開発などが認められると、開発費用は劇的に削減できる。確かに2台のマシンをF1レースに出すために、700人の従業員と500億円の予算は大げさすぎる。過剰な人員を抱える大ワークスが、総勢500人かつ年間予算300億円というルノー程度の規模に縮小できれば、余った資金で蔵が立つ。 FIAのモズレーとFOMのエクレストンとフェラーリのモンテゼモロは、表面では押し合い圧し合いしながら、裏ではつながっている。FIAは貧乏チームを救済するためにも大ワークスの手足を縛りたい。ワークス側は自由を束縛されることを嫌う。そこで際限のない予算拡大競争に巻き込まれていたけれど、金融危機による景気後退が刺激になった。全10チームが生き残るためには、どうしても妥協が必要になる。強いチームは規制を受け入れ、弱いチームは救済を受ける。それで、戦力のバランスが取れるならば、まあいいかなとい結論になる。
2008.10.23
閲覧総数 2